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教育バウチャーという名の格差拡大政策

教育の世界に地域の自由な発想と経営評価を

  • 山崎 養世

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[1/4ページ]

2007年11月21日(水)

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 日本の公立学校の制度は、過去40年にわたって、東京を中心に、社会の格差と不平等を拡大する方向に働いてきました。高校受験の過当競争を無くすとして1960年代に導入された学校群制度は、その逆に、中学受験は当たり前、小学校、果ては幼稚園のお受験も珍しくない世の中を作りました。その愚策の後遺症から立ち直らないうちに、違う角度から、また新たな愚策が導入されようとしています。

 教育バウチャー制度です。義務教育に市場原理を導入しよう。お金を払っているのだから、われわれはいい教育サービスを選ぶ権利がある。そのために教育バウチャーというものを導入しよう、というのです。もっともらしく聞こえます。安倍晋三政権で誕生した教育再生会議などで議論されていますが、日本の実態にはとても合わない制度です。

生徒が集まる人気校に予算配分を多くする仕組み

 バウチャーとはクーポン券です。今考えられている教育バウチャー制度では、小中学生の子供を持つ親が、バウチャーを持っていけば、行きたい学校が選べます。今までの学区の縛りはなくなりますから、これまでは制限されていた越境入学が堂々とできる制度といってもいいでしょう。公立の小中学校を自由に選択できます。そうして集まった生徒の数に応じて各学校に予算を配分する仕組みです。生徒獲得競争をさせることで学校の教育「サービス」の向上をさせる狙いがあるそうです。

 公立小中学校にそんな制度が導入されたら、どんなことが起きるでしょうか。いわゆる評判のいい学校に、生徒が集中するでしょう。その結果、評判のいい学校の予算は増え、ますます充実します。逆に評判の悪い学校の生徒数は減って、予算も減ります。お金にも事欠くことになるでしょう。評判の悪い学校の教育サービスはますます低下する悪循環に陥るでしょう。

 世間で評判のいい学校は、とかく恵まれた、つまりお金持ちの多い地域にありがちです。その逆に、評判の悪い学校は、経済的に余裕のない地域にありがちです。そして、遠いところにある評判のいい学校に子供を通わせられるのは、余裕のある家庭の子供たちが多いでしょう。予算を減らされる評判の悪い学校に通うのは、どうしても余裕がない家庭の子供が多くなるでしょう。

地域の学校を住民が捨てる越境入学が蔓延すれば、地域は荒れる

 同じ町内でも、評判のいい学校に通う子供と、評判の悪い学校に通いつづける子供ができるわけです。仲良くできるでしょうか。評判の悪い学校はますます荒れるのではないでしょうか。荒れた学校に乗り込んで良くしよう、という先生がいても大変でしょう。毎年予算が削られる中で苦労することになるでしょう。

 教育バウチャー制度は、地域と学校との結びつきにもダメージを与えるでしょう。小中学校は地域が支えていくものです。地域の学校を住民が捨てて、よさそうなところに子供を越境入学させるようなことが蔓延すれば、地域は荒れていくでしょう。こんなことが続けば、生徒も先生もなかなか寄りつかない学校を作ることになるでしょう。

 単なる市場原理を義務教育に持ち込めば、復元力というものが働かないからです。とくに東京に教育バウチャー制度を安易に持ち込むことには大きなリスクがあります。教育バウチャー制度は、東京の中の地域間格差を加速するだけに終わりかねません。

学校評価の基本となる“ベンチマーク”がない

 予算を配分する原理としても教育バウチャー制度はうまくいかないでしょう。実績評価と改善のために必要な原理が働かないからです。怠慢だったり無能だったりする校長でも、とても評判のいい学校に赴任したら簡単に教育バウチャーが集まります。やる気と能力にあふれた校長でも、問題校に赴任すれば教育バウチャーは集まりません。

コメント49件コメント/レビュー

私は山形県の田舎の出身で、当然塾も予備校もなく勉強は高校に入ってからですが、県立高校から旧帝大の法学部に現役で入りました。中学校は1学年60人で、半分以上が農家で、教師もひどいレベルでしたが、結局、私を含め旧帝大や、医学部を含む国立大学に、8人合格しました。全員現役です。またみな貧しいこともあり、私立大学に進学した者はいませんでした。要は関係ないと思います。仕事についてからも、同じようなレベルの大学卒業者であれば、明らかに地方出身者のほうが、地アタマがよく、余力があると思います。能力以上のものを子供のころから無理させても、結局能力以上にはならないですし、どんな環境で、どんな貧乏でも、能力の高い者は東大に入れます。(2007/11/26)

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私は山形県の田舎の出身で、当然塾も予備校もなく勉強は高校に入ってからですが、県立高校から旧帝大の法学部に現役で入りました。中学校は1学年60人で、半分以上が農家で、教師もひどいレベルでしたが、結局、私を含め旧帝大や、医学部を含む国立大学に、8人合格しました。全員現役です。またみな貧しいこともあり、私立大学に進学した者はいませんでした。要は関係ないと思います。仕事についてからも、同じようなレベルの大学卒業者であれば、明らかに地方出身者のほうが、地アタマがよく、余力があると思います。能力以上のものを子供のころから無理させても、結局能力以上にはならないですし、どんな環境で、どんな貧乏でも、能力の高い者は東大に入れます。(2007/11/26)

山崎氏は常に民主党の主張を代弁して居られるが、是非質問したい。兎角、民主党はニューヨーク・タイムスの記事を引用する。昨年の4月、同紙は「日教組を日本で2番目に大きいコミュニストパーティー」とした。民主党にとって日教組は身内同然。二人の日教組出身の国会議員がいる。この事実をどう説明するのか。私は昭和25年生まれ。「番町、麹町、日比谷、東大」と言われた時代に、東大を除き番町から日比谷で学んだ。勉学は厳しかったが、先生方は誇りを持って教団に立たれていた。そして、私の両親と共に親身に教育全般に臨んで下さった。殆どの級友が越境入学だった。然し、虐めなど全く無かった。私は「日教組」が日本の教育を崩壊させたと思う。最後に、反米主義の山崎氏に聞きたい。1949年ノーベル平和賞を受賞したバンチ博士は、ブロンクスの貧民外で生まれた黒人だ。ストリートギャングだった少年時代を脱し、奨学金でハーバード大を卒業した。それを格差というのか。貴方の「格差論」は全てに信憑性に乏しい。「教育バウチャー制度」には懐疑的な一面もある。然し、日教組と一体の民主党に任せる事は犯罪行為に等しい。(2007/11/26)

高速道路の無料化については山崎さんのご意見と私の考えと大変二通ってますがこの教育に関してのお話は捕らえ方が違うと感じました。1.米国の教育と比較され、人種差別を触れられてますが日本ではありません。公教育ですので平等です。2.時間とお金は万人に等価値をもたらします。親が何に使うかは別です。日本の親、イスラエルの親は子供の教育に使いました。ペルーの移民の子供は皆素晴らしい職業についております。3.福沢諭吉の時代には士農工商という制度があり枠組みがありました、そこで教育を受けた優秀な人材もその能力を生かす所に制限を受けていました。今は違います。いろいろな職業があり、自分の能力にそって伸ばせます。4.米国と日本の教育の中身が違う為、今の自主性が無い子供が育つ訳です。独立自尊の子供を育てなく拝金主義のサラリーマンが育ってしまったのです。米国で感じるのは自分の能力を高く売れる試みをしている事であり拝金主義ではありません。商品も品質にグレードがあり貧乏にんも金持ちも其の程度によって生活をしていきます。行かざるを得ないと云う意味です。5.医師、弁護士、先生は人を助け、育て、守るという意思と志を持たねばやってはいけない職業です。先生さえ良ければ日比谷に行かなくても良いでは無いでしょうか。優秀な生徒を集めてそれで良しとするか先生のレベルを上げ、教授法を勉強していただき最低の義務教育をみっちりしていただき卒業試験制度を設けることです。 皆さん如何?(2007/11/26)

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