「山崎養世の「東奔西走」」

深刻な株式市場の格差問題

日本経済は完全な負け組に

バックナンバー

2007年10月25日(木)

1/4ページ

印刷ページ

 格差が、日本社会の大きな問題になっています。一方、競争が前提のマーケットの世界では、格差があるのは当たり前です。

 でも、今の株式市場の格差には心寒くなります。世界の中で日本経済が取り残されているのがはっきり見えるからです。

 今年の世界経済の最大の問題は、米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)です。そのせいで、世界の株式市場は、8月に暴落しました。先週からも大きく下げました。

 サブプライムローンとは、優良(プライム)でないローン、つまり返済能力が低い人に貸す住宅ローンのことです。ここで大量の焦げ付きが発生しました。

 そうなると、サブプライムローン専門に貸し付けていた米国の金融機関の経営が悪化し、つぶれるところが出ました。次に、大手の銀行や証券会社に被害が飛び火しました。

 そして、損失は国境を越えました。英国やドイツ、フランスの金融機関が巨額の損失を被り、取り付けや破綻や顧客への資金の返還停止などの事態が起きました。

 サブプライムローンそのものや、それを組み入れた証券化商品やファンドを買っていたからでした。欧米でのサブプライムローン問題からの損失の合計は20兆円に達すると言われます。

日本経済は沈む米国を尻目に成長できるか?

 こうなると、米国の金融機関は、不動産関連の貸し付け全体に一気に慎重になりました。不動産の買い手が減りました。破産した借り手の不動産は売りに出されて値下がりし、やがて影響は米国の不動産全体に広がりました。欧州でも日本でも不動産関連の貸し付けが減りました。

 おかげで、米国の住宅は1970年以来の値下がりをしています。米国経済が深刻な不況に突入する危険性が指摘されています。これまでの米国の景気のかなりの部分は、不動産の上昇とそれに関連した雇用や消費に支えられてきたからです。

 収入の面では本来は家を買う余裕のない人にまで住宅ローンを貸したのが、サブプライムローンでした。そこが直撃されたわけです。

 2003年の超低金利のボトムから昨年6月まで、中央銀行であるFRB(連邦準備理事会)が徐々に金利を上げてきたため、サブプライムローンのような返済能力の低い借り手が真っ先に破綻してしまったのでした。消費者の購買意欲が急速に低下してきました。雇用の伸びも止まりました。

 欧州も景気後退を心配しています。米国への最大の輸出国である中国の成長にも急ブレーキがかかるのでしょうか。世界は米国発の同時不況に陥るのでしょうか。

 ところが、日本では、野村証券を除けば、金融機関は米国のサブプライムローン問題からの影響はほとんどないようでした。それなら、日本経済は沈む米国を尻目に成長を続けるのでしょうか。

上場企業の収益はかなりの部分が海外へ

 株は経済の鏡と言われます。株が企業の将来の収益を予想して動くからです。経済が悪化すれば、企業の収益は下がり、株は下がります。また、金利が上がり続ければ、株は下がるのが普通です。

 企業の借り入れコストが上がり、収益が減ると予想されるからです。では、今年の世界の株式市場はどうなっているのでしょうか。

 日本株は低調です。今年の日経平均は、先週末までに3%近いマイナスでした。新興株指数である日経ジャスダック平均はマイナス11.7%、東証マザーズ指数は18.8%マイナスでした。

 そして、日銀などの報告では、ようやく上向いてきたはずの景気も再び下降線をたどりだしています。再びゼロ成長に戻ってしまいそうです。

 日本の上場企業で業績が大きく伸びているのは、ほとんどが海外での売り上げが国内よりも多いキヤノン、ファナック、商船三井、小松製作所、三菱商事、任天堂、といった企業です。

 そうした企業の株主も外国人の比率が高くなっていますから、収益のかなりの部分は海外に流れるわけです。これに対して、新興企業の多くは国内向けの売り上げが主ですが、国内の消費は低迷しています。まして、上場していない地方の会社の経営は大変です。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
この記事を…
内容は…
コメント15 件(コメントを読む)
トラックバック
著者プロフィール

山崎養世(やまざき・やすよ)

山崎 養世

1958年生まれ、東京大学経済学部卒。カリフォルニア大学ロサンゼルス校でMBA(経営学修士)取得。大和証券勤務を経て米ゴールドマン・サックス本社パートナー、ゴールドマン・サックス投信社長などを歴任。2002年に退社後、「高速道路無料化」をマニフェストに掲げて、徳島県知事選挙に挑戦。現在はシンクタンク山崎養世事務所で金融、財政、国際経済問題などの調査研究を行っている。著書に『日本列島快走論』(NHK出版)、『大逆転の時代』(祥伝社)、『チャイナ・クラッシュ』(ビジネス社)、『投資信託革命』(共著、日本経済新聞社)、『米中経済同盟を知らない日本人』(徳間書店)、『道路問題を解く』(ダイヤモンド社)などがある。



このコラムについて

山崎養世の「東奔西走」

イラク戦争を機に世界の枠組みは大きく変わった。東西冷戦が終わり米国による世界覇権の時代が訪れたものの、わずか10年で終わりを告げた。戦争はできても世界に覇を唱える力がないことをさらけ出してしまったからだ。その間、ユーラシア大陸の西ではEU(欧州共同体)が世界における政治・経済の新しい軸として存在感を増し、一方、大陸の東では中国が急成長、アジアはもとよりラテンアメリカ、アフリカとも強い絆を築きつつある。その変化の意味を意外に分かっていないのが日本である。国際的に日本はどのようなスタンスを持つべきなのか、また地方を活性化するにはどうすべきかなどについて、歴史的視点から日本の政治・経済のあり方を厳しく問う。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン

日経ビジネスからのご案内