Brian Hindo (BusinessWeek誌、企業戦略担当エディター、香港)
協力:Joshua Schneyer (BusinessWeek特別特派員、リオデジャネイロ)
米国時間2007年12月6日更新 「Monsanto: Winning the Ground War」
除草剤・農業バイオ技術大手の米モンサント(MON)の会長兼CEO(最高経営責任者)にヒュー・グラント氏が就任した2003年5月頃、モンサントはその社名をもじって“ミュータント(突然変異体)”と呼ばれていた。
モンサント(本社:ミズーリ州セントルイス)が販売する遺伝子組み換え種子への批判は高まる一方だった。モナーク(大型のチョウ)を絶滅に追い込み、新たな悪性のアレルギーを発症させ、地球の農業の多様性を損なうというのが反対派の言い分だ。
米国の文明評論家ジェレミー・リフキン氏は著書の中で、遺伝子組み換え作物(GMO:genetically modified organism)は「資本主義史上、唯一最大の失敗」になるだろうと予言した。元ビートルズのポール・マッカートニーは、「遺伝子組み換え作物にノーを」と世界に呼びかけた。チャールズ英皇太子は新聞の論説で、遺伝子組み換え技術は「神の領域を侵すもの」であるとして、遺伝子組み換え作物への反対を唱えた。
グラント氏がCEOに就任する前、モンサントの株価は1年で50%近く下落し8ドルになっていた。就任前年度の2002年の損失は17億ドル。「当時は財政的に極めて脆弱だった」と、49歳のグラント氏はスコットランド出身らしい軽快な口調で言う。
遺伝子組み換え作物を巡る論争の流れが変わった
しかし、その後5年も経たないうちに、モンサントはすくすくと育った。昨年の売上高は85億ドルで、純利益は44%増の9億9300万ドル。株価は12月5日の終値が104.81ドルで、グラント氏の就任後1000%以上も上昇している。株価収益率は58.6と、米グーグル(GOOG)を約2ポイント上回る。
その背後では、モンサントが粛々と遺伝子組み換え食品の是非を巡る論争の流れを変えていたのである。
遺伝子組み換え作物への反対の声はいまだに根強いが、栽培農家の数は世界中で増えている。これは不思議でも何でもない。モンサントの種子には、害虫抵抗性と除草剤耐性の遺伝子が組み込まれている。そのため従来の種子よりはるかに育てやすく、費用も少なくて済むのだ。
米国産作物の半分以上は遺伝子組み換え作物だ。大豆はほぼ100%、トウモロコシは約70%である。中国、インド、ブラジルではほんの5年前まで遺伝子組み換え作物はほとんど栽培されていなかった。ところが、今、ブラジルでは内陸部の肥沃なマットグロッソ州から港へと遺伝子組み換え作物を運ぶための道路建設が間に合わないほどだ。中国とインドでは、遺伝子組み換え作物の作付け面積が昨年1700万エーカーを超えた。
この3つの国は現在、作付け面積で世界の上位6カ国に入っている。自然食品が空前のブームとなっている中、世界の農地面積の約7%では“究極の反自然食品”とも言うべき遺伝子組み換え作物が栽培されていることになる。「作付け面積が10億エーカーを超えた時、遺伝子組み換え作物は、仮説ではなく現実のものになる」とグラント氏は言う。
「農業の現場」で事実上の勝利を収める
つまり、遺伝子組み換え食品は、科学論文誌上ではともかくとして、農業の現場では確実に勝利を収めようとしているのだ。
食品と燃料に対する世界的な需要増加に伴い、農家は農地からの収穫量を高めようと躍起になっている。また遺伝子組み換え種子の栽培が始まって12年経った今も、反モンサント派の悲観的予測は現実になっていない。この動かし難い事実が、モンサント首脳陣をいささか強気にしている。
次ページ以降は「日経ビジネスオンライン会員」(無料)の方および「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみお読みいただけます。ご登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。









