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ウォール街、崩壊の恐怖

サブプライムローンで大型破綻も

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2007年7月17日(火)

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ベアー・スターンズのジェームズ・ケイン会長

ベアー・スターンズのジェームズ・ケイン会長 (写真: Chester Higgins Jr./The New York Times/Redux)

 6月26日、クレディ・スイスの代替投資部門の幹部らは顧客に1通のメールを送った。同社の運用ポートフォリオは「サブプライムローン*1に最小限しか投資しておらず、先に破綻しかけたベアー・スターンズ傘下の2つのヘッジファンドには一切、直接投資していない」と投資家を安心させるものだ。

 その頃、ほかの投資家はサブプライムローン債権だらけのヘッジファンドから資金を引き揚げようとしていた。カナダの銀行CIBCはサブプライムローン債権を大量に保有していると噂され、仏BNPパリバはベアー傘下のヘッジファンドへの投資について、顧客からの問い合わせの対応に追われた。

 米ウォール街(証券業界)は今、サブプライムローン問題の波及を食い止めようと必死。ヘッジファンドの苦境で、世界最大規模の金融機関が突如、危険なゲームに追い込まれたのだ。

へッジファンド苦境で激震

 ゲームの展開は3つある。サブプライムローン市場及び社債市場全体が急激に崩壊する。両方、あるいは一方の市場が数カ月かけてゆっくり崩壊する。状況が正常化するのに伴い忘れ去られるような一時的な混乱に終わる――。

 今のところ悲劇は避けられているが、各方面からプレッシャーがかかる。今後、ウォール街の銀行家やヘッジファンドの運用責任者、格付け機関が下す判断次第で、ゲームの行方が左右される。誰かが不穏な動きを見せただけで一気に相打ちとなり、壊滅的な共倒れを招きかねない。

 当初、サブプライム問題はベアー1社の問題だと見られた。同社傘下の2つのファンドが傾いた時、出血を止めるために16億ドル融資したのは当のベアーだった。同社株は1日で3.2%も下落。米証券取引委員会(SEC)の調査を受けることになったのもベアーで、SECは84年の歴史を持つ老舗証券の初期調査に乗り出した。

 普段ならベアーの苦境を見てライバルは涙したりしない。しかし今、ウォール街の大半は同じ問題債権にどっぷり浸かっている。住宅ローンブームの絶頂期に証券化された債権が今になってベアーなどに襲いかかっているのだ。

 昨年ウォール街は合計5500億ドルものCDO(債務担保証券)を組成した。CDOは複雑な債券で、しばしばサブプライムローン債権が担保となっている。サブプライムローン債権は好況時は利回りが高いが、今のように市場が揺らぐと危険になる。「これはベアー1社の問題ではない」と米ドレクセル大学のジョセフ・メイソン助教授は言う。

 CDOは流動性が低いため、市場が荒れている時は特に厄介なものになる。CDOは売るのが難しいだけでなく、価値を評価するのも難しい。これまでの会計基準では、企業はCDOを買った時の値段と同程度に評価してこられたが、市場で新しい値段がついたら、評価替えを余儀なくされる。

 ウォール街を悩ます悪夢は、一時160億ドルも運用していたベアー傘下の2つのヘッジファンドが債権者によって清算される可能性だ。問題債権が大量に売りに出されると、ウォール街は保有資産を本当の価格で評価せざるを得なくなる。「こうした金融商品の価値のなさを認めたがる人はいない」と資産運用会社ユーロ・パシフィック・キャピタルのピーター・シフ社長は言う。

 実際、SECのクリストファー・コックス委員長は6月26日の議会公聴会で、当局はベアー以外にサブプライム市場とCDO価格の問題を巡って十数件の調査に着手したことを明らかにした。

 ベアーの持ち高が仮に額面1ドル当たり60セントで競売にかけられ、他社がそれに見合う価格で自社の持ち高を評価替えしたら、損失が一気に広がる。企業はできる限りカネに換えようと保有しているCDOを叩き売るだろう。となれば、急激な崩壊が起きる。

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