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中国の「蟻エキス」健康食品のあまいワナ

遼寧省を震撼させた投資詐欺事件

2008年2月22日(金)

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 2007年11月20日、遼寧省の省都・瀋陽市に本社を置く健康食品企業“蟻力神天璽集団”の経営が行き詰まったという噂が流れた。これを聞いて遼寧省各地から蟻養殖家たちが続々と瀋陽市に集結し、その総数は数万人に膨れ上がった。

 蟻養殖家たちは、氷点下12度の寒空の下、“蟻力神天璽集団”本社ビルを取り囲み、蟻養殖を始めるに当たって“蟻力神天璽集団”に預託した保証金と利息の返還を要求した。その後、彼らはその矛先を転じて遼寧省共産党委員会や遼寧省政府に向かい、「俺たちの命の金を返せ」などとシュプレヒコールを唱えつつ隊列を組んで行進し、“蟻力神天璽集団”に営業許可を与えた遼寧省政府の責任を追及した。これに対し遼寧省政府は数千人の公安武装警官を繰り出して非常警戒体制を取り、防衛線を築いて蟻養殖家たちの警戒に当たったが、蟻養殖家たちのデモ行進は翌21日まで続いた。

CMで評判になった健康商品

「蟻力神をあげよう」「効くのか」「飲んでみれば分かるさ(=誰用誰知道)」

 ゴールデンタイムに人気コメディアンの“趙本山”が晴れやかな笑顔を振りまいて1人2役で演じるテレビコマーシャルは非常に評判となり、健康商品“蟻力神”は瞬く間に中国国内で売れ行きを伸ばした。趙本山は中国正月“春節”前夜の大晦日に行われる、毎年恒例の中央テレビ特別番組「春節交歓の夕べ」に出演する中国を代表する有名コメディアンであり、“蟻力神天璽集団”と同郷の遼寧省出身ということから“蟻力神”の象徴的存在として、コマーシャルを通じて“蟻力神”の販売促進に大いに貢献したのだった。

 これとは別に、趙本山が相棒の“範偉”と組んで、遼寧省を中心に放映されたテレビコマーシャル「家で蟻を養殖、これは良い仕事が見つかった」も、蟻養殖志願者を集めるのに大いに貢献した。“蟻力神天璽集団”は蟻の委託養殖の形式で、志願者が1万元(約15万円)の保証金を支払って委託された蟻を養殖すると、14.5カ月後には利息を加えた1万3250元(約19万8800円)が支払われるというものであった。1万元を14.5カ月投資すると3250元(約4万8800円)が稼げるという有利な投資、それが“蟻力神”の蟻養殖投資であった。その保証金返還と利息支払いの詳細は次の通りである

[1] 蟻養殖は14.5カ月を1つの周期としており、“蟻力神”が保証金を受け取り、養殖家が蟻養殖箱を受領した日から起算して74日目から保証金の返還が始まる。返還は6回に分かれ、保証金の1万元は毎回2000元ずつ5回分割で支払われる。
[2] これとは別に、上記5回の支払いに併せて、労働費という名目の利息が毎回525元ずつ5回支払われる。
[3] 最後の6回目は労働費の残額625元が支払われ、支払額の総額は1万3250元となる。

目的は養殖家たちから預かる保証金

 2006年の健康食品“蟻力神”シリーズの年間総売上高はわずか6000万元(約9億円)に過ぎなかったが、蟻養殖家たちから受け取った保証金の総額は数十億元に達していた。その後、“蟻力神天璽集団”の関係者から聴取したところによれば、蟻養殖家から買い取った蟻は基本的に品質が悪くて使用に堪えずすべて廃棄していたのが実態であった。

 蟻委託養殖の目的は養殖家たちから預かる保証金であり、新たに加盟した養殖家たちから預かった保証金を先に加盟していた養殖家たちへの保証金返還に使い、利息込みの保証金が確実に支払われるという評判を立てることで、さらに多くの蟻養殖志願者たちを引き寄せていたのであった。

 2007年11月29日、“蟻力神天璽集団”及びその子会社7社は瀋陽市中級人民裁判所に破産を申請し、受理された。

 翌30日、遼寧省が“蟻力神”問題のために急遽設置した「蟻力神問題処理臨時事務所」は蟻養殖家たちに公開レターを提示し、「蟻力神及びその子会社7社が経営に行き詰まり、破産申請を行って受理された」旨を通知した。それとともに、蟻養殖家と“蟻力神”の委託養殖契約は養殖家が自らの意思で締結した民事行為であり、今回の結果については双方がその責任を負わねばならない」と述べて、遼寧省政府に対する責任追及をはねつけた。

 さらに、文末で、養殖家たちは造言蜚語(ぞうげんひご)に惑わされず、社会の安定を揺るがすことのないよう自覚を持てと警告を発した。

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「中国の「蟻エキス」健康食品のあまいワナ」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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澤田 秀雄 エイチ・アイ・エス会長兼社長、ハウステンボス社長