マンハッタンの家電量販店ベストバイ。薄型テレビを前に悩んでいる大半の人々と同様、グラフィックデザイナーのロイ・ガント氏も最初はフィリップスやソニー、松下電器産業の製品を買おうと思って店にやってきた。
無名ブランドの薄型テレビは、有名ブランドより20〜40%安い (写真: Thomas Strand)
だが値札を見比べて、ウエスチングハウスの方がいい買い物だと思い直した。同社の32インチのテレビは800ドル。有名ブランドの製品が950〜1400ドルする中で格安に思えた。おまけに名前には聞き覚えがある。「確か、家電製品を作ってたよね」とガント氏。
無理もないが、彼の思っているウエスチングハウスとは違う。昔のウエスチングハウスのテレビは30年以上米国から姿を消しており、今のは2003年にベンチャー企業がCBSの子会社ウエスチングハウス・エレクトリックから商標とロゴのライセンスを取得したものだ。
米調査会社アイサプライによると、ウエスチングハウス・デジタルは今、液晶テレビ市場で北米第5位の座を占め、7.7%のシェアを持つ。だが、その同社も100社を超える薄型テレビブランドの1社に過ぎない。
ブランド乱立はアナログテレビを替えたいと思っている米国の消費者に朗報だ。有名ブランドより20〜40%安いウエスチングハウスなどのおかげで、液晶テレビはもう高嶺の花ではない。
2006年に北米で販売された3000万台のテレビのうち3分の1近くが液晶テレビで、年末には半数に達する見通し。アイサプライによると、平均的な27インチ液晶テレビは2006年初頭には1000ドルだったが、現在は650ドル以下で手に入る。40インチも3000ドルから1600ドルへ急落したという。
委託生産で続々新規参入
数カ月待てば、いよいよお得な買い物ができる。年内には40インチの薄型テレビは1000ドルを切り、27インチは500ドルまで下がりそう。格安ブランドにはソニーやサムスン電子のような品質や機能はないが、大方の人には画質の違いは無視できる程度で、信頼性も向上していると専門家は言う。
一方、業界関係者にとって競争は熾烈だ。液晶テレビの価格急落のため、小売業者は発注を先走り過ぎると高価な在庫を抱え込むリスクがある。米サーキット・シティーが2月、約70店の店舗閉鎖を発表した際に挙げた理由も価格急落だった。打撃を被っているのは液晶パネルを製造しているアジア企業も同じ。韓国のLGフィリップスLCDは第4四半期に1億8600万ドルの赤字を計上した原因をディスプレー価格が昨年40%下落したことに帰した。
ディスプレー価格は今年20%の下落が予想され、世界10社超のディスプレーメーカーはどんな価格でも製品を売って生き延びようと必死だ。「価格下落はサプライチェーンに関わる者すべての骨身に応える」と、アイサプライ幹部のポール・セメンザ氏は言う。
こうした動きの背景には、グローバル時代のテレビ製造の新機軸がある。アジアのサプライヤーが標準化されたデジタル部品を提供し始め、ウエスチングハウスやビジオのような「仮想製造業者」が登場したからだ。昔のテレビは一握りのメーカーがブラウン管テレビ製造の中核技術を支配し、自社ブランドを展開していた。
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