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石炭王国中国で起きた惨事
「ヤミ炭鉱主と悪徳役人」が記者を殺す

中国社会で大きな反響 胡錦涛総書記は真相の解明を命じた

2007年2月2日(金)

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事件の舞台となったヤミ炭鉱

事件の舞台となったヤミ炭鉱

 2007年1月10日、中国山西省の大同市渾源県にある無許可採掘のヤミ炭鉱を取材に訪れた「中国貿易報」の記者2人と運転手1人の計3人が、炭鉱主の指示を受けたその仲間8人によって袋叩きにされ、記者1人が死亡、他2人が重傷を負うという事件が起こった。

 死亡したのは、「中国貿易報」山西支局が1カ月程前に臨時採用したばかりの蘭成長という34歳の記者であった。一度は暴徒の手から逃れた蘭成長であったが、仲間を見殺しに出来ず戻ったところを鉄棒と棍棒で全身を所かまわず殴打されたのだった。3人は夕方6時半頃やっとの思いで大同市内に戻り大同第三人民医院へたどり着いたが、蘭成長は既に危篤状態にあり、救命治療の甲斐なく、翌11日の朝9時に息を引き取った。蘭成長の遺体は、検死に訪れた法医官が「これはひどい」と絶句した程に無残な状態で、頭蓋骨に5カ所の穴が開き、両腕と片脚の骨は折れていた。検死の結果、死因は頭蓋骨骨折と脳損傷による脳内出血と判定された。

ニセ記者と断定し暴行

 事件の顛末を簡単に述べると次の通りである。

 10日の事件当日、炭鉱主である侯振潤は配下数人とレストランで昼食の最中に「中国貿易報」記者から取材申し込みの電話を受けた。取材には応じると答えたものの、近頃無許可採掘の弱みに付け込んで金を要求する偽記者が横行していることから、「記者証」を確認して、偽記者ならば叩きのめそうと配下を集めて、待ち合わせた現場事務所に駆けつけた。

 記者に「記者証」の提示を求めると、中国貿易報発行の記者証は持っていたが、侯が友人の新聞記者から聞いていた本物の新聞記者証なら有るはずの中央政府新聞出版総署の印がないことから、侯振潤は彼らが偽記者と断定した。たまたま1月9日にも新聞記者らしい2人組が侯の炭鉱の写真を密かに撮って行ったし、事件当日の10日にも記者証を持たない偽記者が3組も訪れていた。このため、侯振潤はこうした金せびりを目的とする偽記者に対して怒り心頭に発していたので、「片づけてしまえ」と命令を下し、配下8人による蘭成長ら3人に対する暴行が行われたのであった。

石炭王国中国ではヤミ採掘も減らない

山西省の炭鉱地帯(茶色の部分)

山西省の炭鉱地帯

 山西省は中国最大の石炭王国であり、その生産量は中国の年間生産量(2006年:23.25億トン)の約30%を占める。依然としてエネルギー資源の約70%を石炭に頼る中国で、山西省は省外への石炭の供給量も最大で、中国経済の発展に大きく貢献している。山西省には2006年末で約9000カ所の採掘を許可された炭鉱がある一方、4000カ所以上の非合法なヤミ炭鉱や採掘場が存在している。無許可採掘の現場では安全対策は全く取られておらず、多発する落盤や有毒ガスなどの炭坑事故の3分の2がこうしたヤミ炭鉱や採掘場によって占められている。中央政府の指示もあり、山西省政府はこれら非合法炭鉱や採掘場のすべてを閉鎖すべく監視を強化しているが、炭鉱主側は一時閉鎖の後に密かに採掘を再開したり、夜間採掘で監視を免れたりで、政府の監視と炭鉱主の隠れ採掘によるイタチゴッコが続いているのが現状である。

記者証を持っていないかったが正式な記者

新聞出版総署発行の記者証
蘭成長記者所持の記者証

(上)新聞出版総署発行の記者証
(下)蘭成長記者所持の記者証

 隠れ採掘を行う炭鉱主に対して新聞記者を名乗って「新聞に書く」「当局へ通報」などと脅して、金銭の支払いや飲食の接待を強要する偽記者が現れるのは人の世の常。あまりにも偽記者の横行が激しいことから、山西省では半年前から「偽記者摘発キャンペーン」を行っていたが、蘭成長が死んだ当日(11日)に大同市政府は「偽新聞・偽雑誌・偽記者摘発キャンペーン」業務会議を開催し、「新聞出版総署発行の記者証」を持たない者は偽記者であり、蘭成長も金銭強要を目的とした偽記者であるとの見解を発表し、本来問題となるべきヤミ炭鉱問題の隠蔽を図った。「中国貿易報」はこれに対して、蘭成長は「新聞出版総署発行の記者証」は持っていないが、同報の正式な記者であり、今回の取材活動は同報の指示によるものではなかったが、記者として問題を調査することは正当な行為であると抗弁を行った。

コメント3件コメント/レビュー

学生時代に東洋史を学んだ私は、中国の歴代政府(皇帝)たちの官僚達が、公式発表とした数字(人口、税金等々)が全くのでまかせである事を知りました。もちろん現在のあの政府もそうでしょう。彼らの社会では「賄賂」は悪ではなく、千年以上にわたって続いてきた文化?なのです。そうして、時の皇帝には「我が省では何事も起きていません。」と報告するのです。汚職が0件といえば、万件あろうとも0件なのです。あの国は未だに皇帝制であり、いくら皇帝が命令しても、地方では地方のボスがいて好き勝手をやっています。それらのボスが軍事力さえつければ、「軍閥」になります。近代国家ではありません(2007/02/08)

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「石炭王国中国で起きた惨事
「ヤミ炭鉱主と悪徳役人」が記者を殺す」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

学生時代に東洋史を学んだ私は、中国の歴代政府(皇帝)たちの官僚達が、公式発表とした数字(人口、税金等々)が全くのでまかせである事を知りました。もちろん現在のあの政府もそうでしょう。彼らの社会では「賄賂」は悪ではなく、千年以上にわたって続いてきた文化?なのです。そうして、時の皇帝には「我が省では何事も起きていません。」と報告するのです。汚職が0件といえば、万件あろうとも0件なのです。あの国は未だに皇帝制であり、いくら皇帝が命令しても、地方では地方のボスがいて好き勝手をやっています。それらのボスが軍事力さえつければ、「軍閥」になります。近代国家ではありません(2007/02/08)

中国というのは、まだこんなに後進国であることは由々しき事態ですね。中国の恥部だと済ませることは到底できません。賄賂というのは、まだ中国のビジネスの中では当たり前だし、将来的にもなくならない恐れが大です。万博、五輪と立て続けに開催国となる中国ですが、中国四千年の歴史に恥じない国になって欲しいと切に思います。(2007/02/04)

yuan gang石窟寺院の観光の際、大同の町を通りましたが、炭塵であらゆるものが黒くなっていたのお覚えています。更に、畑と思われる一箇所が黒グロとした築山になっており、それはにわか炭鉱との事でした。石炭はまさに黒いダイヤ。供喜発財を新年の挨拶にする人びとゆえ、多少の事はあると思いますよ。いちいち驚いていてもね。(2007/02/02)

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