「インド=IT」はもう古い。今やスニーカーからクルマまで作る大製造拠点。
BMWや現代自と世界の大手が進出、大量の雇用を生んでいる。
国内には300もの経済特区が誕生、熱心な誘致がさらに企業を呼びそうだ。
チェンナイの西40kmに位置するインドの町スリペルムブドル。1991年にラジブ・ガンジー元インド首相が自爆テロリストに暗殺された町として知られてきたが、最近、そんな陰惨さとは懸け離れた評判を獲得しつつある。
舗装された街路の脇に木が立ち並ぶ工業団地に、携帯電話メーカーのフィンランド・ノキアや米モトローラ、韓国・現代自動車といった世界的な大企業の工場が次々と出現している。
チェンナイ周辺にあるその他の工業団地にも自動車部品メーカーや繊維メーカーの工場が結集。ドイツの高級車メーカー、BMWの工場まである。
ITだけでは雇用生めず
インドとIT(情報技術)と言うなら、分かるが、インドと製造業?
だが過去2年間で、製造業はインドの新しい期待の星として浮上してきた。2007年3月会計年度でインドの鉱工業生産は12.5%伸びた。巨大な市場、生産性の高い労働者、ようやく投資を支援し始めた政府のおかげで、インドはスニーカーからクルマまであらゆるモノを生産するための、中国に代わる魅力的な国になり始めている。
「製造業こそインドの未来。これぞ実体経済だ」と言うのは、欧州のエンジニアリング大手ABBグループの国際担当社長、ラビ・アッパル氏。同社は2億ドルを投じてインド事業を拡大中だ。
製造業の隆盛には長い時間が必要だった。過去50年近く、厳しい規制がインドの産業を錆びつかせてしまっていた。力のあるソフトウエア・サービス産業がその遅れを補ってきたが、同産業の雇用者数は200万人程度。毎年1400万人の新規求職者が市場に入ってくるインドでは微々たる数字だ。
インドの製造業が創出する新規雇用は年間100万人足らずで、本来、その5倍は創出する必要がある。そして何億人もの国民を貧困から救うには、インドは中国のように繊維や玩具、家電製品といった労働集約型の輸出産業を確立しなければならない。
新工場の多くは急成長するインド市場向けに建設されたが、輸出も狙っている。「インドが製造業で力をつけるに従い、大規模な輸出が始まる」とコンサルティング会社タタEストラテジック・マネジメントグループのCEO(最高経営責任者)、ラジュ・ビンジ氏は言う。
大手IT企業はインドに大規模なアウトソーシング(業務の外部委託)拠点を築いているものの、製造業の投資額は規模が違う。ムンバイ近郊では独フォルクスワーゲン(VW)と現代自動車、米ゼネラル・モーターズ(GM)、さらに伊フィアットと地元タタ・モーターズの合弁企業が新工場を建設中で、投資は合計40億ドルに上る。
韓国の鉄鋼メーカー、ポスコは120億ドルかけてインド東部のオリッサ州に工場を建設予定。ルクセンブルクに本社を置くアルセロール・ミタルはオリッサ州及びジャルカンド州の2つの製鉄所に200億ドル投資する。3月には米ヒューレット・パッカード(HP)がインド第2の工場をデリー近郊で稼働させたところだ。
仏キャップジェミニが調査した多国籍企業340社のうち、40%が2012年までにインドに製造拠点を設ける予定だ。各社は中国でのコスト上昇に悩まされており、「インド政府の前向きな姿勢を感じ取っている」とキャップジェミニの副社長ロイ・レンダーン氏は言う。
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