「山崎養世の「東奔西走」」

バーナンキ暴落は終わりに向かう

高成長を続ける21世紀型の経済構造は不変

バックナンバー

2008年1月30日(水)

1/3ページ

印刷ページ

 昨年の8月から、米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題の深刻さが明らかになるにつれて、世界の株式市場は大きく下がりました。下落の割合として見ると、ここまでの暴落は、1987年のブラックマンデー、90年の世界の不動産バブルの崩壊、そして、2001年のIT(情報技術)バブルの崩壊に並ぶものです。

 97年のアジア危機や翌年のロシア・LTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)危機よりも大きいのですから、ショックの大きさが分かります。

 ただ、暴落はこれから収束に向かい、世界の株式市場は上昇に向かうでしょう。

実体経済も株式市場も暴落する状態ではない

 なぜなら、今回の暴落は、バーナンキ暴落だからです。米国の短期金利をつかさどり、世界の資産市場と実体経済に様々な経路を経て影響力を持つFRB(米連邦準備理事会)が、株式市場の下げを過小評価し、最大の政策手段である短期金利を状況に応じて下げなかったから暴落が起きたのでした。バーナンキ議長のFRBのtoo little, too late が事態をここまで大きくしたのです。

 逆に言えば、実体経済も株式市場も、ここまで暴落するような状態ではないのです。

 90年代の世界の不動産バブルの崩壊は、今回のサブプライムローン問題とは比較にならない深刻な事態でした。日本ではほとんどの銀行がマヒ状態に陥りました。米国でも、シティバンクなどの大手銀行が倒産の危機に瀕し、地域のS&L(貯蓄貸付組合)の実に4分の3が倒産しました。欧州諸国の傷も深く、北欧では多くの大手銀行が破綻し国有化されました。

 それに比べれば、今は、世界の不動産への暴落の連鎖も、主要な世界の金融機関の連鎖倒産も起きていません。それどころか、損を出した米国の金融機関に有利な条件で出資しようとする外国の資金があふれています。

不動産バブル、ITバブルそしてインフレもない

 2001年のITバブルの崩壊も深刻でした。世界の株式市場が、企業の収益を過大評価していたからでした。新興企業が多いNASDAQでのPER(株価収益率:株価が利益の何倍かという倍数)は、2000年のピークには200倍を超えていました。日本でも似たような事態でした。

 IT企業といっても、収益がなくては株として買えない。この当たり前のことに市場が目覚めて、株価水準の調整が完了するには3年もかかりました。

 その時に比べれば、今の株価水準は、利益に対して見ると2000年以降最も割安です。NASDAQのPERは32倍です。予想利益に対しては23倍に過ぎません。株式市場はバブルではないのです。

 そして、今の米国のインフレ率は、4%程度です。10%を超えていた80年代初めと比べれば、格段に低いレベルです。

 つまり、不動産バブルの崩壊も、株式バブルも、インフレもなかったのに、昨年から米国株が暴落して世界の市場に伝播したのです。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

著者プロフィール

山崎養世(やまざき・やすよ)

山崎 養世

1958年生まれ、東京大学経済学部卒。カリフォルニア大学ロサンゼルス校でMBA(経営学修士)取得。大和証券勤務を経て米ゴールドマン・サックス本社パートナー、ゴールドマン・サックス投信社長などを歴任。2002年に退社後、「高速道路無料化」をマニフェストに掲げて、徳島県知事選挙に挑戦。現在はシンクタンク山崎養世事務所で金融、財政、国際経済問題などの調査研究を行っている。著書に『日本列島快走論』(NHK出版)、『大逆転の時代』(祥伝社)、『チャイナ・クラッシュ』(ビジネス社)、『投資信託革命』(共著、日本経済新聞社)、『米中経済同盟を知らない日本人』(徳間書店)、『道路問題を解く』(ダイヤモンド社)などがある。



このコラムについて

山崎養世の「東奔西走」

イラク戦争を機に世界の枠組みは大きく変わった。東西冷戦が終わり米国による世界覇権の時代が訪れたものの、わずか10年で終わりを告げた。戦争はできても世界に覇を唱える力がないことをさらけ出してしまったからだ。その間、ユーラシア大陸の西ではEU(欧州共同体)が世界における政治・経済の新しい軸として存在感を増し、一方、大陸の東では中国が急成長、アジアはもとよりラテンアメリカ、アフリカとも強い絆を築きつつある。その変化の意味を意外に分かっていないのが日本である。国際的に日本はどのようなスタンスを持つべきなのか、また地方を活性化するにはどうすべきかなどについて、歴史的視点から日本の政治・経済のあり方を厳しく問う。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン

日経ビジネスからのご案内