Peter Wilson (カラカス特派員)
米国時間2007年10月2日 「Chavez's Billion-Dollar Snub of the U.S.」
ベネズエラのウゴ・チャベス大統領は、目先の経済合理性のためにエネルギー政策を変更したりしない。米国に肘鉄砲を食らわせられるとなれば、なおのことである。
ベネズエラのラファエル・ラミレス石油相は9月末、ベネズエラ、中国両国の国営石油会社が最大100億ドルを投じ、南米ベネズエラの重質油を開発すると発表した。最大で日量100万バレルに上る原油は、中国市場向けに輸出される。さらに両社は共同で、原油を精製するための工場を中国国内に3カ所建設する方針だ。
ベネズエラから中国へ原油をタンカー輸送するには30日間かかる。米国メキシコ湾岸までの所要日数5〜6日とは比較にならない遠さだ。専門家によれば、中国までの輸送費がかかるために、原油1バレル当たり約7ドルがベネズエラの取り分から差し引かれるという。
「チャベス大統領は値下げを迫られるはずだ。1バレル当たり5〜10ドルの値引きは覚悟せざるを得ない」と、ワシントンに本拠を置くエネルギー政策研究財団のルシアン・パリアレシ理事長は言う。
米国を毛嫌いしながら、石油輸出先として大きく依存
もしそうなれば、ベネズエラの機会損失は1日当たり500万〜1000万ドル、年間では37億ドルにも上る。それでもチャベス大統領にとっては、払っても惜しくはない代償なのかもしれない。
中国と長期の石油供給・精製協定を結ぶことで、ベネズエラは世界一の急成長を遂げているエネルギー市場への足掛かりを得られる。中国は今や、米国に次ぐ世界第2位の石油輸入国だ。また、長期契約のおかげで、チャベス大統領は米国市場への依存度を軽減できるのだ。
「中国側から見ると、ベネズエラ大統領は反米主義者で、経済的に不利益なことも厭わない人物だ。この好機を利用しない手はないと思うはずだ」。アーカンソー州ロンドンに本社を構える石油コンサルティング会社WTRGのジム・ウィリアムズ氏はこう分析する。
チャベス大統領は米国への依存から脱却したいという願望を隠そうとしない。大統領は繰り返し、米国はチャベス政権の転覆を試みたと非難。2002年に未遂に終わったクーデターにも米国が関与していたと主張している。
こうした発言にもかかわらず、ベネズエラの石油輸出(日量約200万バレル)の約3分の2が米国に輸出されている。ベネズエラは米国の石油輸入量の約10%を供給しており、米国政府への石油供給国としては5本の指に入っている。
だが、状況は変わりつつある。国内消費の拡大に加え、チャベス大統領がアジア諸国やカリブ諸国、南米諸国などの新市場開拓を進めるにつれて、米国への輸出量は減少してきた。米エネルギー省の統計によれば、ベネズエラの対米石油供給量は2004年から2006年にかけて9%減少し、日量約142万バレルまで落ち込んだ。今年上半期には、さらに8%減少している。
同時期にベネズエラの対中石油輸出量は急増。2004年の1万4900バレルから15万バレルへと10倍に膨れ上がった。事がチャベス大統領の思い通りに運べば、中国向けの石油輸出量は2010年までに3倍以上になる見込みだ。
ベネズエラ産重質油の処理にかかる精製コスト
専門家によれば、ベネズエラの石油産出量が減っていることを考慮すると、中国やインドをはじめとしたアジア市場向けの輸出増加は、対米輸出を犠牲にしなければ成り立たない。
チャベス大統領はベネズエラの石油産出量を2012年までに日量580万バレルまで増やせると発言しているが、大統領の社会政策プログラムに予算を奪われているベネズエラ国営石油会社(PDVSA)の問題を考慮すると、この発言を信じる人間はほとんどいない。
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