Robert Berner (BusinessWeek誌、シカゴ支局記者)
Brian Grow (BusinessWeek誌、アトランタ支局記者)
2007年11月12日発行号カバーストーリー 「Prisoners of Debt」
まるでゾンビ映画のようだ。破産裁判所によって免責された債務が再び息を吹き返し、消費者を悩ませる。怪談じみたこの状況を煽っているのは、“死んだはずの債務”を熱心に売買する信じ難い市場の存在だ。
帳消しになったはずの債務がどのようなからくりで息を吹き返すのかは、バン・ラサボングサ氏の1件が参考になる。
ノースカロライナ州ローリーの工場で働くラサボングサ氏は、2002年に破産手続きを行い、次々に送られてくる請求書の山からなんとか這い出すことができた。裁判所によって帳消しにされた、つまり“免責された”債務の中には、米大手クレジットカード会社キャピタル・ワン・ファイナンシャル(COF)に対する9523ドルが含まれていた。
クレジットリポートが更新されない!
ところが、ローリーの米破産裁判所に提出された文書によると、キャピタル・ワンは免責されたはずの債務を、返済義務のある負債残高として信用調査会社に報告し続けていたのである。
債務者側の弁護士や、裁判所から選任された破産管財人らによると、金融業者がクレジットリポート(信用報告書)の更新を怠るのはそれほど珍しいことではない。そして、それが思わぬ結果を招くことがある。
2003年9月、ラサボングサ氏は家を新築するために27万4650ドルの住宅ローン契約を結ぼうとした。ところが、米ワコビア(WB)と話を進めるうちに、「キャピタル・ワンに債務を弁済するか、債務が免責されたという証明をキャピタル・ワンから受け取る必要がある」と指摘されたのだ。ラサボングサ氏は弁護士を通じて、電話や書簡でキャピタル・ワンに連絡を取った。しかし、同社はクレジットリポートの訂正に応じなかった。
ラサボングサ氏は住宅ローンを借りるために、こうした状況に陥った多くの債務者と同じ行動に出るしかなかった。あきらめてキャピタル・ワンに9523ドルを支払ったのだ。法的にはもはや支払い義務がないにもかかわらずである。
「日常茶飯事です、判事」
こうした事件のおかげで、免責債務は一部の企業──債務者の様々な延滞債権を主に売買する、あまり知られていない企業──の注目を集めるようになった。支払い期限を過ぎた額面何十億ドルもの“請求書”が、毎年かなりの割引価格で取り引きされている。
この事業に手を染めている企業のうち5社がナスダックに上場しているほか、有力な資金供給者の後ろ盾を持つ企業もある。シアトルの米ビー・ラインは昨年、ダラスを本拠とする米ヘッジファンド、ローン・スター・ファンドによって買収された。また、米投資銀行ベア・スターンズ(BSC)は、破産債権買い取りの英マックス・リカバリーと米イーキャスト・セトルメントを傘下に置いている。
破産に関する専門家でさえ、このような事業の存在に困惑している。3月にニューヨークで開かれた予備審問で、破産裁判所のロバート・ドレイン判事は、米JPモルガン・チェース(JPM)の弁護士にこう尋ねた。一体どうやって、既に免責されているクレジットカード債務を売却できたのかと。「免責済みの債務を誰が買おうとするのか、私には理解できない」と判事は首をひねる。
「これは日常茶飯事です、判事」と、チェースの弁護士トーマス・E・スタッグ氏は答えた。
ドレイン判事が困惑するのも無理はない。本来、免責債務は紙切れ1枚の価値もないはずだ。判事がいったん負債を免除したら、免責を受けた人物には法律上、弁済義務はなくなる。金銭面での再出発を認めようというのが、破産制度の目的の1つだからだ。実際、破産法は免責債務の回収を禁じている。
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