「中国

日本動漫愛好が中国に「民の選択」を生んだ

日本アニメ放映禁止に抗議して、地下鉄爆破宣言をした大学生

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2008年1月16日(水)

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 前回で、日本アニメの放送禁止と国産アニメの振興、といった中国政府のやり方が、インターネット上の議論を介して、中国の一般大衆からの拒否反応を招いている経緯を取り上げた。

 ただし、政府に対するブーイングは、実はウェブ上の議論にとどまっていなかった。小さな規模であるが、リアルな「運動」が起きていたのである。

地下鉄爆破宣言をした大学生の言い分

 2007年7月4日、北京にいる友人からメールが入った。

 「すごいことが起きてしまいましたよ。禁播令に抗議した大学生が、地下鉄に爆弾を仕掛けたと宣言して捕まったというニュースを、北京の『京華時報』が報じています。学生は大の日本アニメファン。禁播令で日本アニメが放映禁止になると知って、それに抗議したようです」

 もう一度説明しておく。

 「禁播令」とは、中国の映画やテレビ等のメディア界を管轄する中国政府の最高機関である国家広播電影電視総局(国家広電総局)が、2006年9月1日の午後5時から8時までのゴールデンタイムに外国アニメの放映を全国一律に禁止するとした放映禁止令である。外国アニメの80%以上は日本アニメなので、これは事実上、日本アニメの放映禁止に等しい。

 地下鉄爆破宣言事件が起きたのは、実は1年前の2006年4月9日で、京華時報の記事は、すでに逮捕された犯人の裁判に関する報道だった。2007年7月になって初めて事件が公けになったというわけである。

 仮名、林華という、北京の民営大学に通う大学生(20歳)は、小さい頃から大の日本動漫好き。日本動漫を見て育ち、日本動漫が描く世界に自分の価値を見出していた。

 そんな林は、2006年春、国家広電総局が同年秋から外国アニメの放映に規制をかけ、特定の時間帯における放映を禁止するであろうというニュースが新聞に出ているのを発見した。

 この衝撃的なニュースを知った林は、新聞を地面に叩きつけて激怒した。

 中国の青少年にもたらされた、なにより自分にもたらされた、日本アニメのすばらしい世界が奪われてしまう!

「中国政府の文化的な差別に打撃を」

 林は法廷陳述でこう述べている。

 「中国(政府)が考える文化マーケットは、外国のアニメに対して文化的な差別を持っている。僕には、こういう(政府側の)行為に対し、打撃を与える責任がある、と考えた」

 2006年4月9日、林は自分で作った爆弾と脅迫文を北京の西単にある図書大厦(図書ビル)に置いた。この図書大厦は北京最大の書店で、天安門のある長安街をさらに西に行ったところにある。いつも大勢の子供や若者たちで賑わい、本が陳列してある戸棚と戸棚の間は座り込んで読書にふける若者たちで埋め尽くされ、まともに歩くことさえできない。

 脅迫文は新聞の文字を一文字一文字切り抜いて、それを糊で貼り付けて作成してあった。文面はこうだ。

 ──これは警告だ。お前の会社から(著者注:図書大厦のことか?)1カ月半以内に、すべての中国国産アニメを引き下ろせ。そして日本アニメを市場に出せ。もし拒絶すれば、すぐに地下鉄八号線を爆破する。

 図書大厦に仕掛けてあった爆弾は、まったくの偽物で、落花生油に2つの電池と豆電球が装置されているもの。爆破装置としては機能できず、もちろん爆発はしなかった。が、林は刑事責任能力があるとして逮捕された。

 どうして林が犯人だとわかったのかは、新聞は明らかにしてない。また事件が起きたのが2006年4月9日であるにもかかわらず、法廷が開かれるまで、この事件が極秘裏に扱われ、事件発生から1年3カ月も経った2007年7月4日になって初めて報道された、というのも異例である。中国政府側としてはよほど世間に知られたくなかった事件だったのか、と推測される。

 林は、法廷で次のように述べている。

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著者プロフィール

遠藤 誉(えんどう・ほまれ)

 1941年、中国長春市生まれ、1953年帰国。理学博士、筑波大学名誉教授、東京福祉大学・国際交流センター センター長。(中国)国務院西部開発弁工室人材開発法規組人材開発顧問、(日本国)内閣府総合科学技術会議専門委員、中国社会科学院社会学研究所客員教授などを歴任。

 著書に『ネット大国中国――言論をめぐる攻防』(岩波新書)、『チャーズ』(読売新聞社、文春文庫)、『中国大学全覧2007』(厚有出版)、『茉莉花』(読売新聞社)、『中国がシリコンバレーとつながるとき』『中国動漫新人類〜日本のアニメと漫画が中国を動かす』(日経BP社)『拝金社会主義 中国』(ちくま新書) ほか多数。2児の母、孫2人。

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