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中国政府は日本動漫を、どう位置づけたか【後編】

──「抗日」と「日本動漫愛好」を「一つの箱」に?

2007年12月26日(水)

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前編から読む)

 さて、〈未成年の思想道徳建設をさらに強化改善することに関する若干の意見〉〈文化体制改革深化に関する若干の意見〉に続く、国務院の3回目の通達〈我が国の動漫産業発展推進に関する若干の意見〉の指導精神は、「社会主義の先進的な文化の繁栄と発展の要求に沿って、中華民族の優秀な文化を徹底させ健全なコンテンツの創作を促進させて、未成年者の健全な成長をもたらす環境を創り出す。社会主義市場経済の要求に沿って、経済効果が顕著な動漫産業構造を創り出す」としており、その他多くの具体的な指示を出している。

 たとえば、中国国産動漫の創出と、それに関連した服装、玩具、電子ゲーム等の生産の奨励、中央政府から地方人民政府に対して動漫産業奨励のための資金援助、動漫作品の評価機構設置、動漫制作企業への資金融資に関する便宜供与、その際の所得税減免等の優遇策、動漫創出と制作経営に関する産学官連携、動漫関係の教育機関に対する強化、動漫関係を学習するための留学に関する支援、海外の動漫関係のプロの招聘等々、多岐にわたっている。

 その中で特に注目されるのは、すでに記した多くの中央行政省庁からなる「動漫産業発展を助成するための中央省庁間連合会議制度」の設置だ。

 つまり、国家のほとんど全ての中央行政省庁が集まって新たな国家機構を作り出し、動漫に関する政策を論じていく、というのである。話はさらに大きくなってきた。これはまさに国産動漫振興のために国全体が動いたことになるからだ。

 こうした国産動漫振興の流れの中で、中国政府はさらなる手を打った。3回目の通達を出した半年後の2006年9月1日から、午後5時~8時までのゴールデンタイムに外国アニメの放映を全国一律に禁止する、と決定したのである。

「日本動漫」と「抗日」が結びつくねじれ

 改めて詳細に説明したいが、結論を先にいうと、この決定は、事実上の日本アニメの締め出し策とみなすことができる。というのも中国で放映されているアニメの80%は日本製。それを考えれば、外国アニメ放映禁止令は日本アニメ放映禁止令に等しい。

 対日政策という視点からこの流れを見ると、「日本を国際的敵対勢力と位置づけた」→「日本動漫が、中国から中国の未来を担う若者たちを奪い、その精神を堕落没落させていった、と解釈した」→「よって、その放映を禁止する」という流れになってしまう。こういう解釈と流れは中国にとって長期的に見て良い結果をもたらすのだろうか。

 たしかに、未成年者の健全な成長を促すのは非常に良いことである。中華民族の文化を促進させていくのも悪いことではないだろう。外国アニメの放映を禁止して国産アニメの保護振興を推進する、というのもいわゆる保護政策の一環だから、他国が口を挟むことではない。

 しかし、2004年2月26日通達をよく見ると、愛国主義教育を強化するために、「南京大虐殺記念日」や「九一八記念日(日本が中国侵略を開始した1931年9月18日を記念する日)」等の意義をしっかり教えなさい、とある。これらが、小学、中学そして高校における歴史教科書の学習指導要領にこと細かく記載されていき、教員の意識と闘志を高め、教室にいる青少年一人ひとりの頭の中に叩き込まれていくのである。

 こちらもくわしく解説する予定だが、現在、中国には日本に対する感情のダブルスタンダードが存在する。ひとつが日中戦争に端を発し、近年では90年代後半以降の愛国主義教育によって結果的に強化されてしまった「反日感情」。そしてもうひとつが本書で記してきたような子どものころから慣れ親しんできた日本動漫に対する「愛好心」。

 この二つの感情は中国の若者の心において独立して存在してきた。青少年が日本動漫を愛好しているとき、そこには「日本国」という「国」の顔はない。政治とは完全に切り離された世界で「動漫」を愛好してきた。それが日本であるか否かは問題ではなかったのだ。

 けれどもこの一連の通達は、逆に「日本動漫」愛好の世界にも「日本国」を意識させ、独立して存在していたはずの二つの感情を強引に結びつける働きをするのではないのか。この独立していたはずの世界を「一つの箱」の中に強引に入れてしまったら、青少年が自然に身につけてきた「処世術」のようなものが崩れ、その住み分けを困難にさせるのではないのか。その結果、青少年を新たな困惑の中に導きはしないだろうか。

 私はふと、このねじれ現象の中に、新たな危機感を抱くのだった。

 しかし、私のちっぽけな危機感をよそに、中国国産アニメ保護振興策は、政府のこうした対日政策を背負いながら遂行されていくことになる。

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「中国政府は日本動漫を、どう位置づけたか【後編】」の著者

遠藤 誉

遠藤 誉(えんどう・ほまれ)

筑波大学名誉教授

1941年、中国長春市生まれ、1953年帰国。理学博士。中国で国務院西部開発弁工室人材開発法規組人材開発顧問、日本では内閣府総合科学技術会議専門委員などを歴任。2児の母、孫2人。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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