• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

ミタル親子のさらなる野望

世界の鉄鋼業を支配、アジア買いも間近?

  • BusinessWeek

バックナンバー

2007年4月24日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

30年ほど前にインドで創業し、今や世界の鉄鋼業を牛耳るミタル親子。
英才教育を受けた息子が、創業者の父を支え、買収を次々と成功させる。
狙ったら離さない執念で、日本の鉄業界にも殴り込みをかけるか?

 鉄鋼世界最大手アルセロール・ミタルが本社として使うルクセンブルクの宮殿で、40~50代の男6人が世界各地の工場長の報告に耳を傾けている。聞き手はほぼ全員、鉄鋼業界で数十年の経験を持つ重量級である。

 唯一の例外がCFO(最高財務責任者)のアディテヤ・ミタル(31歳)。創業者でCEO(最高経営責任者)のラクシュミ・ミタル(56歳)の息子だ。ベテランが居並ぶ席だが、場を支配しているのは彼。米国部門を率いるルイス・ショルシュが主要工場の人事問題を持ち出すと、アディテヤは平然と言い放った。「幹部を入れ替えていいですよ」。

31歳のもの言う御曹司

ラクシュミ・ミタル(左)と、息子のアディテヤ・ミタルを徹底取材した米ビジネスウィーク誌の表紙

ラクシュミ・ミタル(左)と、息子のアディテヤ・ミタルを徹底取材した米ビジネスウィーク誌の表紙

 父親はその場にいないが、彼が父から絶大な支持を得ていることを皆知っている。父親と10年働いてきたアディテヤは一番の懐刀。2人は今、世界のビジネス界で最強の親子で、鉄鋼産業を独占する過程で業界再生に一役買い、巨万の富を築いた。一族が保有するアルセロール・ミタル株の45%は330億ドルの価値がある。

 ラクシュミのことはご存じの通り。彼の会社は粗鋼生産量で世界シェア10%を握る。ベッドルームが12室あるロンドンの大邸宅には執事が控え、壁にはピカソの絵がかかる。娘の結婚式に5500万ドルかけたのは有名な話だ。だがアディテヤの人柄や父親の成功に果たした役割を知る人は少ない。

 ラクシュミが鉄鋼業界のビジョナリーなら、アディテヤは辣腕ディールメーカーだ。米ペンシルベニア大学ウォートン校で学んだ息子は、欧州の鉄鋼大手アルセロールに380億ドルの買収を仕掛け、昨年6月に締結された契約条項を練り上げるのに手を貸した。

 成功の秘訣はミタル家の結束の強さにある。同族経営では多くの場合、息子や娘は父親に認めてもらおうと必死になるか屈折した心情から父親を倒そうとする。ミタル家は親子が尊敬し合い、権力を共有している稀なケースだ。

 父は経営に必要な裁量を息子に与えた。息子には父から学ぶ賢明さと自信があった。2004年に所有する米インターナショナル・スティール・グループ(ISG)をミタルに売却し、現在アルセロール・ミタル取締役を務めるウィルバー・ロスは、「ビジネスにおける親子関係は大抵、微妙で複雑だが、ミタル家の場合はうまくいっている」と言う。

 その理由は2人の違いにあるのかもしれない。セールスマンの息子として生まれたラクシュミはインドの貧しい田舎で育った。彼の父は後に小さな製鉄所を始め、息子にビジネスの醍醐味を教えた。その後ラクシュミは自分の鉄鋼会社を興し、直感で動く経営者の才能を花開かせた。一方アディテヤは日の出の勢いの起業家の一人息子として育ち、金融の知識を身につけるため米国に送り込まれた。

 荒削りの父親と洗練された息子。この組み合わせはインド財閥の典型だ。リライアンスのアンバニ家やウィプロのプレムジ家なども子息を米国や英国で学ばせて勢力を拡大している。ラクシュミは現場が好きで、アーク炉の操作法を今も覚えている。アディテヤは米ウォール街の連中と一緒にいる方がくつろげる、スキューバダイビングやスキーを好む一流ディールメーカーとなった。

 ミタル親子は事業の妨げになる社会的、文化的制約とも無縁だ。一族は優れた商人を輩出するインド・ラジャスタン州のマルワリ族の出身だが、ラクシュミが事業を始めたのはインドネシアで、その後ロンドンに移った。このため彼は母国インドでもよそ者と見られる、ある種の世界市民となった。

 父子とも抜け目がなくて粘り強く、タフ。邪魔する者は誰であれ押しのける。会議が長いのは伝説的で、その間緑茶とサンドイッチだけで過ごす。ミタル父子は世界中の鉄鋼会社の多くの幹部をおだて、出し抜いてきた。

 何かを手に入れようと決めれば、あきらめない。例えばルーマニアでは政治の風向きが変わる中で3年間交渉を続け、製鉄所を手に入れた。

 問題は息子が父親を煽り過ぎていないか、だ。ラクシュミがリスクを好むのは疑いのないところで、彼は誰も欲しがらない傾いた製鉄所を買って帝国を築いてきた。だがアディテヤがM&A(企業の合併・買収)を担当するようになって、老朽化した工場を安価で買うのをやめた。代わりに業界最高の製鉄所に巨額のカネを払っている。

 アルセロール買収でミタルの負債は約200億ドルに膨らんだ。中国の鉄鋼輸出急増と需要減退が重なれば、返済が困難になりかねない。

 だが、地理的な幅を広げることで経営を安定させたとミタル父子は主張する。米国では最近鉄鋼価格が低迷しているが、アルセロール・ミタルは好調。昨年は売上高885億ドルに対し118億ドルの営業利益を上げた。投資家も借金を気にしていないようだ。昨年8月に合併会社が発足して以降、株価は30ドル台から54ドルまで回復した。

コメント0

「Bloomberg Businessweek」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

誰もやらない領域を根気強く続けられるかが成功の秘訣。

田坂 正樹 ピーバンドットコム社長