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レジャー超大国、中国(10)
~日本への旅行は「クレーム、ほぼゼロ」

日本観光で「対日観がガラッと変わった」人も急増!

  • 中村 正人

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2008年2月5日(火)

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 中国から来日するツアー旅行客が増えている。とりわけ上海からの旅行者数は2007年、前年に比べて激増といえる伸び方だった(2007年1月~8月の上海地区訪日ビザの発給数は前年度比80%増、9月~12月で60%増)。

上海錦江旅游有限公司アウトバウンド部門副部長の楊東さんは、1977年上海生まれ

上海錦江旅游有限公司アウトバウンド部門副部長の楊東さんは、1977年上海生まれ

 上海の大手旅行会社・上海錦江旅游有限公司(中国旅行業界で2005年度4位)の楊東さんも、「2007年の弊社旅行取扱数の伸び率トップは日本」と胸を張る。「私は韓国や東南アジア、オーストラリア地区のアウトバウンド(海外旅行)の担当を兼ねていますが、今後いちばん将来性がある旅行先は日本だと思っています」。そう断言する。

 上海が反日デモの舞台となったのは2005年だ。ついこの間のことなのに、それが行きたい国の最有力候補とは……。彼らは急に心変わりでもしたのか。正直、首を傾げざるをえないものがある。10数年前のように、金を稼ぐのが目的で来日したがっているのではない。日本の旅行を楽しみたいといっているのだ。これはどういうこと?

 今回はそんな疑問を現地の旅行業関係者にぶつけながら、上海のレジャーシーンの主役たる海外旅行者の実像について迫ってみる。

 まず、楊東さんの話の続きを聞こう。彼のオフィスは上海市中心部、ホテルオークラが運営する上海花園賓館の裏手にある。オフィスは活気にあふれていた。国・地域別に分かれたいくつもの部屋からスタッフの話す多言語が飛び交い、電話のベルが途切れることなく鳴り響いている。

日本旅行人気の背景に「クレームゼロ」がある

―― 上海で訪日旅行が大人気。日本から来たぼくにはどうして急にそんなことになったのか、わからないのですが……。

 「増えているのは事実です。その理由をお話する前に、上海の海外旅行市場を取り巻く背景について説明したいと思います。大きく3つの影響が考えられます。まず2007年はご存知のように、中国の株式市場が好調でした。要は、株で儲けた人が増えた。上海人の手元に自由に使えるお金が増えたのです。

 それにともない、上海人のレジャースタイルが多様化しています。自家用車族が増えてきたのです。彼らは週末を使って上海近郊のドライブを楽しみます。そして、夏休みや3大連休などの長い休みには海外旅行へ、というのがトレンドになってきました。

 もうひとつの影響として考えられるのが、2005年頃から海外の観光局が旅客誘致のためのイベントを上海で活発に行い始めたことです。こうしたイベントが頻繁に開かれることから、上海人も海外への夢や憧れをかきたてられるようになりました。いまインターネットや雑誌の特集では“旅行”が最大のテーマ。海外旅行はブームなんです」

 では、なぜ数ある国のなかで日本が支持されたのか。日本のツアーに人気が集まったのはどうしてだろう。ヒット商品には必ず売れた理由があるはずだ。

―― 売れた理由はズバリ、何でしょうか?

 「訪日ツアーには優れた特性として8つのポイントがあります。まず、商品価格が安定していること。他の地域・国のようにシーズンによって料金が大幅に変化しない。日本行きの航空料金は1年間通じてほぼ変わらないからです。お客さんにとっては、シーズンによって価格に変動がなく、いつでも行けるというポイントは心理的に大きいのです。

 2つ目として、訪日ツアーの品質がいいこと。具体的には、ツアー中にお土産屋を連れまわすようなスケジュールが中国国内、ヨーロッパ、東南アジア、香港では当たり前に組まれているのに対し、日本ではないことです。上海の消費者の間に、日本に行くツアーは安心できるという定評が生まれつつあります。日本では騙されるようなことはない、と。

 3つ目は、観光地としての魅力があること。日本は季節や訪ねる地方によって景色が変わるし、すばらしい自然の風景に出会えます。これは都会暮らしの上海人にとって得難い体験です(前回の富士山ツアーなど)。

 4つ目は、日本の食事が口に合うこと。上海人は刺身でもなんでも日本食をおいしいと思います。納豆には納得できない人もいますが……。それに比べなぜか韓国の食事は好まれないようですね。上海には日本料理店がたくさんありますから、本場を味わってみたいと思うものです。 

 5つ目として、結果的に顧客満足率が高いこと。弊社が行う各国ツアー客へのアンケート調査では、日本の満足率が最も高くなっています。クレームがほぼゼロに近い。ホテルの部屋が狭いなど改善すべき点もありますが、サービスや清潔さの観点では問題なし。うちの営業担当も何の心配なくお客さんに日本をセールスできる」

※楊東さんに見せてもらった同社の日本ツアー客のアンケート調査集計によると、2007年5月分の満足率が94.5%。以前より上昇傾向にあるという。アンケート項目は、食事や観光地、ホテル、移動交通機関、娯楽、ガイド、安全性など13項目に及ぶ。

―― そんなに日本が高く評価されていたとは知りませんでした。むしろ意外な感じすらします。以前は、中国人にとっての日本ツアーにはビザの取りにくさや多額の保証金などのハードルがあり、旅行意欲も低かったと聞いていたのですが。

 「3年前はそういわれていましたが、明らかに状況が変わっています。いまの上海では、一般市民のほとんどが旅行会社を通せば普通に観光ビザを取れるようになりました。それに対し、ヨーロッパのビザは取りにくい。EUでは一カ国のビザが取れるとどこでも行けるせいか、審査が厳しい。国ごとに様々な制限があり、旅行会社が代行するビザ申請の手間が半端じゃなく大変なんです」

※たとえば、フランスとイタリアでは18歳以下の中国人には観光ビザが下りない。この段階で家族旅行はあきらめなければならない。保証金のかわりに、本人名義のクレジットカードを領事館に預けさせる国もあるという。今年1月中旬、遼寧省瀋陽の韓国総領事館に勤める中国人職員が、中国人の韓国へのビザ発給に不正関与、収賄容疑で逮捕された。こうしたことが起きるため、ビザの発給に各国が慎重になるのもわからないではない。

―― なるほど、そういう状況では……。

 「ヨーロッパの領事館では、申請条件が急に変更となることもよくあるんです。これではお客さんに出発日を保障できない。その点、日本領事館は普通に申請して問題がなければ期限を守ってくれる。旅行会社としては、きちんと対応してくれる国にお客さんを誘導するのは当然です。クレームや賠償で困るのは旅行会社だからです。

 また、お客さんの立場でいえば、ビザを申請してつき返されたりすれば、ご本人の面子にかかわります。中国人はパスポートにビザを拒否された記録が残ることをいやがります。そうした観点からも、訪日ツアーは上海人にとって参加しやすいといえる。これが6つ目のポイントです。 

 7つ目は、ビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)以降、日本観光のためのプロモーションが活発になったこと。マスメディアにも日本の魅力が発信され、観光地としての知名度が上昇したのです」

※ビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)は、2010年の訪日外国人旅行者1000万人を目標に、03年より始められた国土交通省による観光戦略活動のひとつ。日本人の海外旅行者約1600万人に対して、訪日外国人は3分の1の約500万人(02年)に過ぎなかったことから、その格差を是正し、経済波及効果を高めようと進められている。

 楊東さんが挙げた7つ目の点については、日本国際観光振興機構(JNTO)にも訊ねてみた。JNTO上海観光宣伝事務所の平田真幸さんの評価は、「2007年に入り、明らかに訪日旅行をめぐる状況が飛躍的に好転した」「日本に対する親近感を視聴者に覚えさせるような報道や番組が増えた」というものだった。

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 そうした情報環境の変化の背景には、2007年4月の温家宝首相の訪日がある。中央政府の意向にいつも敏感な反応をみせる中国のマスコミは、日本のイメージを一気に好転させようとしたわけだ。

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