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レジャー超大国、中国(8)
~中国人観光客が占拠するヨーロッパ

総取引金額45兆円の「銀聯カード」をひっさげて

  • 中村 正人

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2008年1月22日(火)

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 北京オリンピックの年になった。急成長する社会の矛盾やひずみをめぐる論争、環境、鳥インフルエンザ、台湾問題など、スポーツ以外の話題でこれほど盛り上がる五輪は近年まれではないか……。そんな気配が年始から濃厚である。

 中国の人々は五輪開幕に向けてどこまで高揚し、どうふるまうのだろう。その“歴史的”光景を見つめながら、やっぱりぼくらと彼らでは生きている時代が違うなあ。社会の目指している方向も違うようだ……。そうしたことを強く実感する1年になる気がしている。

 “違い”を認識することは、彼らにどう向き合うかを考えるうえで不可欠な思考過程だと思う。知れば知るほどそうやすやすとは拭えそうもない、彼らへの違和感。その所在と背景の大枠くらいはつかんでおきたい。たたでさえ、ぼくらは“空気”に流されやすいのだから。

上海で毎年開催される「上海世界旅遊資源博覧会(World Travel Fair)」

上海で毎年開催される「上海世界旅遊資源博覧会(World Travel Fair)」

 さて、これから数回にわたって中国人の海外旅行をテーマにする。所得水準の向上で非製造業分野の流通、サービスといった内需型ビジネスの成長が著しいといわれて久しいこの国では、レジャーの王様である海外旅行に彼らの欲望が素直に反映されると考えるからだ。彼らの生きる時代とぼくらとの“違い”がわかりやすく見てとれる格好の題材といえる。1億人ともいわれる、富裕層に次いで高い購買力を持ち始めた都市中間層の消費シーンという観点からも、興味深い事例やデータが出揃い始めている。

 知り合いの中国人留学生が海外旅行に行ってきた話から始めよう。

 都内某私立大の大学院生であるOさん(24・女性)は、昨年夏、10日間のヨーロッパツアーに参加した。旅行パンフレットによくあるフランスとイタリアを周遊するパッケージツアーである。

 いま日本の大学キャンパスには中国人留学生があふれている。一般に彼らはコンビニや居酒屋でアルバイトに明け暮れる姿を連想されるかもしれないが、日本の学生と同じように夏休みは海外旅行を楽しむ時代になった。ひとりっ子世代の彼らには、親からの仕送りも多く、地方出身の日本人学生より経済的に恵まれている層もいる。

上海市内の書店に並ぶ中国語版『地球の歩き方』

上海市内の書店に並ぶ中国語版『地球の歩き方』

 彼女の旅程はこうだ。1日目にパリに入り、2・3日目でパリの市内観光と免税店めぐり、その日のうちに飛行機で南仏ニースへ。4日目はニース、カンヌ、モナコを観光し、ミラノへ。5日目はミラノ観光をし、ヴェネチアへ。6日目はヴェネチア観光をし、フィレンチェへ。7日目はフィレンチェ観光をし、ローマへ。8日目はローマ観光で、9日目の午後には帰国便に乗る。この手の周遊型パッケージツアーは日本人もさんざん利用してきたはずだが、あらためて書き出してみると、実に慌しいものだ。

 帰国後、「どうたった?」と尋ねたら、「ユーロが高くてもう大変」と彼女はぼやいていた。円安とユーロ高が急激に進行していた頃であり、食事も買い物もすべてが日本に比べて激高だったとか。「どこが面白かった?」と聞くと、少々うんざり顔で「パリでもヴェネチアでも、中国人ばかり」。そうため息をつく。ここ数年、ヨーロッパの主要観光地は中国人旅行客が大挙して押し寄せ、半ば占拠されているという噂を耳にしていた。それはどうやらは本当のようだった。

 1970年代、日本の農協観光団が海外をバスで駆けめぐった時代を思い起こさせる話だ。しかし、いまの中国人が好き好んで日本人の後追いをしているわけではない。彼らがパッケージツアーを利用するのは、現在、ヨーロッパに限らずほとんどの国で中国人の海外旅行には団体ビザしか許可されないためだ。しかも、ヨーロッパ各国の在中国領事館は中国人の観光ビザの発給を積極的に拡大する気はないから、それすら狭き門となっている。

評判はさんざん、中国人の団体旅行客

 「中国人が海外旅行でいちばん行きたいのはヨーロッパ。行きたい人はたくさんいるのに、ビザを取るのが難しい」とOさんはいう。その点、ヨーロッパの在日本領事館は、日本人のビザを発給する必要がないぶんゆとりがあるから、本国に比べれば中国人にもビザが取りやすいらしい。

 そんな話を彼女としながら、ぼくが大学生の頃、初めてヨーロッパ旅行に出かけたことを思い出した。もう20年以上も前の話だが、日本人の場合、ヨーロッパは当時もノービザだったし、若いうちから団体旅行だなんてつまらないと思っていたから、当然のように個人旅行だった。Oさんはぼくの経験を「うらやましい」という。「80後」世代(1980年代生まれの中国版新人類。わかるかも中国人第14回参照)の彼女には、観光地をバスで駆けめぐる「弾丸ツアー」なんて物足りないのである。気持ちはわかる。

かつての日本人観光客の風刺画をパロディにしたような「Newsweek」表紙絵(2007年8月29日号)

かつての日本人観光客の風刺画をパロディにしたような「Newsweek」表紙絵(2007年8月29日号)

 ちょうどその頃、「Newsweek」が「世界を騒がす中国人観光客」なる特集記事を組んでいた。

 「羽振りのよさとマナーの悪さを振りまく中国人ツーリストは2020年に1億人にふくらむ巨大市場。(略)世界の観光地はあの手この手で熱烈歓迎に必死だ。果たして中国人客は観光産業の救世主となるのか」(「Newsweek」日本版 2007年8月29日号)

 そこにはヨーロッパのホテル経営者1万5000人による「観光客ランキング」なる集計結果が掲載されており、中国人の評判は散々だった。

 「最も品行方正でない」「最もおしゃれでない」「最も地元の料理を試さない」「最も部屋をちらかす」など、不名誉な項目はすべて中国人がランク入り。「(成金趣味で素行の悪い)中国人は21世紀の日本人観光客だ」と話をこちらにまで飛び火させるのは勘弁してもらいたいところだが、いかにも「Newsweek」らしい底意地の悪さが笑えた。彼女も電車の中吊り広告で見かけ、立ち読みしていたらしい。その話をすると、苦笑を通り越して憮然とするのだった。

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