「中国

なぜ日本の動漫が中国の若者を惹きつけるのか

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2007年10月10日(水)

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 このシリーズでは、日本の動漫(アニメ・漫画)がいかに中国の青少年の心を惹きつけたかという代表的な例として、90年代半ばに大ヒットした「スラムダンク」や「セーラームーン」を取り上げたが、実は日本に出現した動漫は、どんなものでも全て中国大陸に上陸していると断言しても過言ではない。1981年にさっそうと現れた「鉄腕アトム」は、10年間におよぶ文化破壊と鎖国の中で生きてきた中国庶民に非常に大きな、そしてあまりに新鮮なショックを与えたため、「アトム」はいつまでも煌びやかな希望の星として庶民の心の中に温かく生き続けている。

 日本動漫の最初の上陸の仕方がこういう風であったから、入り口の時点で好意的な目で見られているという受け容れ環境が中国にはあった。あれから26年。約30年近い歳月が流れ、中国の発展と進歩には目覚しいものがあるというのに、それでもなお今の若者の心を惹きつけて離さないのはなぜなのか。むしろ年を追うごとにその熱狂さは、ますます激しくなっているとさえ言える。

ウェブに寄せられた「日本動漫」ファンの声

 この魅力のカギを解き明かすため、多くの取材を試みていた時に、私は「百度知道(バイドゥ・ズーダオ)」に面白い問答が載っているのを見つけた。「百度知道」というのは投稿型の検索サイトで、中国庶民がよく使う検索サイト「百度Baidu」のサービスの一つである。

 このサイトの特徴は、ユーザーが何か知りたいことや解決してほしい問題を抱えているとき、YahooやGoogleのようにキーワードを入れるのではなく、「文章」で「質問」を書き込み、ウェブ上に公開して「返答」を待つ、というサービス形式にある。この掲示板に次のような呼びかけがあった。

「誰か、私を助けてください。私は日本語学科で勉強している大学生です。実は、<日本の動漫>というテーマで論文を書こうとしています。日本の動漫ファンの皆さん、あなたたちは、なぜ日本の動漫に惹きつけられたのか、その理由を教えてください(私自身も日本の動漫ファンの一人ですが、でも論文を書くには客観的な意見が必要なんです)皆さん、どうか私に力を貸してください」

 こんな呼びかけに対して、多くの回答が寄せられ、それが掲示されていた。渡りに船だ。中国の若者たちが日本の動漫になぜ惹きつけられているのか、回答の中から代表的なものを整理してご紹介しよう。

「ストーリー」「絵」「声」「想像力」…

1:そうねぇ、日本の動漫の一番すばらしいところは何といってもストーリー展開。アニメは、その動画効果が抜群。何回でも見たいという気になるわ。

2:ストーリー展開だね。人物設定もいい。でも最も大事なのは、あらゆる年齢層の人間が見るに堪える内容であるってこと。中国の動漫みたいに、子供だけを対象としたものじゃないから。

3:やはりストーリーのすごさ。そのうえ中身も多様性に富んでいる。日本って、作品の作り方自体が中国と違うんじゃないのかな。どのようにすれば若者の心をつかんで視聴率を上げられるか、きちんと計算されているように思う。中国の動漫みたいに、10歳以下の子供だけを対象としたものじゃないし……ていうか、中国の動漫、10歳以下だって見やしないよね。それから日本の動漫は、描かれている社会環境が異なるっていうのも(私たち中国人にとっては)新鮮で魅力的。

4:映像がとてもきれいだけど、単に美しいだけじゃなく、ストーリーに命や人類や愛、友情など、人生の多くの要素が織り込まれている。だから、日本の動漫は、自分の思想の形成を助けてくれるひとつの道になっている、と思う。昔の漫画や童話と今の日本の動漫の(レベルの)違いは、たとえば「桃太郎」と「新世紀エヴァンゲリオン」を見比べれば、何も言わなくてもわかるんじゃない?

5:たぶん、心の中の欲求を満たしてくれる内容だから、日本の動漫に惹かれるのかもしれない。日本の多種多様な動漫の世界には、私自身が欲している、でも私の中にまだないさまざまなものがたくさん含まれている。だから、動漫を見ると、私は自分の心の中の空虚な部分が満たされるし、自分の居場所を動漫の中に見つけることができる。

6:誰だって美しいものが好きでしょ? 日本の動漫はとにかく美しい。きれい! それだけで十分なんです。

7:中国製の動漫は、しょせん、教育目的で作られている。そんな動漫、好きになれる人がいると思う? 優等生のキャラクターを作り上げて、「さあ、この人たちのようになりましょう」と父母に言わせるための道具が中国製の動漫。だから、「日本の動漫」だから惹かれる、ってことじゃなく、むしろ、大好きな動漫を選んでいったら、結局日本の動漫だったんです。

8:あの声優の声がたまらない。何度聞いてもステキだし、見た後に爽快感が残る。

9:中国の動漫は幼児向けで幼稚な内容だけど、それだけじゃなく、いつも党に忠誠を誓い、人民に忠誠を誓わせるものばかり。少しも人間の内面性を表現したような作品がない(ああっ、みんな、どうか私を殴らないで! だって、これは真実なんだから……)。ところが、日本の動漫のストーリーには、私たち中国の普通のひとたちと共通する思考が反映されている。登場人物の内面の葛藤を正直に描いていて、そのうえで、主人公は常にどんな困難にも打ち勝ち、最後に成功を遂げる。そんなストーリー展開が私たち視聴者の心を揺さぶり、励ましてくれる。この残酷な現実世界で自信を失ったときも、最後は正義が勝つんだという信念を与えてくれる。

10:豊富な想像力、それにつきるね。

――ウェブには、こんな回答が延々と続いている。さらに私は、清華大学の動漫サークルの大学生たちに話を聞き、回答を補ってもらった。彼らは、自分たちが日本の動漫に惹かれた理由について、こう説明する。

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著者プロフィール

遠藤 誉(えんどう・ほまれ)

 1941年、中国長春市生まれ、1953年帰国。理学博士、筑波大学名誉教授、東京福祉大学・国際交流センター センター長。(中国)国務院西部開発弁工室人材開発法規組人材開発顧問、(日本国)内閣府総合科学技術会議専門委員、中国社会科学院社会学研究所客員教授などを歴任。

 著書に『ネット大国中国――言論をめぐる攻防』(岩波新書)、『チャーズ』(読売新聞社、文春文庫)、『中国大学全覧2007』(厚有出版)、『茉莉花』(読売新聞社)、『中国がシリコンバレーとつながるとき』『中国動漫新人類〜日本のアニメと漫画が中国を動かす』(日経BP社)『拝金社会主義 中国』(ちくま新書) ほか多数。2児の母、孫2人。

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