「世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」」

世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」

2007年5月11日(金)

銀行窓口は大行列 それでも行員はトランプ遊び

お客も呆れる 中国4大銀行の1つ「中国工商銀行」のサービス

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 2007年4月12日、中国共産党中央委員会の機関紙「人民日報」のインターネットサイトである「人民ネット」は李天行記者の署名入りで、「お客は行列、銀行員はトランプ遊び」という記事を掲載した。

4大国有銀行の1つ「中国工商銀行」の実態を報道

 中国の4大国有銀行の1つである「中国工商銀行」のサービスが悪いという投書が多数寄せられていることから、李記者が積立口座を開設するという名目で、北京の商業中心地区にある中国工商銀行朝陽支店傘下の金台路支店に出向き、同支店のサービスの実態を調査して報じたのである。
 
 その概要は以下の通りである。

 正午に中国工商銀行の金台路支店に到着した李記者が整理番号札を取ったのは12時9分。その時点で79人ものお客が順番待ちとなっており、ロビーはお客で満杯の状態だった。案内デスクの周辺にも積立口座を開設しようというお客がたむろしていたが、案内係は席におらず、彼らはどうすればよいのか分からず困惑していた。

 李記者はロビーの東側にある取引先財務管理センターに行ったところ昼食を食べている行員がいたので、「すみません、積立金口座の開設はどうすればよいのでしょうか」と問い合わせたが、行員はこれを無視。そこで再度、大声で繰り返すと、行員は「食事しているのが見えないのか。案内デスクに行って聞け」と答える始末。そこで、案内デスクに戻ると、現れた1人の行員が口座開設申請用紙を数枚放り投げて、「先ずこの用紙に記入して、自分はまだ食事中だから」と言い残して立ち去った。

 李記者が口座開設申請用紙に記入を終えたのは12時47分であったが、李記者の前にはまだ50人近いお客が順番を待っていた。そこで、ロビーを改めて見渡すと、行員が業務を行っている窓口は1カ所しかなく、その行員の後ろに行員がもう1人いて、2人は休みなくくだらない世間話をしていた。

お客が待っている中で銀行員たちがトランプ遊び

 そうした業務態度と順番待ちで心急くお客たちとの対比は際立ったものだったが、目を転じると、なんとロビーの西側では6人の行員たちがトランプに打ち興じていた。一方、会社の昼休みが終わりに近づくにつれて、順番待ちしていたお客が待ちきれずに1人、2人と帰って行く。

 李記者は順番待ちのお客たちにこの銀行のサービスについて意見を聞いて回ったが、お客の大部分は効率の悪さに不満を持っていた。お客の1人は「毎回来るたびに頭にくる。会社の給与振り込み口座が工商銀行なので仕方ないが、さもなければこんな銀行には来ない」と吐き捨てるように語った。別のお客は「工商銀行はこんなもんさ、仕方ないから待つしかない。昼寝でもするさ」とあきらめ顔だった。

 トランプに興じている行員たちについて意見を聞くと、「昼休みだからトランプをしてもいいんじゃない」と言うお客がいる一方で、大多数のお客は不満を表明、「これって人を刺激しない。彼らがトランプするのは勝手だけど、ここで待たされている我々は一体何なの」と言う者あれば、「お客の人数で休憩時間を調整すべきじゃないか。今日は口座開設の人も多いんだから、休憩時間を調整するのは当然だと思うけど」と言う者あり。

(註)工商銀行の営業時間は、事業者窓口は9:00〜12:00 13:30〜17:00、貯蓄窓口は9:00〜17:00となっており、貯蓄窓口には休憩時間は設けられていない。土曜、日曜は休み。

効率の悪さと対応の悪さ

 取材を終えた李記者は会社に戻ると、人民ネットが打ち出している企画であるネット投票による「企業信頼度“品質優良、サービス優秀”人気指数ランキング」を調べたが、中国工商銀行は苦情申し立て数が、金融分野で第1位、総合ランキングで第4位となっていたので、なるほどと納得した。苦情の中で最も突出しているのは、効率の低さと業務態度の悪さなどの問題であった。

 1つの窓口にお客が殺到しているのに、他の窓口には「業務一時中止」の札が掛けられ、その向こう側で多数の行員が閑そうにしているのはどういう意味か。

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著者プロフィール

北村 豊(きたむら ゆたか)

北村 豊

住友商事総合研究所 中国専任シニアアナリスト
1949年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。住友商事入社後、アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、2004年より現職。中央大学政策文化総合研究所客員研究員。中国環境保護産業協会員、中国消防協会員


このコラムについて

世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」

このコラムはニューヨーク、ロンドン、サンノゼ、香港、北京にある日経BP社の支局と協力しながら、米国や欧州はもちろんのこと、世界経済の成長点とも言えるブラジルやロシア、インド、中国のいわゆるBRICs、エネルギーや国際政治の鍵を握る中近東の情報を追っていきます。記者だけではなく、海外の主要都市で活躍しているエコノミスト、アナリストの方々にも「見て、聞いて、考えた」原稿を提供してもらいます。

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