Nandini Lakshman (BusinessWeek誌、インドビジネス担当記者)
米国時間2008年1月23日更新 「Toyota Trains India Teens」
数カ月前に生まれ故郷のブラガナハリ村に帰省したハリシュ・ハヌマンタラヤッパ君(17歳)を見て、かつての同級生は「おかしな奴だ」と思った。
トヨタ自動車(TM)のユニホーム姿で現れたハリシュ君は、ベージュのTシャツの裾をきちんとグレーのズボンに入れ、よく磨いた黒い靴に赤い帽子といういでたちだったのだ。バンガロールから65マイル離れたその村に住む友人たちは、ほかにも奇妙なことに気づいた。例えばぬかるんだ村道を渡る時、ハリシュ君はいったん立ち止まって人差し指と中指を立てて左右を確認する。
その姿を面白がる友人たちに、「学校で教わったことを習慣的にやっているのだ」と話した。彼が学んでいるのは、バンガロール郊外のビダディにあるトヨタ工業技術学校(TTTI)だ。
ハリシュ君は年収177ドルに満たない極貧層の家庭で育った。勉強はできたが、これといった夢はなかった。
昨年4月、学校の先生から地元紙に載ったトヨタの広告の話を聞いた。工場の専門技術者を養成するため、主にインド南部カルナタカ州在住の経済的に恵まれない高校卒業者を募集しているという。食費、寮費、学費はすべて無料で、月38ドルの給付金までもらえる。ハリシュ君は5000人の応募者の中から選ばれた最後の64人に入り、晴れてトヨタ工業技術学校に入学した。トヨタが昨年8月に初めて海外に開校した職業訓練校である。
今は自動車技師を目指している。「本当にうれしいです。信じられない」と、ハリシュ君は片言の英語で、人生が一変して夢が持てるようになったと話す。それも当然だ。母親と祖母は農場労働者で収入は1日65セント。兄はバスの掃除係で、姉は看護師の養成教育を受けている。
だが、ハリシュ君はトヨタのおかげで人生を変えるチャンスを手にした。入学後3カ月で、母親に渡そうと8ドル貯めた。「母の喜ぶ顔が見たいんだ」と言う。3年の修業期間に優秀な成績を収め、勤勉な学生に与えられる180〜230ドルの奨学金を得るつもりだと言う。
自動車産業の成長には人材が必要
TTTIはトヨタが560万ドルを出資して設立した学校だ。教職員は常勤21人に非常勤の講師や職員が加わる。「インドで職業訓練校を運営することはビジネス上大きな意味を持つ」と、トヨタ幹部は力説する(BusinessWeek.comの記事を参照:2007年12月3日「Toyota's All-Out Drive to Stay Toyota」)。インド自動車市場は世界屈指の急成長を遂げている。年間販売台数は150万台で、2010年までに2倍の300万台に達する見込みだ。「生産台数を増やすには、優れた人材が必要だ。本校はそのための第一歩だ」と、インド現地法人の豊島淳社長は言う。
トヨタがインド自動車市場に参入して10年――。インド内外の大半の自動車メーカーと同様に、同社もカルナタカ州での事業拡大を図っている。ビダディにある400エーカーの敷地の3分の1が工場などの施設で、目下の年間生産能力は6万台だ。インドで販売しているのは「カローラ」「カムリ」、そして人気の多目的車「イノーバ」と、ごく一部の車種に限られる。
「アコード」「シビック」「シティ」「CR-V」と幅広く展開している競合のホンダ(HMC)とはかなりの差がある。トヨタは今年、新型カローラの発売を予定しているほか、他社と同じようにインド向け低価格車を開発中である。2010年の投入までに、市場シェアを現在の4%から10%に拡大することを目指している。
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