「世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」」

思わず笑ってしまった
「民間が選んだ2007年中国10大ニュース」

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2008年1月18日(金)

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 2008年の新年早々、中国のインターネットサイト上に「民間が選んだ2007年中国10大ニュース」という非常に批判精神に富んだ記事が掲載されて話題になった。作者は不詳であり、最初にどこのサイトで発表されたのかも分からないが、種々のサイトに転載されて、多くの人々の共感を呼んでいる。中国が直面する問題点にずばりと切り込んだ鋭い視点はさすがと言わざるを得ない。

 それでは、その「民間が選んだ2007年中国十大ニュース」を順番に見ていくこととしよう。ニュースだけ読んでも、中国事情に詳しい人でないと意味が分からないと思うので、筆者の解説を付記する。なお、順番は単なる並び順であり、順位を意味してはいない。

[1] 「科学に邁進」は遂に“神農架野人”の謎を解明した。・・・・・・なんと、これは住宅が買えない中国人の群れだった。

<解説>「神農架」は湖北省西部の四川省との省境にある自然保護地区。この地域では古くからヒマラヤの雪男と同じような直立で歩く“猿人”(=“野人”)が目撃されており、これを中国では“神農架野人”と呼んでいる。目撃談が報じられる度に大きな話題となるし、多数の物的証拠も見つかっているが、その存在は依然として謎に包まれたまま。中国政府が唱道する「走進科学」(=科学に邁進)の成果で、遂に“神農架野人”の正体が判明したが、何とそれは家が買えない貧乏人たちが隠れ住んでいたのだったというジョーク。それほどに、不動産価格の高騰によりマイホームが買えない庶民は増大している。

[2] 国家統計局の統計によれば、2007年に中国が前年同期比で増大しなかったのは、1に“賃金”、2に“空気”。

<解説> IMF(国際通貨基金)統計で2003年以来2007年まで5年連続で10%以上の経済成長率を維持している中国の統計で「増大」しないものは無さそうに思えるが、ところがどっこい、 「増大」していないものがあった。その第1は、最低賃金は上昇しているが、豚肉の急激な価格上昇を代表とする諸物価の値上がりや住宅価格の高騰などで実感として増えない“賃金”。第2は急速な経済成長の代償でますます悪化する大気汚染で減少する清浄な空気。これも笑えない冗談である。

[3] 政治の北朝鮮化、経済のラテンアメリカ化、物価の欧米化、賃金のアフリカ化

<解説>1975年に開催された第4期全国人民代表大会で、時の総理・周恩来は「四つの現代化」を提起した。これは、農業、工業、国防、科学技術の4分野を現代化することにより経済を先進国水準まで引上げることを目的としていた。「四つの現代化」は、その後のトウ小平による「改革開放」政策の礎とも言える重要な政策であった。

 しかし、残念ながら、「4つの現代化」は初期の目的とは裏腹に変質してしまっている。1つ目の“政治”は、共産党の独裁強化で北朝鮮に近づいている。

 2つ目の“経済”は、ラテンアメリカ諸国のようになりつつある。すなわち、ラテンアメリカ諸国は、1980年代、90年代に低廉な労働力を武器として積極的に外資導入を行って経済発展を遂げたが、その後の賃金上昇により多くの多国籍企業が低廉な労働力を求めて国外へ移転したことで、金融危機や経済の衰退を招来した。今の中国はこうした状況に近づきつつある。

 3つ目の“物価”は上昇傾向が著しく徐々に欧米に近づいている。4つ目の“賃金”は、アフリカ並の低賃金水準で暮らしは良くならない。だから、困ったもんだということだろう。

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著者プロフィール

北村 豊(きたむら ゆたか)

北村 豊

住友商事総合研究所 中国専任シニアアナリスト
1949年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。住友商事入社後、アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、2004年より現職。中央大学政策文化総合研究所客員研究員。中国環境保護産業協会員、中国消防協会員



このコラムについて

世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」

日中両国が本当の意味で交流するには、両国民が相互理解を深めることが先決である。ところが、日本のメディアの中国に関する報道は、「陰陽」の「陽」ばかりが強調され、「陰」がほとんど報道されない。真の中国を理解するために、「褒めるべきは褒め、批判すべきは批判す」という視点に立って、中国国内の実態をリポートする。

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