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エ? お墓参りの供物に「愛人」と「バイアグラ」も

葬儀を通じて知る中国文化

2007年3月9日(金)

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 2006年8月21日、中国の国営テレビ局「中央電視台」の人気番組である「焦点訪談」は、現地取材による「葬式でストリップ」という特集を放送した。この取材の舞台となったのは、江蘇省連雲港市東海県温泉鎮。「温泉鎮」の由来は温泉が多数あることで、温泉郷として観光休暇村が建設されているとはいえ、中国の典型的な農村である。この地域の農家では老人が死ぬと楽団や劇団を呼んでソーナという楽器の演奏やオペラ風の地方劇を上演して死者への哀悼の意を託す風習がある。この上演の際に観衆が多ければ多いほど、死者の体面が保たれるという考え方があり、少しでも多く観衆を集めることができる劇団は声がかかる回数も増えることになる。

 この地域だけで10数組の劇団があり、劇団間の激しい競争が繰り広げられているが、観衆を集めるには刺激的でなければならないということから、いつの頃からか劇団員がストリップを行うようになり、昨今では全裸で猥褻極まりない状況にまで激化していた。「焦点訪談」は8月16日夕方5時から始まった孔白村の葬式で繰り広げられた2組の劇団によるストリップの競演を取材し、このような猥褻な劇は死者への冒涜以外の何物でもないと喝破し、死者もこれでは浮かばれまいと結んだ。破廉恥な状況が全国放送されたことで肝を潰した東海県の共産党委員会と県政府は夜を徹して緊急会議を開催し、翌22日劇団関係者5人を拘束した。ストリップを行った劇団員の出演料は1ステージ当たり200元(約3000円)だった。

葬儀は豪華であるほど孝行

 山西省の省都太原から100キロ南に位置する平遥県は、2700年の歴史を誇る古い都市である。2006年8月2日の午後、平遥県の中心部にある大通りを「脇に寄れ、脇に寄れ」という怒鳴り声と楽団が奏でる葬送の曲を伴って、1台の警察ジープが先導する80数台の乗用車と数十台の原付自転車の車列が威風堂々と通り抜けていった。あたかも中国旧社会の富裕な地主階級の葬式を彷彿させる豪華な葬列は、平遥県の法執行部門を牛耳る幹部の父親の死を悼むものであった。警察ジープのみならず、乗用車80数台はすべて平遥県の公用車であり、参列した人々のほとんどは警察をはじめとする政府部門の制服を着ており、長男である幹部と同じく平遥県の都市交通部門幹部である次男の、兄弟2人の権力の大きさを示していた。

 中国では父母の葬式を豪華にすればするほど、親孝行の証しと考える風潮があり、普段親をないがしろにしている輩に限って葬式を豪華にするという意味の「薄養厚葬」という言葉がある。この対称にあるのが、常日頃親を大事にして孝を尽くし葬儀は簡素に済ませるという意味の「厚養薄葬」という言葉だが、かつては儒教に基づく「二十四孝」が親に対する孝行の模範とされた中国でも、「薄養」が増える一方、急激な経済成長に伴う富裕層の増大による金に飽かした「厚葬」も増大している。

 中国政府は1956年4月27日の中央工作会議の席上で、当時の毛沢東、周恩来、トウ小平等151人の高級幹部が「火葬実行の提案書」に署名して、数千年の歴史を持つ土葬の廃止と火葬の普及を提唱した。その後、1985年2月に「葬儀管理の暫定規定」が出され、1997年7月には「葬儀管理条例」が制定されたが、2007年3月にはその改定が全国人民代表大会で可決される予定となっている。これら法令に共通するのは、火葬の普及による木材と土地の節約、豪華な葬儀や墓地の抑制、封建的迷信の排除、公権力を笠に着た公私混同の排除であるが、掛け声とは裏腹にその改革の歩みは遅々として進んでいない。

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「エ? お墓参りの供物に「愛人」と「バイアグラ」も」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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