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米国が12月に公開した国家文書に注目せよ

2008年米国の対外政策を読む

2008年1月21日(月)

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 2008年の世界情勢の行方を左右するもっとも大きなファクターの1つは、「アメリカという彷徨える巨人がいったいどのような一歩を踏み出すのか、イラクという泥沼に嵌り、体力も気力も限界に達したかに見えるこの超大国がどのような対外政策を打ち出し、そしてそれが世界の戦略バランスにどのような影響を与えるのか」であることに変わりはないであろう。4年に一度の大統領選挙というビッグイベントとも相俟って、このアメリカの動向からは今年も目が離せない。

 アメリカの対外政策の中心に位置づけられているのは、今年も「中東」であることに変わりはないだろう。アフガニスタンとイラクという二国で15万人規模の部隊を展開し軍事作戦を続けているアメリカにとって、この地域の動向が優先順位の最上位に来ることは当然と言えば当然であり、こうした理由から、この両国の安定に不可欠な「イラン」という国との戦略的なバランスの調整が今年もアメリカにとっての大きな課題である。

2007国家情報評価(NIE)のインパクト

 このアメリカの対イラン政策の行方を左右する重要な文書が昨年12月に公開されている。昨年12月3日、アメリカのインテリジェンス・コミュニティにおいて、安全保障問題に関する情勢判断を記した文書としてはもっとも権威のある「国家情報評価(NIE)」の一部が公表されたのである。「イラン:核開発の意図と能力」と題されたNIEの発表は、ワシントンだけでなく中東全体を大きく揺さぶる強烈なインパクトを放った。

NIEは、「米政府の文民および軍の指導者たちがアメリカの安全保障権益を守るための政策を練り上げるのを助ける」事を目的として作成されているものであり、この時期に同文書の一般公開に踏み切った理由について、ドナルド・カー国家情報副長官は、「我々のイランの能力に関する理解が変化したので、我々はこの情報を公表することで正確なプレゼンテーションを確実なものにすることが重要だと感じた」と述べている。なぜなら、「そうすることがわが国の安全保障の利益になると判断したからだ」という。

 米政府の指導者たちが対イラン政策を策定する上でベースとすべき情報評価は、イランの核開発の意図と能力についてどのように結論付けたのか。すでに広く報じられているが、以下、改めて詳しく見ていこう。

 「我々は相当の確信を持って(with high confidence)、2003年秋にテヘランが核兵器計画を停止したと判断している」「この停止の決断は、主に、同国のそれまで発表されていなかった核計画が暴露された後の増大する国際的な監視と圧力に対応したものである」。

 「テヘランは核兵器計画を2007年中盤時点では再開させていない」「イランは2015年までは、技術的に核兵器を製造する能力を持ちまた兵器製造に必要な十分の量のプルトニウムを精製することができるようにはならない」「イランが核兵器計画を2003年に主に国際的な圧力により停止したという我々の評価は、テヘランの決定が政治的、経済的そして軍事的コストにかかわりなく闇雲に兵器開発に突き進んでいるというよりはむしろ費用便益のアプローチによって導かれていることを指し示している」

 「これは言い換えると、国際的な監視や圧力を強めるという脅しと、安全や名声それに地域的な影響力を持ちたいという目標を他の面で達成させるという機会をイランに与えることを組み合わせることで、テヘランに対して現在の核兵器計画の停止を今後も延長させることを促す可能性があることを示唆するものである」。

 ネオコン派から巻き起こるNIEバッシング

 これまでブッシュ政権が、「イランは核兵器を製造する目的で核開発を進めており、秘密の兵器開発計画を持っている」という前提で対イラン政策を進めており、またイランを「悪の枢軸」の一国として、理性的な対応を期待できない「ならず者国家」扱いしてきたことと比較すると、今回のNIEの分析は隔世の感がある。実際に第1期ブッシュ政権の対中東政策をサポートしてきたネオコン系の言論界や旧ブッシュ政権のメンバーたちは、今回のNIEを声を荒げてこき下ろしている。

 ネオコン派の牙城とも言われるアメリカ・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)の研究員で対イラン強硬派の筆頭であるマイケル・レディーンは、「インテリジェンス・コミュニティはまたしても愉快な評価を出した・・・、(中略)サダム・フセインの大量破壊兵器に関する詳細な情報を持っていると主張し、2年前にはイランが核兵器開発を決意していると結論付けた同じコミュニティのメンバーたちが、今度はイランが核兵器計画を停止したと主張している。そしてこの連中は1970年代前半にイランの革命防衛隊(シーア派)がヤセル・アラファト率いるファタハ(スンニ派)の訓練を受けていた時に、スンニ派とシーア派が手を組むことはあり得ないといい続けていたのだ」と述べてNIEの信頼性に疑問符を付けた。

 また、最近までブッシュ政権で国連大使をつとめたジョン・ボルトンは、「インテリジェンス・コミュニティはインテリジェンス分析にではなくあまりに政策形成に関与し過ぎている」と現在のコミュニティの姿勢を痛烈に批判した。

 さらにネオコン寄りの『インサイト』誌(12月11-17日)は、「NIEの作成プロセス全体がわずか2、3人に乗っ取られ、こいつらが『見えないものは存在しない』という前提の下で分析作業をすることを決定してしまったのだ」という匿名のインテリジェンス・アナリストのコメントを紹介し、今回のNIEの完成が予定よりも一年近く遅れたのは、「その過程でコミュニティ内で情報源と分析手法をめぐって議論が二分してまとまりがつかなかったからだ」という事情を紹介している。同誌によれば、最終的にはコミュニティの指導的な立場にあるCIAが、イランの核兵器計画とテヘランの意図に関する新しい情報とその解釈に関して国務省情報分析局の意見を取り入れることを決定し、前回のNIEではほとんど周辺的な役割しか果たすことのできなかった国務省がメインの重要な役割を果たすことになったと伝えている。

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「米国が12月に公開した国家文書に注目せよ」の著者

菅原 出

菅原 出(すがわら・いずる)

ジャーナリスト/国際政治アナリスト

アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。在蘭日系企業勤務、ジャーナリスト、東京財団リサーチフェロー、英国危機管理会社役員などを経て、現在、国際政治アナリスト

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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