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レジャー超大国、中国(9)
~実況!中国人観光客と「はとバス」ツアー

日本社会に興味津々、「なぜ女子高生はミニスカートなのだ?」

  • 中村 正人

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2008年1月29日(火)

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 2006年の中国人海外旅行者数、3450万人。前回触れたように、中国の観光目的の海外団体旅行解禁は1997年だ。戦後日本の海外渡航自由化が1964年だから、日本に遅れること33年後である。ところが、彼らの海外旅行熱は猛烈な勢いで、わずか5年で日本と肩を並べ、いまや2倍の規模となった。しかも海外旅行者の一人あたりの平均消費額は世界一というのである。

 そのスピードには呆れるばかりで、制度上も、経済的にも海外旅行なんて夢のまた夢だった10数年前の中国を知る自分は、いまだにマジックを見せられているような気さえする。内実はともあれ、規模を見る限り、この国は“レジャー超大国”への道を突き進みつつある。少なくとも海外旅行にいそしむ当の本人たちは、それを疑うことはないだろう。

 海外に出かける中国人のうち来日者数は81万人(全体の2.3%)。この中にはビジネス出張や親族訪問も含まれており、ふつうの意味での観光客は3割ほどだといわれる(その割合は年々上昇傾向にある)。では、彼らは日本のどこにいてどのように観光しているのか。

 ひとまずその一例として、「はとバス」の場合を紹介しよう。中国人専用の日帰り富士山ツアーがあると聞き、昨夏、ぼくも参加してみたのだ。東京観光でおなじみの「はとバス」は国内唯一の中国語ガイド付き定期観光バスを出している。

中国人観光客の「はとバス」ツアーに同乗!

 たまたま大連の日系企業で働く知り合いの中国人が研修で東京に来ていたから、一緒に行くことにした。中国の大学院を卒業したばかりの彼女は初めての来日。富士山に行こうと誘うと、とても喜んだ。他の中国人旅行者と同じ目線でバスツアーを楽しんでくれたので、ぼくにとっては格好の同行者だった。

 コースの概要は、午前9時に浜松町のバスターミナルを出発。中央高速を抜け、富士山五合目で自由観光。昼食を取り、名水で知られる忍野八海に立ち寄り、山中湖畔の温泉施設で富士山を見ながら露天風呂に浸かる。夕方東京に戻って解散というものだ。

 その日のツアーガイドは駒走久子さん。中国語通訳案内士の国家資格を持つ彼女は、中国・天津の留学経験があり、小柄だがバイタリティあふれる女性である。バスが走り出すと、彼女は中国語で自己紹介をし、ツアーコースの概要や注意事項などを手際よく説明。そして、1枚の写真を乗客に掲げて見せた。「この家族、誰かわかりますか?」。

ロイヤルファミリーの写真を手に、皇室について説明するツアーガイドの駒走久子さん

ロイヤルファミリーの写真を手に、皇室について説明するツアーガイドの駒走久子さん

 皇室一家の写真だった。ちょうどバスが霞ヶ関のインターから首都高速に入り、皇居の脇を抜ける頃。乗客たちの多くが声をあげた。「天皇の家族です」。ほとんどの人が知っているようだった。それを受け、彼女は皇居と日本の皇室についての説明を始めた。富士山ツアーにロイヤルファミリーの解説も付くとはちょっと意外だった。

 あとで彼女に聞いた話では、中国人の多くは日本の皇室に純粋に関心があるそうで、都内観光でも皇居は人気スポットのひとつだという。写真を見せると手にとって「これは誰でこれは誰で……」と家族構成まで詳しく語り始める人もいるそうだ。外国人観光客を相手にしたツアーガイドは単に通訳だけではなく、日本文化の紹介者にならなければならない。なかなか大変な仕事である。

 中央高速は夏休み最後の週末ということで、渋滞していた。予定時刻になっても富士山にはたどり着けなかったのだが、乗客たちは文句を言うでもなく、おとなしく車窓の風景を眺めていた。あいにく曇り空で富士山の姿は見えなかった。それでも彼らは時おり思いついたように、何の変哲もない(としかぼくには見えない)高速沿いの山々や農家の家並みをカメラに撮ったりするのだった。彼らが「Newsweek」の特集「世界を騒がす中国人観光客」で散々マナーが悪いとなじられた同じ中国人旅行者には思えなかった。

長時間のバス旅を終え、五合目に到着。みんないっせいにバックからカメラを取り出す

長時間のバス旅を終え、五合目に到着。みんないっせいにバックからカメラを取り出す

 「みんな静かだね。もっと騒がしいのかと思ってた」。同行した馬健さんにそう言うと、「だってみんな知らない人同士ですから」。なるほど、そりゃそうだ。このツアーの参加者は40名。彼らは今日1日限りのオプショナルツアーの同行者にすぎないのである。何気なく聞いて回ってみたところでも、北京から来た家族連れ、上海から来た出張族のグループ、台湾人カップルなど、地域も世代もさまざまな人たちだった。

富士山五合目には「中国人歓迎」を伝えるプレートが至るところに

富士山五合目には「中国人歓迎」を伝えるプレートが至るところに

北京から来た家族連れ。富士山をバックに記念撮影中

北京から来た家族連れ。富士山をバックに記念撮影中

 予定より2時間遅れてようやく五合目に着いた。ついに富士山が姿を現した。バスを降りると、乗客たちはいっせいにビデオを回し始めた。みんな日本のメーカーの最新型モデルを手にしている。昔、海外で「カメラを持っていれば日本人だとわかる」とよくいわれたものだが、そんなのもすっかり過去の話である。

 とはいえ、彼らのいでたちや服装は、はっきり言ってサエなかった。あんまりお金持ちに見えないのである。中高年の人が多かったせいもあるのだろうが、北京や上海といった大都市からの旅行者も、申し訳ないけどぼくの目には田舎の人に見えてしまう。

 五合目には日本人の登山客が列をなしていたが、中国語の会話もあちらこちらで耳にした。ぼくら以外にも中国人ツアー客が来ていたのである。ヨーロッパの主要観光地に中国人が集結しているように、日本を代表する富士山に彼らがいないわけがない。

 富士山をバックに馬健さんの記念写真を撮ってあげたりしながら、ぼくも中国人ツアー客になりすましていたのだが、とうてい彼らの真似はできないことがあった。ハンパじゃない量のお土産である。立ち寄る先々で、彼らは饅頭やら果物やら、口に入るモノを中心に次々と購入、ビニール袋を手にしてバスに乗り込んでくるのである。

 「どうしてあんなにいっぱい買うの?」。馬健さんに聞くと、「私も研修期間中でなくて、あと3日で中国に帰らなければならないとしたら、いっぱい買っちゃうかも」。そう言って笑っている。昔の日本人みたいに、帰国後、配らないといけない先がいっぱいあるのだろうか。なんにせよ、土産物屋にとってはこのうえない上客である。

「イチゴ味のチョコ、おいしいよ」。忍野八海では中国語が目につく

「イチゴ味のチョコ、おいしいよ」。忍野八海では中国語が目につく

 それを実感したのは、忍野八海に行ったときだ。富士山の伏流水の湧出口として知られる透明な池の周辺に並ぶ土産物屋。それらの至るところに中国語の貼り紙や札が置かれていた。「触るな」とか「甘くておいしい」だとか、いろいろ書いてある。

 だが、いちばん驚いたのは、ひとりの草餅売りのおばさんが中国語で客引きしていたことだ。海外で露天商が片言の日本語で客引きする姿は日常だが、日本の観光地で日本人が中国語で客引きする光景をぼくは初めて見た気がする。思わずその草餅売りのおばさんに話しかけていた。近所の農家の人だった。

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