Stanley Reed (BusinessWeek誌ロンドン支局長)
米国時間2007年11月27日更新 「Abu Dhabi's Citigroup Bargain」
米シティグループ(C)に対するアブダビ投資庁(ADIA)の75億ドルの出資は、巨額資金を持つ湾岸諸国やシンガポール、中国などの国々が米ウォール街を買い漁り始めたことを意味する。今後、こういうことが次々に起こるだろう。
湾岸アラブ諸国は現在、年間約2000億ドルの経常黒字を生み出しており、その潤沢なカネをどこかに投資する必要に迫られている。米モルガン・スタンレー(MS)によると、世界最大のソブリン・ウェルス・ファンド(SWF、政府系投資ファンド)であるADIAは、推定8750億ドルもの資産を持つ。
過剰流動性と疲弊した金融機関の“結婚”が相次ぐ
湾岸諸国は米国経済に懸念を抱いているし、“Dワード”(NBO注:通常はデフレを指す)と呼ぶドルの下落基調が続くことを心配してもいる。だが、シティのような問題を抱えた銀行はまだ“お買い得”に見えるのだ。
「過剰な流動性と疲弊した金融機関という材料が揃えば、当然、“結婚”ということになる」。ドバイを本拠とし、クウェートとカタール、ドバイの資金が入ったプライベートエクイティ(未上場株)投資会社、アブラジ・キャピタルのCEO(最高経営責任者)、アリフ・ナクヴィ氏は言う。
湾岸諸国のファンドマネジャーらは、サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)危機の影響で銀行株が急落している米国の状況を綿密に観察している。SFWのある幹部は、「米国の信用危機はまだ進行中であり、ファンドは今後、もっと安値で株式を取得できるだろう」と見ている。
しかし、湾岸諸国のファンドは優良な金融機関については念入りに検討して、大型出資を狙う意欲があるようだ。今回のADIAの件がそれを示している。「こうした金融機関は、今は経営が圧迫されているかもしれないが、極めて質が高い組織だ」とナクヴィ氏。「湾岸諸国は、こうした本当に価値があるものを買いたいと考えている。地理的に離れていることは何の制約にもならない」と言う。
シティの経営には介入しない?
ADIAはシティに最大75億ドル投資し、2010年3月15日から2012年9月15日にかけて強制的に普通株に転換される出資証券を取得する。転換後のADIAの持ち株比率は最大4.9%となり、現在シティの最大株主であるサウジアラビアのアルワリード・ビンタラール王子を抜く。
経営環境の悪化とサブプライム関連の評価損のせいでバランスシートが劣化しつつあったシティにとって、新たな資金は大きな助けとなる。しかし、シティが出資を求めて湾岸へ向かわねばならなかったこと自体が、投資家にとっては懸念材料となる。
モルガン・スタンレーのアナリスト、ベッツィー・グラセック氏の投資家向けメモによれば、「(今回の資金注入は)シティの資本基盤を強化し、投資リスクを減らすものだ」。だが、こうも指摘する。「投資の条件を見ると、追加的なハイブリッド債発行が可能となっている。シティはその可能性が高いと考えているもようで、ADIAとの交渉の過程でこの条件が盛り込まれることになるだろう。ハイブリッド債が増えれば、1株利益はさらに希薄化する」。
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