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2つの危険がともなうブッシュ政権の賭け

2007年2月1日(木)

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 米国のディック・チェイニー副大統領は1月29日発売の米「ニューズウィーク」誌のインタビューで、国連安保理の制裁決議にもかかわらずイランが核開発を継続していることに関し、「国連を通じた外交での問題解決を目指すが、いかなる選択肢も排除しない」と述べ、イラン空爆の可能性を否定しなかった。この情報は「イラン核問題、米副大統領は空爆を否定せず」というセンセーショナルなタイトルの下で世界中を駆け巡り、危機感を煽り立てている。米国はイランとの戦争へ向けて突き進んでいるのだろうか?

イラン包囲網の「再編成」

 ブッシュ政権高官のコメントを注意深く読み込み、その行動をじっくり観察していくと、米国が考えている対イラン戦略の輪郭が浮かび上がってくる。過去2週間のコンドリーザ・ライス国務長官のインタビューを読んでいくと、ライス長官が米国の中東政策の新しいフレームワークを、「イランやイスラム過激勢力を封じ込めることに利害を共有する国々の再編成(realignment)」という言葉で表現していることが分かる。「realignment」という言葉は最近、米軍再編の「再編」を表現する時に使われており、「再編成」や「再配置」という意味である。

ライス女史は、「この新しいアプローチは、イランが代理人を通じた影響力の拡大を図ろうとしていることに対するアラブ諸国の懸念が強まっていることを反映したものだ」と述べており、「(昨年夏の)レバノン戦争後、中東は明確にイランと同盟を結ぶ過激勢力(シリアやヒズボラやハマス)の存在を浮き彫りにした。こうした勢力と敵対する勢力、すなわちレバノン政府、イラク政府それにパレスチナ自治政府や、サウジアラビア、エジプトやヨルダンのようにこうした過激勢力と抵抗しようとする国々」は、イランが先導する「過激勢力」の台頭に懸念を抱いており、中東はこの2つのグループに明確に分かれてきているという認識を示している。

穏健アラブ諸国に対する一大デモンストレーション

しかしイラクの泥沼にはまり込んでもがき苦しむ米国は、このように台頭するイラン勢に対抗できる「信頼できる同盟国」ではないのではないか、という認識がサウジアラビアのようなアラブの穏健派諸国で強まってきていることから、「米国はペルシャ湾へのプレゼンスをこれらの国々に対して改めて示すことが必要になってきた」とライス長官は説明している。つまり「イラクにおけるイランの活動を妨害したり、ペルシャ湾に新たな戦艦を送ったりしているのは、サウジやその他の穏健アラブ勢力に対して、我々の信頼性を再認識させる努力の一環」なのだという。

米国はとりわけイラクにおけるイラン勢力の拡大を阻止し、イランの影響力を排除するための軍事作戦を攻撃的に展開することで、サウジ等穏健アラブ諸国の信頼を回復し、このグループの結束力を強めてイランに対する封じ込めの体制を構築しようと考えている。またサウジ等の穏健スンニ派諸国の協力を仰ぐことで、イラクのスンニ派に武装闘争を止めさせ、政治プロセスに参加させるよう働きかけを強める考えも持っているようだ。

コメント4件コメント/レビュー

アメリカは色々な批判を浴びたりするけれども、唯一の強大国として、世界の秩序を人命の犠牲を出そうとも守り続ける姿勢は賞賛に値するものであることをまず述べておきたい。中東地域に限ると、この地域に戦略を描いているのは、当事者国以外ではアメリカだけではないだろうか。パーレビ国王時代が良かったなどと言う気はないが、今のイランは世界の秩序を守ろうという気概が無く、ある意味、北朝鮮の無責任さに通ずるものがある。この意味で、イスラム穏健諸国を如何に巻き込んだところで、過激さが勝るイランを抑え込むことはまず不可能であろう。ここ15年間ほどののアメリカを見ていると、イランに対する軍の進攻もあり得る話であるが、イランの実情を考えると、さすがにブッシュといえども、それは避ける選択をとるように思うが、2期目の後半で、次の大統領選に出馬する必要もないことを考えると、大統領最後の大きな賭けに出ることも可能性としては否定できないことである。(2007/02/01)

「世界鑑測 菅原出の「安全保障・インサイド」」のバックナンバー

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「2つの危険がともなうブッシュ政権の賭け」の著者

菅原 出

菅原 出(すがわら・いずる)

ジャーナリスト/国際政治アナリスト

アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。在蘭日系企業勤務、ジャーナリスト、東京財団リサーチフェロー、英国危機管理会社役員などを経て、現在、国際政治アナリスト

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

アメリカは色々な批判を浴びたりするけれども、唯一の強大国として、世界の秩序を人命の犠牲を出そうとも守り続ける姿勢は賞賛に値するものであることをまず述べておきたい。中東地域に限ると、この地域に戦略を描いているのは、当事者国以外ではアメリカだけではないだろうか。パーレビ国王時代が良かったなどと言う気はないが、今のイランは世界の秩序を守ろうという気概が無く、ある意味、北朝鮮の無責任さに通ずるものがある。この意味で、イスラム穏健諸国を如何に巻き込んだところで、過激さが勝るイランを抑え込むことはまず不可能であろう。ここ15年間ほどののアメリカを見ていると、イランに対する軍の進攻もあり得る話であるが、イランの実情を考えると、さすがにブッシュといえども、それは避ける選択をとるように思うが、2期目の後半で、次の大統領選に出馬する必要もないことを考えると、大統領最後の大きな賭けに出ることも可能性としては否定できないことである。(2007/02/01)

ニューズウイークをもっと読みなさいという話なんでしょうか。田中宇のサイトのように元ネタに当たれるようになっていると良いですね。余り世間に知られてないニュースソースもお仕事に差し支えない範囲で教えてください。(2007/02/01)

根本問題は、イスラエルの核武装と周辺地域への侵略の容認、イスラム社会の蔑視、石油利権の特権的維持を画策する一部の欧米諸国に対する反感が過激的な集団を発生させている。エゴイスティックなダブルスタンダードやイスラム蔑視の政策をとるアメリカをはじめとする旧植民地宗主国が変わらなければ、この危機は永久に続く。先進諸国が省エネによって石油のがぶ飲みをやめれば、彼等だって石油を売らないと生活が成り立たないのであるから、自然に態度も改まるはずである。まだ北朝鮮のような犯罪国家ではないのであるから。(2007/02/01)

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