米アップルは成功を手放しで喜んでもいられないかもしれない。
同社製パソコン「マッキントッシュ」の販売台数は、パソコン市場全体の3倍のペースで伸びている。携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」はライバルを引き離して独走状態。オシャレな「iPhone(アイフォン)」は通信業界を大きく揺さぶっている。
だが、同社が多様な製品を送り出し、何百万人もの顧客を新たに獲得するにつれ、すべての顧客を満足させることが困難になりつつあるのだ。
パソコン市場でのシェア拡大に成功し、相次ぎ新規事業に参入するアップルは、「崇拝者」とも言われる熱烈なファンを擁するブランドをいかに一般消費者に浸透させるかという貴重なケーススタディーとなっている。
「顧客基盤は多様化している。学生や一般の消費者が加わっており、顧客全体を満足させることは難しくなっている」。アイオワ大学でマーケティングを教え、顧客満足度が企業の業績に及ぼす影響について研究しているロポ・レゴ教授はこう言う。
ブログで広がるアップル離れ
アップルは依然、パソコンに関する顧客サービスの主要指標すべてでトップの座を維持している。だが今では、他社のサービス強化にアップルが押されている兆候が見られる。
ミシガン大学が8月に発表した顧客満足度調査では、アップルのスコアが昨年から4ポイント低下し、79ポイントとなった(満点は100ポイント)。それでも業界トップの成績ではあるが、アップルにとっては2001年以来初めての低下である。
一方、アップル関連のブログやウェブサイト、例えば「マッキントッシュ・ドット・コム」や「tuaw.com」での不満の声は、通常はケーブルテレビに向けられる苦情のレベルに達しつつある。
コメントの内容が手厳しいのは、アイフォンの価格設定と機能の制約などを巡るものだが、コメントはアップルの全製品に及んでいる。
ビジネスウィーク・オンラインのブログ「Byte of the Apple」に8月、自称アップルの「大ファン」が次のような書き込みをした。「自分は“二度と”アップルのコンピューターを買うつもりはない。その理由はサポートにある」。
この書き手によると、アップルのカスタマーサポートは不親切な店舗スタッフとコールセンター従業員のせいで評判を落としているという。
このような不平不満のエピソードは、最近のアップルの新製品発売を巡る派手な宣伝のために、より声高に叫ばれるようになっているのかもしれない。そして、これをライバル他社に向けられた不平と比較するのは不可能だ。
アップル側は、自社で行った一連の測定結果を持ち出して、カスタマーサービスは万全だと胸を張る。
例えば、同社の185に上る店舗と電話によるサポートラインでの顧客の待ち時間は以前と同程度にとどまっている。内部の顧客満足度調査では、昨年より2〜3ポイント改善しているとCOO(最高執行責任者)のティモシー・クック氏は言う。
「我々はナンバーワンになるために十分な投資を行ってきた。時には相当の開きで断トツになっている。顧客満足度は上がっており、それを考えると気分がいい」
しかし、非の打ちどころのない評判にたとえわずかでも亀裂が生じた場合、それがより大きな問題の予兆である可能性もある。
デルがいい例だろう。デルは2006年の秋から市場シェアが縮小に転じたが、その何年も前から大勢の顧客がカスタマーサービスについて不平を漏らしていた。
アップルの場合、問題があると特に目立ってしまう。高品質のサービスは常に同社独特のオーラを放ってきたからだ。

アップルが米国で展開するサービス拠点「ジーニアスバー」 (写真:Eric Thayer/ WPN)
アップルの店舗は「ジーニアスバー」と呼ばれるサポートコーナーを設け、対面式のカスタマーサービスを無償で提供している。アイポッドへの楽曲のダウンロードの仕方からマックパソコンのハードドライブの調整に至るまで、あらゆることに対応する。
顧客は予約なしで直接来店することもできるし、48時間前からの予約も受け付けている。
デルをはじめとするパソコンメーカー各社は海外にコールセンターを設けているが、そのスタッフは時に米国人には分かりにくい話し方をする。
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