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中国政府は日本動漫を、どう位置づけたか【前編】

──日本動漫を「国際敵対勢力」と位置づけた国務院・中共中央文書

2007年12月19日(水)

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 さて、これまで見てきたように、中国の動漫(アニメ・漫画)産業を語る上で欠かせないのが、国家広播電影電視総局(国家広電総局)の存在である。

 調査を進めるうちに私はふと思った。

 動漫をめぐる国家広電総局の施策はあまりに規模が大きく、国家レベルの事業である。広電総局にここまでの力を持たせるからには、背景にさらに上のクラス(この場合は国務院か中共中央組織)の意思決定があるのではないか? もちろん、中国国家アニメ基地の運営に関する管轄は、広電総局に任せるということを国務院は2004年12月に決定している。しかし、その後の政策の方向性や思想性に関して、広電総局が一人で決められるはずがない。

 そう思い、国務院の通達をくまなく調べていたら、やはり、あった。

日本動漫を「国際敵対勢力」と位置づけた政府文書

 2004年2月26日、中共中央と国務院の両方の名において、〈未成年の思想道徳建設をさらに強化改善することに関する若干の意見〉という通達が出ていたのだ。

 「若干の意見」などというと、まるで「ちょっとした意見」のようなイメージを受けるが、とんでもない。中国の場合は、中国という国家の最高意思決定機関であり最高度の命令権を持っている国務院と中共中央の出す文書は、たいがいの場合、「若干の意見」と書くという習慣がある。すなわち、この「若干の意見」には、誰も逆らえない。毛沢東が使い始めた言葉だと聞いている。

 その「若干の意見」に書いてある内容を細かく読んで驚いた。そこには次のような文章があったのだ。

 「国際および国内形勢の深刻な変化に直面して、未成年の思想道徳建設は新しい局面に面隣しており、また厳しい挑戦を受けている。(中略)国際敵対勢力が、我が国の(特色ある社会主義事業の)後継者たち(若者)を争奪するという闘争は、日増しに先鋭化し複雑化している。彼等(国際的敵対勢力)は、いろいろな方法で我が国の未成年者に対して思想文化の浸透を強化しており、ある意味での堕落し没落した生活方式が未成年者に与えている影響を、もはや無視することはできない」

 ここで言うところの「国際敵対勢力」とは、もちろん日本のことであろう。あるいは一部アメリカも入っているかもしれないが、動漫の国別占有率(日本80%、欧米10%だから、アメリカはこの10%の内の一部)から言えば、主として日本ということになろうか。
 少なくとも日本はそのターゲットの最たるものであることは確かだろう。

 そうなると「思想文化の浸透」とは、まさに日本の動漫が中国の若者の間を席巻してしまった事実を指すことになる。その前提に立って、この文書を翻訳するとこうなる。

 「日本という敵対勢力は、いろいろな方法で中国という国の未来を担う若者の心を奪い、精神文化浸透を行っている。その結果、一部の若者の生活を堕落させ、しかもその方法はますます先鋭化し、複雑な様相を呈している。われわれは断固、その敵対勢力と闘わねばならない」

 中国政府は、このように言っていることになる。

 何を言っているのだ──! 中国の若者が日本の動漫を好きになったのは、彼ら彼女らが勝手に選択したことであって、日本はまったく強制していない。海賊版を普及させたのもほかならぬ中国人たちである。むしろこの件に関しては、日本の動漫制作者側は、著作権を侵害されて、中国の海賊版業者によって不当に損害を与えられている、「被害者」なのだ。あなたがたに、「国際的敵対勢力」などと呼ばれるいわれは、どこにもない!

 私はもちろん、多くの日本人がこう思うだろう。

 こうした中国政府の言いがかりともとれる発言の裏には、前回記した事実がある。

 すなわち、80年代初頭、日本のアニメが中国側に安く買い叩かれたこと、そしてその事実をなぜか今中国は、「日本は、中国を文化侵略するために、ダンピングしてアニメの価格を下げ、むりやり普及させようとした」と曲解していること。

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「中国政府は日本動漫を、どう位置づけたか【前編】」の著者

遠藤 誉

遠藤 誉(えんどう・ほまれ)

筑波大学名誉教授

1941年、中国長春市生まれ、1953年帰国。理学博士。中国で国務院西部開発弁工室人材開発法規組人材開発顧問、日本では内閣府総合科学技術会議専門委員などを歴任。2児の母、孫2人。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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