業界によっては、今35億ドルの連邦助成金をもらえて、3年後には額が倍増するという話があれば、飛びつくだろう。だが、原油価格が最高値をつけている石油業界では、そうはいかない。
石油大手はエタノールを少しガソリンに混ぜることで数十億ドルの助成金を得ているにもかかわらず、エタノール85%、ガソリン15%から成る「E85」の普及に断固反対しているのだ。
米議会は「2017年までに年間ガソリン消費量の15%を代替燃料に置き換える」という目標を設定しており、E85の普及が目標達成への最短の近道だ。

エタノールの普及によって、トウモロコシなどの食品価格が急騰するとの懸念もあるが… (写真:Steve Hebert/Polaris)
石油業界はエタノール10%、ガソリン90%から成る「E10」の販売で、エタノール1ガロンにつき51セントの連邦助成金を得ながら、あらゆる手段を駆使してE85普及の足を引っ張っている。トウモロコシなどの食品価格を高騰させるという理由から、エタノール燃料の普及を非難する研究に資金援助したり、ガソリンスタンドでのE85供給を渋ったりするなどやり方は様々だ。
こうした狡猾な手口は、エタノール燃料を推進する消費者団体だけではなく、石油業界の味方とされる自動車産業からも予想外の批判を呼んでいる。
批判勢力にしてみると、今の石油業界の姿勢は「化石燃料の消費が地球温暖化の原因だ」という定説を覆そうとした業界の過去を彷彿させる。米国消費者連合のディレクターであるマーク・クーパー氏は最近発表した論文で、今の現状を「大手石油会社の対エタノール戦争」と揶揄。「石油業界は製油及びガソリン市場における石油業界の力に対抗する競争相手としてバイオ燃料のことを認識し、エタノール燃料の生産拡大に反対している」と書いた。
石油業界は助成金を受け取っているが、業界側が圧力をかけたわけではない。米議会がエタノール燃料を奨励するために助成金制度を作ったのだ。
あの手この手で普及を妨害
業界関係者曰く、彼らは反エタノール燃料派ではないものの、E85は受け入れ難いという。石油会社、天然ガス会社の有力業界団体である米国石油協会(API)のアル・マンナート氏は、「エタノールはガソリンの添加物としては効力があるが、代替燃料として機能するかどうかは疑問だ。E85に対する市場ニーズがあるとは思えない」と話す。
そこで石油業界が取った戦略が反エタノール燃料キャンペーンだ。APIは6月、調査会社グローバル・インサイトに委託した研究の結果を発表した。それによれば「2017年までに350億ガロンをバイオ燃料に切り替える」という米議会の目標を達成しようとすると、消費者が損をする。食品価格が高騰するために、消費者が年間120億ドル以上の余計な負担を強いられるというのだ。
この研究結果は広く受け入れられなかったが、畜牛・酪農・養鶏団体などの反エタノール派に支持された。グローバル・インサイト広報のジム・ドーシー氏は「裏工作はしていない」と、研究資金が調査結果に影響を及ぼした事実はないと強調する。
学術研究も物議に一役買っている。カリフォルニア大学バークレー校のテッド・パトゼック教授は反エタノール燃料の急先鋒だ。旧シェルの石油技術者だったパトゼック教授は石油採取技術を研究するUC石油組合の共同創立者でもあり、同組合の出資者にはBPやシェブロンなどが名を連ねる。
パトゼック教授は、コーネル大学のデビッド・ピメンテル教授と共同執筆した2005年の論文で、エタノールが生み出すエネルギー量は、エタノールの生産過程で消費されるエネルギー量を29%下回るという結果を発表した。バイオ燃料に対する厳しい告発である。
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