大手自動車メーカーが新車を市場に送り出すのに4年の歳月がかかる。米テスラ・モーターズはその間に、新しいタイプの自動車会社を作り上げたうえに、大変な前評判まで勝ち取った。
10月に生産が開始される予定の電気自動車「テスラ・ロードスター」(9万8000ドル)は、環境に優しいだけでなく、デザインもいい。
グーグル創業者も予約
恐ろしく静かで、たった4秒で時速96kmに到達できるスポーツカーにいち早く乗ろうと、俳優のジョージ・クルーニー氏やカリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルツェネッガー氏、米グーグルの創業者セルゲイ・ブリン、ラリー・ペイジ両氏が購入予約リストに名を連ねている。
だが、環境に気を使う一握りの有名人がトヨタ自動車の「プリウス」からロードスターに乗り換えた後、果たして経営が成り立つだけの需要があるのだろうか。
新興自動車メーカーの歴史は惨憺たるものだ。直近の成功例は、1925年にウォルター・クライスラーが創業したクライスラーにまでさかのぼらなければならない。
多くの業界関係者はテスラの技術に感嘆しつつ、カリフォルニア州サンカルロスに本社を置く従業員250人のこの会社が競争が熾烈な自動車業界で飛躍できるほどクルマを売れるのか首をひねる。
「量産するには資金不足だろう」とコンサルティング会社オートパシフィック幹部のジェームズ・ホール氏は言う。「テスラがクルマを売れるのは、大手が100%電気ではないにしろ十分グリーンなクルマを売り出すまでだ」。
では、テスラに勝算ありと思わせるものは何か。
ほかでもない、よそ者が作った自動車メーカーだという事実である。デトロイトは経営効率のモデルとは言い難い。「シリコンバレー版の自動車会社」を自称するテスラは、ハイテク業界から幹部と経営理念を拝借し、従業員にストックオプション(株式購入権)を付与。独立系ディーラーは排除し、製造は外部委託する。
テスラの創業資金1億500万ドルの大半は、夢を追うカリフォルニア州の富裕層やベンチャー投資家の懐から出たものだ。
「シリコンバレーは万事、世界一だ」と豪語するのは米ペイパル創業者のイーロン・マスク氏。ペイパルを15億ドルで売却した後テスラ会長に就いたマスク氏は大口出資者でもある。「シリコンバレーの企業文化は極めて効率的で、競争力がある」。
電池はリチウムイオン
倉庫を改造したテスラのオフィスは新興企業の活力に満ちている。経営トップは全員(日常業務に関与しないマスク氏を除く)、小さく、簡素なオフィスで一緒に働く。重大な意思決定が必要な場合でも、改まった会議や企画書は必要ない。

CEOのエバーハード氏が掲げるのは「ハイテク企業でもある自動車メーカー」 (写真: Martin Klimek)
元コンピューターエンジニアで、テスラCEO(最高経営責任者)のマーチン・エバーハード氏は「ハイテク企業でもある自動車メーカー」を作ろうとしていると言う。
ブレーキやシートベルトなどのありふれた部品はすべて外注し、テスラの技術者は電池、コンピューターソフトウエア、モーターなどの中核技術に専念する。
トヨタやゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーターはハイブリッド車にニッケル水素電池を使用しているが、テスラはリチウムイオン技術こそが最終的に安く、長時間使用に堪えると確信している。
リチウムイオン電池はシリコンバレーの住人にとって非常に馴染み深いものの動力源でもある。そう、ラップトップパソコンだ。
実際、ロードスターのトランクに鎮座しているエネルギー蓄積装置は、ラップトップ用蓄電池6831個の集合体に過ぎない。装置の製造コストは約2万ドルで、車体価格の約5分の1を占めている。
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