「中国

中国"動漫"新人類

2007年11月14日(水)

中国のコスプレ大会は国家事業である(後編)
この国のコスプレと寸劇の関連性

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 (前編から読む)

 国家が主導する中国のコスプレ大会。その大会にはもう1つ、日本のコスプレにはない大きな特徴がある。それは、中国のコスプレはただのイベントでなく、その多くが寸劇の形を取っているということだ。

 この疑問に答えるにあたっては、政府主催の中国コスプレ大会がどのような形で開催されているのか、その詳細をさらに知る必要がまだある。

 中国のコスプレ大会の予備コンテストは各地区の大学で行われている。そして、コスプレ大会動員の一翼も大学が担っているのだ。コスプレ大会を主催しているのが政府ならば、コスプレ大会の土台をつくっているのは大学(一部は専門学校)なのである。

 いや、正確には大学そのものではない。大学の動漫サークル。それがコスプレ大会にかかわっている。なぜか。そもそもコスプレ文化の最初の起点が、主に大学の日本動漫関係サークルだったからだ。

大学、社会人が国の後援でコスプレコンテスト

 よってコスプレ大会の動員活動も、大学そのものが関与するわけではなく、ChinaJoy大会事務局が全国の大学の日本動漫関係サークルと連携し、サークルが拠点となって動員活動を行ったり、予備コンテストの会場の提供を依頼したりしている(もちろん一般募集も別途行われている)。

 大学側には、学生サークルがどのような活動をするか、社会規範を逸脱していないかを監督する責任があるわけだが、何と言ってもChinaJoy大会の主催者は中央政府の関係部門。ほとんど国家体制下の枠組みで動いている。当然、大学側も全面協力である。

 コスプレ大会は政府が指定した「試点」の都市を中心として、北京、上海、重慶、長春、貴陽、武漢、南京および鄭州など、全国各地で予選を同時開催し、予選を通過した者が決勝戦に出演するというコンテストの形を取っている。各地区の大学の協力を得て、予選会場には各地区の大学キャンパスが選ばれているというわけである。

 たとえば2004年の上海地区予選を例に挙げるなら、同済大学、上海大学、華東政法大学、東華大学、上海財経大学、上海師範大学、上海海運大学、華東師範大学、華東理工大学などなど、実に数多くの大学が予選会場として使われており、そこに大学生や、その近隣地区の「社団」と中国語で呼ばれる、一般民衆から構成された社会団体のメンバーなどが集まる。

 この社団は高校生や一部の専門学校生などを中心として構成されているが、中には30歳を超えたような人もいる。彼ら高年齢層は1980年代に日本動漫が輸入された時、すでに小学生になっていた。

 ChinaJoy 大会のアンケート調査結果によると、会場に集まった参加者の年齢構成は、16〜18歳が14%、19〜22歳が45%、23〜25歳が24%、26〜35歳が15%ほどになる。学習段階別に見ると、中学生6%、高校生21%、大学専科生(日本の専門学校に相当)31%、大学本科生(日本の4年制大学学部生に相当)36%、修士課程の大学院生4%、博士課程の大学院生2%となっている。

 この大会で催されるコスプレコンテストは、来場者以外にネットや携帯電話等を通した投票も行われ、こうした来場者以外の投票も30%ほどの割合でスコアとして勘定されるという。国家主催のコスプレコンテストに投票する人数は、第2回から取られた統計によると、2004年の15万人から始まって、回を重ねるごとに100万人、350万人、500万人と驚異的な勢いで増加している。しかも、すでに書いたように、コスプレ大会のテレビ番組視聴者は、最初の年の3億人から今では5億5000万人にまで増えたという。

 なんと日本の人口の5倍近い中国人がコスプレ大会のテレビ番組を見ているのである。まさに中国的数値だ。ここまでの規模に急成長したコスプレ大会、たしかに政府が管轄しなかったらたいへんな混乱を招いたに違いない(ちなみに、このテレビ視聴者の中にインターネット経由の視聴が入っているのか否かは確認できなかった)。

 遠回りをしたようだが、しかし実は、中国のコスプレコンテストは、個人参加が少なく、ほとんどがこういった動漫サークルや社団といった「グループ」で出演するということもまた、寸劇形式を容易にした原因と無関係ではないのである。「中国のコスプレはなぜ寸劇の形を取るのか?」という疑問に対する答えを出さねばならない。

京劇との関連性か?

 この答えを出すためにかなり長い時間をかけて調査してみた。最初は中国に伝統的にある京劇を思い浮かべた。きらびやかな京劇だけではない。中国にはさまざまな劇の伝統がある。中華人民共和国が誕生した頃、中国の国民の90%は農民だった。もちろん文盲も多い。

 だから文字で思想を伝えたり、文字で娯楽を楽しむよりも、どんな片田舎でも、1メートルほどの高さの板を張っただけの舞台を作って、そこで芝居をやる。こういう文化があった。田植えの時期や豊作を祝う時などに合わせて踊る「秧歌(ヤングァ)」という民間の舞踏もある。また、文化大革命の時などは、毛沢東思想を宣伝するために稚拙な踊りをやらせたり、寸劇をやらせたりしたものだ。

 このように中国ではしばしば「思想を伝達する」手法としての役割を寸劇が負っていた。動漫がらみの話をすると、中国でDVDの正規版を買うと「海賊版を退治しよう」という寸劇が始まり、なかなかタイトルにあるアニメには近づけないケースがあるくらいだ。

 こうした中国事情が頭に浮かび、私は寸劇形式を取る中国のコスプレを政府が民衆の思想発信装置の1つと見なし警戒感を強めているのではないか、と当初は思ったほどだ。

 しかし、これらのどれも、「正解」ではないことに気がついた。その正解を出してくれたのは、やはり大学生たちだった。

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著者プロフィール

遠藤 誉(えんどう・ほまれ)

1941年、中国長春市生まれ。筑波大学名誉教授、留学生教育学会名誉会長、理学博士。著書に『チャーズ』(読売新聞社、文春文庫)、『中国大学総覧』(第一法規)、『中国大学全覧2007』(厚有出版)、『茉莉花』(読売新聞社)、『中国教育革命が描く世界戦略』(厚有出版)、『中国がシリコンバレーとつながるとき』『中国動漫新人類〜日本のアニメと漫画が中国を動かす』(日経BP社) ほか多数。当サイトの連載「中国動漫新人類」と「中国“A女”の悲劇」が大きな注目を集めている。「動漫」の連載を始めた詳しい経緯は、こちらの同連載第1回に。二児の母、孫二人。ユニバース株式会社留学事業最高顧問

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