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コレステロール低下薬で大論争

「効果は薄い」と製薬会社を非難する声上がる

2008年1月28日(月)

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John Carey

米国時間2008年1月17日更新 「Do Cholesterol Drugs Do Any Good?

 カナダのブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーに住む元機械工のマーティン・ウィンさん(71歳)のコレステロール値は、じわじわと上昇していた。自転車で坂を登ると胸に痛みがあり、狭心症が疑われた。そこでかかりつけ医と相談して、コレステロール低下薬、スタチンを使った治療を受けることにした。

 ウィンさんのような人は多い。スタチンは歴代1位の売り上げを誇り、米国で1300万人以上、そのほかの国で1200万人の患者が服用している。2006年の売り上げは278億ドル。その半分が、代表的なスタチン系薬剤「リピトール」を販売する米製薬大手ファイザー(PFE)の懐に入る。

 スタチンは期待通りの効果を発揮した。コレステロール値は20%下がり、「おかげで長生きできそうだ」とウィンさんは喜んだ。しかし話はここで終わらない。

 ウィンさんのかかりつけ医であるジェームズ・M・ライト氏は、どこにでもいるような家庭医ではなかった。カナダのブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)の教授で、政府が資金援助する治療薬研究を指揮している。目的は、特定の薬品に関するデータを分析してその作用を解明することだ。ウィンさんの治療開始と同時に、ライト教授の研究チームは長年にわたるスタチンの試験で得た証拠の分析に入った。

 確かにスタチンは、心臓発作を起こしたことがある患者の救命には役立つ。再発の確率を少し減らすことで早死にを防げるからだ。ところがウィンさんのように心臓疾患のない大半の患者については、データは予想外の事実を示していた。

ほとんどの人に効果がない“特効薬”

 65歳以上では効果を確認できなかったのである。コレステロール値がどんなに下がったとしてもである。また年齢にかかわらず、女性には効果がなかった。臨床試験でスタチンを投与した中年男性では、心臓発作が若干減少した。しかし“悪玉コレステロール”の値が大幅に下がったにもかかわらず、死亡したり入院が必要になったりする疾患の総数は減らなかった。

 「ほとんどの人が、効果がないどころか健康を害する危険すらある薬を服用している」とライト教授は指摘する。こうした証拠を踏まえ、ウィンさんが狭心症でないと判明したことから、ライト教授はスタチン治療の中止を決めた。「明らかな効果がないのでやめることにした」と、ウィンさんも納得している。

 しかし米国の医師、企業、マスメディアは、「悪玉コレステロール値が高いと早死にするから、数値を下げなくてはいけない。スタチンはそのための最良の薬だ」と繰り返している。全米コレステロール教育プログラム(NCEP)が発行している政府公式ガイドラインによると、スタチンは不可欠な薬であり、米国での服用者はいずれ4000万人に上ると見られる。「歯の健康のためのフッ素のように、スタチンを水道水に添加すべきだ」と、冗談交じりで提案する研究者もいるほどだ。

 ファイザー以外でスタチンを販売しているのは、米製薬大手メルク(MRK、商標は「メバコール」と「ズコール」)、英アストラゼネカ(AZN、同「クレストール」)、米ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMY、同「プラバコール」)だ。スタチンは不可欠だという業界の宣伝文句を見聞きしない日はほとんどない。例えばファイザーはテレビや新聞の広告で、人工心臓の開発者でリピトール服用者のロバート・ジャービック博士を起用している。新聞広告では、「心臓疾患の危険因子が複数ある方の場合……リピトールによって心臓発作のリスクが36%下がります」と謳っている。スタチンの効果を疑う者などいなかったのである。

 ところが、そもそもコレステロール値を下げる必要があるのかどうか、疑問を呈する研究者は多い。1月14日にメルクと米シェリング・プラウ(SGP)が明らかにした試験結果によって、この疑問はさらに強まった。広く使われているスタチン系コレステロール低下薬を、作用メカニズムが異なる「ゼチア」と併用したところ、効果が高まったのだ。2つの薬を組み合わせることで、患者のコレステロール値はスタチン単独よりも大幅に低減した。ところが、2年間の治療でさらに数値は下がったものの、治療効果は全く表れなかったのである。

宝くじに当たる確率より低い?

 第2の重要な点は、ファイザーのリピトールの新聞広告の中のなにげない部分に隠れている。劇的とも言える“心臓発作のリスクが36%下がります”の数字のところに星印が付いており、小さい文字でただし書きがある。

 「大規模な臨床試験で、偽薬(砂糖の錠剤)を投与した患者の3%が心臓発作を起こしたのに対し、リピトール投与患者では2%でした」

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