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中国のコスプレ大会は国家事業である(前編)
5億5000万人が見るコスプレ中継

2007年11月7日(水)

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 2002年11月8日から14日まで、中国共産党第16回全国代表大会(16大と略称)が北京で開かれた。これは5年に1回開かれる国家構想を決定する、中国で最も大きな会議の1つである。

 この会議の中で「中国の先進文化が前進する方向性」を示していくことが重要だとされたが、それを受けてさらに、2003年6月27日28日と、北京で「全国文化体制改革試点工作会議」が開催され、北京市や上海市、広東省あるいは浙江省(杭州市)等、全国9つの直轄市や省が、「文化体制改革」のための「試点」として指定された。

 「試点」とは、「試みに新しい改革や事業を遂行してみる拠点」といった意味である。つまり、以上の拠点で、「中国の大衆が愛する文化」あるいは「中国の青少年の精神文化に関するニーズ」を研究し、吸い上げ、それを社会主義的市場経済の中に組み込んでいく作業に着手せよ、と国家命令が出たわけである。

 もっと簡単に言うと、政府が各地の拠点に対し、若者の精神文化の実態を見極め、そのニーズに応じた政策を打ち出し、若者を「まちがいのない」方向に導いていかなければならない、と命令したわけである。

国がここまで乗り出した背景

 なぜ政府がこんな命令を出さねばならないのか。それは、中国の青少年たちがあまりに日本動漫に熱狂しているからだ。しかも2000年頃から、コスプレ現象が突然国内でも爆発的に流行し始めた。若者たちは動漫というバーチャルな世界に耽溺するだけでは飽き足らず、そのキャラクターそのものに扮装し、自己実現を図ろうとしている。

 中国でコスプレが流行り始めたのは1998年と、動漫やゲームの流行に比べると割合に遅い。最初はほんの一部の人が自発的に活動したのみだった。中国大陸への上陸ルートは、台湾や香港を経て、というもの。

 1990年代後半は日本動漫人気がピークを迎えていた時期でもあり、すでに中国のどの大学にもそして高校にも日本動漫関係のサークルがあった。このため動漫やゲームのキャラクターに扮するコスプレは一瞬で広がり、以前から日本動漫のキャラクターの中に自己を見いだし、自己投影をしていた若者たちは、そのキャラクターに実際に変身できるコスプレのありように感動し、われもわれもと熱中するようになったのだ。

 2000年8月、中国では初めてコスプレコンテストなるものが開催された(もちろん、この時はまだ国家主催ではない)。この商機を関連業者が見逃すはずがない。インターネットやテレビ、あるいはオンラインゲームの業者まで、あらゆるメディアがコスプレイベントを新しいビジネスチャンスと見なすようになる。

 特にオンラインゲームの会社である華義公司は、同社のヒット商品である「石器時代」に関連させて、「2001年石器最優秀COSPLAY大会」を開催し、最優秀賞に輝いた最もチャーミングなCoser(日本で言う「コスプレイヤー」)の写真をウェブサイトに掲載した。イベントは大成功。ゲーム「石器時代」はますますヒットした。その成功を見て、コスプレとオンラインゲームを結びつける、というのがゲーム業者の常套手段になった。さらに、これまでアニメのコンテンツそのものを取り扱ってきたテレビ局やインターネット業者もコスプレの世界にこぞって参入するようになる。

 中国にはすでに「日本動漫」という土壌があったから、コスプレ文化が広がるのに時間はかからなかった。若者たちの間で爆発的な人気を博すとともに、全国のあちこちで個別に、そして自発的に、動漫大会と同時にコスプレ大会も行われるようになったのである。

 若者たちが熱狂する文化、そして何よりビジネスチャンス――。

 この両方の動きを見て取った政府は、2003年6月27日に指定した「文化体制改革試点」である北京市や上海市、広東省あるいは浙江省(杭州市)等、全国9つの直轄市や省を中心として、コスプレ大会の開催を決定した。

大会中継は第1回から大人気に

 ただし、この政府主導のコスプレ大会は単独開催されるのではなく、「中国国際数碼互動娯楽産品及技術応用展覧会」(China Digital Entertainment Expo & Conference)の中で同時開催される。ChinaJoy大会の別名で中国では知られる同展覧会の目的は、オンラインゲーム等が青少年に与える精神的影響を健全化させ、かつ中国のオンラインゲームビジネスを促進することにある。

 ChinaJoy大会では、オンラインゲームのイベントから始まって、国際動漫フェスティバル、ネット上でのコスプレ・カバー・キャラコンテスト、そして会場での「ChinaJoy Cosplay 角色扮演(コスプレ)嘉年華(カーニバル)」というコスプレコンテスト大会などが開かれる。コスプレは、すでにChinaJoy大会の中で最も熱気あふれるイベントとのことだ。

 第1回大会は2004年1月に開催されたが、そこには中国最大のポータルサイトであるSohu(捜狐)オンラインをはじめ、網易游戯(ゲーム)、光通通信等、30以上のオンラインゲームを運営するネット関係者が集まり、300を超すテレビ局が詰めかけ、24時間体制で連日放映し続けた。特に旅游衛視というテレビ局は先端を行き、13.67%の視聴率を稼いだという。すべてのテレビ局の視聴者数を総計すると、約3億人に上ったようだ。

 コスプレ人気にあやかり、コスプレ映像を流すテレビ番組にはスポンサーもたくさんつき、ビジネスの面からも熱い目が注がれる「熱門」(ホットスポット)となった。

 ChinaJoy大会は2004年に2回、翌年からは年1回開かれるようになり、2007年で第5回目を迎える。ChianaJoy主催者側の発表によれば、2007年の会場参加者は60万人だが、中継を行っているテレビ番組等の視聴者は5億5000万人というのだから、その熱気ぶりも尋常ではない。

アニメ産業の「基地」を建設

 ここで注目すべきは、コスプレ大会を開催するようになったのとちょうど同じ時期、中国政府は、中国国産動漫の振興を促すために全国のいくつかの拠点に「中国国家動画産業基地」を建設している。そう、中国は国を挙げて動漫に関するあらゆる産業に対し、一斉に肩入れを始めているのである。

 なぜ中国政府は、日本ではオタクのイベントと見なされていたコスプレを積極的に認め、それどころか主催して振興を図ろうとしたのだろうか?

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「中国のコスプレ大会は国家事業である(前編)
5億5000万人が見るコスプレ中継」の著者

遠藤 誉

遠藤 誉(えんどう・ほまれ)

筑波大学名誉教授

1941年、中国長春市生まれ、1953年帰国。理学博士。中国で国務院西部開発弁工室人材開発法規組人材開発顧問、日本では内閣府総合科学技術会議専門委員などを歴任。2児の母、孫2人。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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