• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

中国で最も危険な伝染病は「狂犬病」

ペットブームに追いつかない未熟な保健体制が奏でる過激な狂犬病狂騒曲

2007年1月26日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

撲殺される犬
撲殺される犬

 中国雲南省の中北部に位置する楚雄イ族自治州は、温和な気候と明媚な風光に恵まれた資源の豊富な地域である。2005年末時点の統計によれば、人口約257万人、イ族を主体とする少数民族が約84万人で全人口の33%を占めている。その楚雄自治州の牟定県で2006年7月25日から30日までの間に5万4429匹の犬が狂犬病予防の名目で撲殺された。狂犬病ワクチン接種済みという一部飼い主の声は完全に無視され、犬たちの悲鳴が県内のそこかしこで響き渡った。生き残ったのは、ごく少数の警察犬と軍用犬だけで、牟定県内の犬の99%が殺され、飼い犬については飼い主に対して1匹当たり5元(約75円)が補償金として支払われた。

犬に咬まれた傷
犬に咬まれた傷

 2006年3月に牟定県の放送組織職員が犬に咬まれ、狂犬病を発症したことがこの犬撲殺事件の発端だった。6月下旬から牟定県内では犬に咬まれる事件が続発し、7月30日までに43人が犬に咬まれたが、この内4人が狂犬病と診断され、3人が死亡、1人が重態となった。この他に、40匹の家畜が犬に咬まれたが、これらは撲殺で処理された。楚雄自治州では、20万匹分の狂犬病ワクチンを緊急調達して、牟定県を除く10の県・市へワクチンを配布するとともに発症状況の調査を実施した。さらに、飼い犬を鎖で繋ぐことの厳守と移動の禁止を命じた。

 全国的な狂犬病の蔓延に危機感を募らせた中国政府は、牟定県ほどに見境のないものではないにしても、程度の差はあれ、狂犬病予防を目的とした犬捕獲作戦を全国的に展開させた。中国農業部の初歩的な統計によれば、中国の飼い犬の総数は7509.5万匹で、その内訳は都市部に1144.3万匹、農村部に6365.2万匹となっている。狂犬病の流行は1980年代にピークを示したが、その後は犬の撲殺処理とワクチン接種の実施によって狂犬病の発症は徐々に減少していた。

狂犬病が再度流行の兆し

 しかし、中国経済の力強い成長による生活水準の向上に伴い、近年飼い犬需要が増大し、犬の繁殖数が急増したことにより、狂犬病は再度流行する兆しを見せている。中国衛生部が毎月発表している法定伝染病の感染状況報告を集計すると、2006年の狂犬病の発症者は3385人、その内の死亡者は2741人で、発症者の死亡率は約81%に達している。狂犬病は2006年5月から12月まで8カ月連続で、月間の法定伝染病死亡原因の第1位を占めた。

 中国の疾病予防センターがまとめた「2005年中国における狂犬病流行の特徴分析」によれば、2005年の全国23省で発症した狂犬病の総数は2537件で、発症の多い順に、貴州省、広西チワン族自治区、湖南省、広東省、湖北省となっており、この5省の発症数合計は1830件で全体の72.1%を占めている。広西、湖南、広東は過去5年間にわたって上位5位を占め、2005年はこの3地域だけで発症総数の50%を占めた。貴州省の発症数は1996年には4件に過ぎなかったが、2004年に上位5位に入り、2005年には全国第1位となった。貴州省の2005年における発症数の増加率は前年比134.5%と急激な伸びを示している。

コメント3件コメント/レビュー

昨年公開された映画「立喰師列伝」(押井守監督作品)哭きの犬丸のパートを思い出しました。(2007/01/30)

「世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」」のバックナンバー

一覧

「中国で最も危険な伝染病は「狂犬病」」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

昨年公開された映画「立喰師列伝」(押井守監督作品)哭きの犬丸のパートを思い出しました。(2007/01/30)

何も知らずに、1年前に上海で犬を飼い始めました。犬も大きくなり、北京でいう大型犬です。(普通でいう、中型犬なのですが)狂犬病のことを聞いてます。撲殺などを聞いて、悲しい気持ちになりますし、自分の犬が被害に会わないかとても怖いです。散歩をしていると時々、日本人や中国人、インド人に、嫌な目で見られます。そういう私も、子供や犬が知らない犬に近づくと、止めてしまいます。将来は北京に引越しがあるかもしれないといわれてますが、今日この記事を読んで、北京には行けない(大型犬扱いですし)と思いました。実際北京は、35cm以上の犬は歩いていないのでしょうか?マンションの庭にも歩いていないのでしょうか。(2007/01/26)

最近鳥や犬や蛙の大量死のニュースが続き、そのたびの「処分」になんとも言えない思いをしています。未知の感染症のアウトブレイクがあったとき、それが人ならどうなるんでしょう?日本人は比較的ヒステリックな反応になりにくいと思っていますが、近隣国がこういう反応だと不安を感じますね。(2007/01/26)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

「タイム・トゥ・マーケット」で売らないともうからない。

栗山 年弘 アルプス電気社長