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「スパイ暗殺事件」の背後にある暗闘

今、イギリスとロシアの関係は最悪だ

2007年7月26日(木)

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 昨年11月に、ロシア連邦保安局(FSB)のリトビネンコ元中佐が亡命先のロンドンで放射性物質ポロニウム210を使って「毒殺」されたと疑われている事件。
 
 英検察当局は今年の5月、リトビネンコ氏とロンドンで接触したロシア在住の元ソ連国家保安委員会(KGB)のルゴボイ元職員を容疑者と断定し、同氏の身柄の引き渡しを求めていたが、ロシア政府は「自国民の国外引き渡しは憲法で禁止されている」として、この英国側の要求を正式に拒否した。

 これに対して、英政府は7月16日、英国駐在のロシアの4人の外交官の国外追放のほか、ロシアとの間のビザ発給手続きの簡素化に関する交渉を凍結することなどを含めた制裁措置を取り、19日には今度はロシア政府がロシア駐在の4人の英国外交官を追放する報復措置を取り、さらには自国政府関係者の訪英を禁止し、英政府関係者にはビザも発給しない措置を取って対抗、外交官追放合戦という冷戦時代を彷彿させるような事態に発展している。

 この間、ロンドンに亡命中のロシアの元政商ボリス・ベレゾフスキー氏が「プーチン政権は自分の暗殺を目的としたヒットマンを送った」と発言し、ロンドン警視庁が6月21日にロンドンのホテルに滞在していたロシア人を殺人謀議容疑で逮捕していたことも明らかとなった(後に釈放・ロシアへ強制送還となる)。英紙はこのヒットマンが故リトビネンコ氏の未亡人や同じくロンドンに亡命中のチェチェン人指導者アフマド・ザカーエフ氏の暗殺も計画していた、と報じており、「リトビネンコ暗殺」事件をめぐって英露間に血生臭い雰囲気が漂っている。

 ロシア側は一貫してこの事件の背後には、プーチン政権の政府転覆を狙うベレゾフスキー氏の存在があるとして同氏のロシアへの身柄引き渡しを英国政府に対して要求している。一体この事件のカギを握るとされるベレゾフスキー氏とは何者で、遂に外交官追放合戦にまで発展した英露間の対立にはどんな背景があるのだろうか?

反プーチン派の富豪ベレゾフスキーとは?

 エリツィン政権の政商として知られたベレゾフスキー氏は、ソ連崩壊後の1990年代後半、自動車ディーラーLogoVAZをはじめ、3つの商業銀行、国営アエロフロート航空、石油大手のシブネフチ、ロシア最大のアルミ会社RUSALを傘下に収め、さらに2つのテレビ局とラジオ局や新聞社など多くのメディアを支配し、「ロシアで最も裕福なビジネスマン」として権勢を振るった人物である。ベレゾフスキー氏の権力基盤を語る時に、「チェチェン人」の存在は不可欠である。
 
 1996年に米国の雑誌「フォーブス」は、ベレゾフスキー氏がどのようにして財産を築いたのかについてこう記している。「モスクワ警察の発表によると、ベレゾフスキーは有力なチェチェンの犯罪組織と密接に協力し合い自動車販売業を始めた・・・」と。このインタビューでベレゾフスキー氏は、「過去に受けた恩恵に対する感謝の気持ちからチェチェンを支持している」と述べており、明確にチェチェン側に立っていることが分かる。

 チェチェン紛争は、単なるチェチェン民族による独立闘争ではなく、欧米の反露工作という側面も持った複雑な国際紛争である。カスピ海からロシアの港をつなぐ石油パイプラインがチェチェンを通ることから、カスピ海の石油利権と関係する西側の勢力は、コーカサス地方の政治的不安定を煽り、グルジアやアゼルバイジャンへの影響力を強めてカスピ海の石油を支配下に収めるためにも、チェチェンにてこ入れしてロシアの弱体化を狙うという構図が存在する。

 実際にチェチェン戦闘員の指導者の一部は、1980年代に米国や英国が世界中のイスラム教の戦士たちをアフガニスタンに集めて軍事訓練をしてソ連にぶつける秘密工作を行った時に、アフガニスタンで米英の軍事訓練を受けたと言われている。ロシアにとってみれば、冷戦時代にアフガニスタンで西側が仕掛けた対ソ工作の延長線上で、今度は米英がチェチェン人を使ってロシア弱体化のために秘密工作を仕掛けていると捉えられている。エレーヌ・ブラン著『KGB帝国』によれば、「チェチェン問題は現代ロシアのアキレス腱である」なのだが、このロシアのアキレス腱に食い込んでいるのがベレゾフスキー氏なのである。

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「「スパイ暗殺事件」の背後にある暗闘」の著者

菅原 出

菅原 出(すがわら・いずる)

ジャーナリスト/国際政治アナリスト

アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。在蘭日系企業勤務、ジャーナリスト、東京財団リサーチフェロー、英国危機管理会社役員などを経て、現在、国際政治アナリスト

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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