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“夢のやせ薬”、開発競争の裏側

20社余りの製薬会社が、肥満治療薬の市場に参入

2008年3月17日(月)

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Arlene Weintraub (BusinessWeek誌、科学技術部シニアライター))

米国時間2008年3月6日更新 「Inside Drugmakers' War on Fat

 画期的な減量薬を開発中の多くの製薬会社の幹部と同様に、米アミリン・ファーマシューティカルズ(AMLN、本社:サンディエゴ)のダニエル・M・ブラッドベリーCEO(最高経営責任者)は、ある減量薬を巡る一連の動向に注目していた。その薬とは、仏サノフィ・アベンティス(SNY)が開発し、現在EU(欧州連合)を含む世界20カ国で販売されている「アコンプリア」。“夢のやせ薬”として大いに期待を集めていたが、昨年6月の米食品医薬品局(FDA)の承認審査で、安全性に関する証拠が足りないとして厳しい批判にさらされたのだ。

 ブラッドベリー氏はその一部始終を生中継で見ていた。FDA諮問委員会はサノフィの幹部を厳しく追及していた。臨床試験でアコンプリアを服用した被験者は、記憶障害や目まい、うつなどの副作用を訴えたという。何より問題なのは、少なくとも4人の自殺者が出たことだ。決議は厳しかった。「反対」と最初の委員が唱え、2人目も「反対」と続いた。その調子で14人全員が反対し、全会一致で承認却下が決議されたのである。

 肥満治療薬を開発中の20余りの製薬会社にしてみれば、ライバルの失敗を喜ぶ気持ちもあったかもしれない。だがアコンプリアの承認却下からはっきりと分かったのは、「FDAはこの問題に厳格に取り組む気だ」ということだ。つまり、健康面に対して懸念が残るダイエット薬は承認されない。FDAの承認が下りなければ、製薬会社はそれまでに費やしてきたコストと時間は戻ってこない。「安全性には細心の注意を払う必要がある」と、ブラッドベリー氏は認識を新たにした。

効果的な「減量薬」はまだ作られていない

 健康を損なわずに肥満を治療できる“魔法の薬”を最初に開発した企業は、天文学的な数字の利益を手にすることになるだろう。米国民の約3分の1は肥満で、心疾患や糖尿病、それに何らかのガンのリスクが高い。別の3分の1は単なる肥満だが、細かりし頃の自分に戻してくれる薬を切実に求めている。

 食事療法やハーブ系ダイエット薬などを含む米国の減量治療市場(BusinessWeek誌のディベート・ルームを参照:2008年1月10日「The Diet Industry: A Big Fat Lie」)の規模は、年間約330億ドルに上る。そのうち約2億ドルとわずかな一角を占めるのが処方薬だ。スイス製薬大手ロシュ・ホールディング(RHHBY)の「ゼニカル」や、米アボット・ラボラトリーズ(ABT)の「メリディア」などがあるが、特筆すべき効果を上げているものはないと専門家は言う。

 強力な減量薬の潜在的影響を理解するには、肥満によって起こる、あるいは悪化する症状の治療に使われている薬を見るといい。コレステロール低下薬「スタチン」の全世界での年間売り上げは250億ドル。血圧降下剤の需要は約300億ドルに上る。最も一般的な2型糖尿病の治療薬の市場は年間120億ドルもの規模だ。

 現在こうした薬を服用中の患者の多くは、肥満を解消できる別の手段があるのなら処方薬を替えてもいいと考えるかもしれない。もっとスマートになりたいという願望もあり、効果抜群の減量薬は大いに売れるに違いない。

副作用を招いてしまうのが一番の課題

 新興のバイオ企業から資金力のある製薬大手まで、世界中の様々な企業が一攫千金を夢見て競争に名乗りを上げている。いずれも最新の神経科学を手がかりに、心疾患からうつまで、半世紀以上も肥満治療につきまとっていた副作用の問題を克服しようと努力している。

 とはいえ、どの企業にとっても成功への重圧は大きい。経営不振にあえぐ時価総額3億6000万ドルの小規模企業、米ヴィーヴァス・ファーマシューティカルズ(VVUS、本社:カリフォルニア州マウンテンビュー)の場合、併用は危険とされる“フェン・フェン”(フェンフルラミンとフェンテルミン)の一方を配合して論議を呼んでいる調合薬に企業の命運を懸け、存続を図ろうとしている。

 それとは正反対に、950億ドル規模の米製薬大手メルク(MRK)には、開発中の肥満治療薬を成功させるための豊富な経営資源がある。ただし、安全な一般市場向けの製品を至急開発し、「ビオックス」に関する消費者の記憶を拭い去さらなければならない。ビオックスは鎮痛剤として広く用いられていたが、2004年に販売中止となり、48億5000万ドルもの賠償金を支払うはめになったのである。

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