「中国

意図せざる“知日派”の誕生
〜中学3年生から見えてくる日本動漫の影響度

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2007年10月17日(水)

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 中国における日本動漫人気の実情を探るべく中国の大学生たちに取材したときに、ひとつ見えてきたのは、彼ら彼女らが日本の動漫に対する熱狂のピークを迎えたのが中学生の時期らしい、ということだ。

 小学生にとって動漫を見ることは単なる娯楽。それが中学に入り思春期を迎えてものを考える時期に差し掛かると、ストーリーや登場人物のキャラクターに深みと多様性とがある日本動漫が、彼らの精神形成上、とても大きな力を持つようになる。中学時に影響を受けた日本動漫の印象の深さは、成人した後もフレッシュな思い出として青春の美しい一ページとなる。

 ただし高校生の半ばになると、中国ならではの非常に厳しい大学受験が控えているため、勉学に打ち込まねばならず、いやがおうでも動漫への熱狂振りは一時的に衰退する。そして大学合格後はそれぞれが専門の道へ進むので、ここでようやく、じっくりと落ち着いて日本動漫サークルなどに関わる本格的な日本動漫愛好家が残っていく。……というのが中国の若者たちの動漫経験の流れのようだ。

 いずれにせよ、中学のときの動漫体験が、中国人の日本動漫好きの根にあることは間違いない。それだけに、いまの中国の中学生たちが日本の動漫とどう付き合っているのか、改めてその実態を知る必要がある。

 そのように思い至ったとき、ふと、古い記憶がよみがえった。今から6年前の2001年、私は日中友好会館の支援を得て、日本・中国・韓国の中学3年生を対象とした意識調査を行っていたのだ。

 なぜ、そんな調査を行ったのかというと、私の中で長年蓄積してきたひとつの興味があったからである。

中曽根内閣時代からの経験が生きた!

 1983年、中曽根内閣の時代に日本では「留学生10万人受け入れ計画」が始まったのだが、ちょうどその前後から今日まで、私は大学で教鞭を執る傍ら、外国人留学生の指導相談業務に従事してきた。そして、多くの国から来た留学生および日本人学生たちに接してきて痛感したのが、日本人学生と外国人留学生の間にあるさまざまな意識の差であった。

 とりわけ、地理的にも人種的にも近い国である中国と韓国と日本の考え方の違いは存外大きい。しかも中国と韓国からの留学生数は圧倒的に多い。当然、日本人学生たちが社会に出たときに仕事の上で接触する可能性も大きいだろう。

 そこで私は日本と中国、韓国の若者たちを対象に大掛かりな国際比較調査を思いついたわけだ。調査対象人数は、各国の中学3年生、各500名ずつ。そして――、調査当時はまったく意識していなかったのだが、調査結果には、いまの中国の動漫ブームを予見するような数字が並んでいたのである。

 まず私は、互いに相手の国に対して「関心があるか否か」と、「何に関心を持っているか」に関して調べた。

 日本人生徒の中国への関心度が「ある」23%、「どちらかと言えばある」36%に対して、中国人生徒の日本への関心度は「ある」44%、「どちらかと言えばある」41%。

 中国の中3の方が日本の中3に比べて相手の国に強い関心を示している。そして、興味を引くのはその関心の内容である。回答は3項目選択の複数選択方法で求めた。

 選択肢は次のとおりだ。「歴史」、「政治」、「経済」、「教育」、「科学技術」、「工業製品」、「農産品」、「自然」、「観光地」、「人柄」、「食文化」、「スポーツ」、「アニメーション」、「歌、歌手」、「その他」である。

 さて、結果はどうなったか。

 まず、日本の中3が中国に対して一番興味を持つもの、それは「食文化」25%で、次に「歴史」24%であった。日本の若者にとって中国といえば、まず中華料理、なのである。グルメ志向を象徴するようなデータだ。

現在の状況を予言していた調査データ

 一方、中国の中3が日本に対して一番興味を持つもの、それはなんと「アニメーション」46%、「科学技術」26%と、アニメが他を大きく引き離していたのである。

 ちなみに中国の中3の韓国に対する関心度は「ある」46%、「どちらかと言えばある」37%で、日本に対する関心度とほぼ同じ水準だが、その関心の内容は「歌、歌手」42%、「ファッション」28%と、中国の中学生が、日本に対してとは別の興味を韓国に対しては抱いているのがわかる。

 最近、韓国の「韓流」ドラマは日本のみならず、中国でも非常に人気が出たのだが、歌手やファッションの人気はかなり前から根強い。そんな事情もこのデータから伺える。韓国ならではの心に染み入る哀調を帯びた恋歌が中国の若い人たちに受けている、ということは、私自身感じている。

 では、韓国の中三生徒たちの日本に対する関心度は「ある」60%、「どちらかと言えばある」25%と、中国以上に日本に対する関心が高い。さらに、関心の対象も「アニメーション」43%、「科学技術」28%と、こちらも中国同様に日本アニメへの視線が熱い。

 このように2001年の時点で、中国、そして韓国の中学生たちが一番興味のある「日本」、それはアニメーション、すなわち動漫だったのである。

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著者プロフィール

遠藤 誉(えんどう・ほまれ)

 1941年、中国長春市生まれ、1953年帰国。理学博士、筑波大学名誉教授、東京福祉大学・国際交流センター センター長。(中国)国務院西部開発弁工室人材開発法規組人材開発顧問、(日本国)内閣府総合科学技術会議専門委員、中国社会科学院社会学研究所客員教授などを歴任。

 著書に『ネット大国中国――言論をめぐる攻防』(岩波新書)、『チャーズ』(読売新聞社、文春文庫)、『中国大学全覧2007』(厚有出版)、『茉莉花』(読売新聞社)、『中国がシリコンバレーとつながるとき』『中国動漫新人類〜日本のアニメと漫画が中国を動かす』(日経BP社)『拝金社会主義 中国』(ちくま新書) ほか多数。2児の母、孫2人。

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