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首相交代の歴史的必然

80年代の成功体験から抜けだせない日本は取り残される

  • 山崎 養世

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2007年9月26日(水)

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 安倍前首相が突然辞職してしまいました。自民党の新しい総裁が誕生して記者会見に臨んだ姿は、気の毒なまでに憔悴しておられました。ご回復をお祈りいたします。

 さて、7割近い支持率でスタートし、長期政権になると見られた安倍内閣は、1年と持ちませんでした。一方で、短命との見方も多かった小泉内閣は、戦後3番目の長期政権になりました。

 政権の寿命を決めるものは何でしょうか。

 結局、その政権が日本にとって必要とされる度合いによるのでしょう。小泉元首相が最重要の政策として掲げたのは、巨大な不良債権問題の解決でした。そのためには、日本は変わらなくてはいけない。政官業のしがらみや古い慣習、それに乗っかる古い自民党をブッ壊す、と小泉元首相は叫びました。

空前の利益を上げる大企業だがその裏では…

 果たして小泉政権が実行したことは、欧米諸国が10年以上前に実施したことと同じでした。財政資金を入れて、大銀行や企業を救済しました。つぶれてしまった銀行や企業の損も政府が肩代わりしました。投入された財政資金は38兆円にも達したのです。

 これで、ピークの2割にまで下落を続けていた日経平均は救われます。2003年4月16日、竹中平蔵・元財務大臣が、りそな銀行への公的資金の導入を発表した日に7879円だった日経平均は上昇を始め、小泉首相が退陣した2006年9月26日には1万5557円に達していました。

 株主のための経営が当たり前になりました。その分、従業員や系列企業や地域の取り分は減りました。人口が減る日本国内に限界を感じた大企業は、中国をはじめとした海外を目指し、それを規制緩和が後押ししました。従業員を解雇するのも非正社員に置き換えるのも簡単になり、日本の工場を閉めて海外に行きやすくなったからです。

 海外に出た大企業は巨額の利益を上げ始めました。トヨタ自動車やキヤノンはもちろん、商社、鉄鋼、海運、化学、プラント、など、ついこの間まで構造不況と言われた業種でも1000億円以上の利益を上げる企業がザラです。

 大企業のボーナスも東京の消費も法人税収も増え、GDP(国内総生産)もプラス成長に戻ってきました。もはや、不良債権問題で日本沈没を心配する人はいなくなりました。構造改革で日本経済を救うために小泉政権は必要とされたのでした。

 しかし、そこから生まれた影の部分は巨大でした。

 国内経済に対する大企業の見方は変化しました。かつては、松下電器産業の創業者である松下幸之助氏に代表されるように、日本人を豊かにすることが企業の繁栄の道と信じられました。太平洋ベルト地帯から米国への輸出で生み出される富を、「国土の均衡ある発展」を掲げる自民党が土木事業や福祉政策の形で全国に配る。地方が豊かになれば企業の製品が売れる。一億総中流社会。国民と企業の共存共栄の時代がありました。

拡大する東京一極集中で日本経済は縮小に向かう

 そんな時代は終わりました。今や大企業の最大株主である外国人投資家は収益のあくなき拡大を求めます。時価総額トップ50社の76%が東京に本社を持つ大企業にとっては、縮小する日本経済に魅力はほとんどありません。

 財政負担は重荷です。小さな政府を求めます。地方の土木事業の削減だけではありません。高齢者が増えれば当然増えるはずの医療や介護の支出まで抑えることを要求します。農業や教育への支出も増えません。そうなると、製造業の空洞を埋めるはずのサービス産業は伸びません。それどころか、リスクを取って進出した新興企業を一罰百戒のように追い出しています。

 かくして日本経済は、海外資金と海外市場に頼る大企業とその周辺だけが伸び、それ以外には希望が生まれない構造になってしまいました。それを象徴するように、国内向けのビジネスが主体の新興企業の株価は昨年以来の下げが止まりません。

 地方では、夕張市以外にも破綻予備軍の自治体が目白押しです。行政サービスが低下し仕事がない地方から東京に出てくる人が絶えません。「地方の時代」は死語と化しました。

 古い日本が邪魔しているからいけないのだ、と言わんばかりに2年前に小泉さんが郵政民営化選挙に踏み切った時、国民もホリエモンも熱狂的に支持しました。しかし、実は小泉改革には日本経済を救う力はなくなっていました。

 むしろ、地方の縮小を加速する力になっていたのでした。その象徴が道路公団民営化でした。

 余っているという道路財源を高速道路の借金返済に回して高速道路を無料化すれば、財政効率化と地方経済活性化が同時達成されるはずです。ところが、民営化と称して世界一高い通行料金を取る公団を温存しました。

 自動車しか主な交通手段がない97%の国土の住民にとっては、高速道路無料化によるコスト低減の絶好の機会を奪うことになりました。小泉政権の寿命は尽きていたのです。その現実が、次の政権を直撃することになります。

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