• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

5年目のイラク戦争~石油をめぐる攻防は「クライマックス」

2008年3月27日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 2008年3月19日、イラク戦争が開始されてから5年目を迎えた。

 世界のメディアは、4年が経過した現在のイラクがどのような状況にあるのか、この4年間でイラクや中東がどのように変化したのか、そしてこのイラク戦争が米国の世界戦略や国際的な地位にどのようなインパクトを与えたのかなどについて、様々なルポ、解説、分析を披露した。

大詰め迎える「イラク石油」めぐる暗闘

 そうした数多くの記事やリポートの中でも際立って興味深かったのが、英「ファイナンシャル・タイムズ」紙が掲載した「禁じられた油田:イラクの広大な埋蔵量という獲物を追いつめる石油企業群」という長文の分析記事であろう。

 「ロイヤル・ダッチ・シェルは過去2年間にわたり、2つの油田をどのようにして増産させるべきかについて、イラク石油省に対して密かにアドバイスを続けてきた。2003年の侵攻後に交わされた合意事項により、欧州最大の石油グループである同社の人間は誰一人としてイラクの地に足を踏み入れていない。その代わり、ヨルダンの首都アンマンにおいて毎月のように同社と石油省の代表者はひざを突き合わせて話し合い、ほぼ毎週ビデオ会議を重ねてきた…」という文章で始まるこの記事は、イラクの石油をめぐって水面下で続けられてきた石油メジャーやイラク石油関係者の駆け引きや暗闘の様子を描き、このイラク石油利権をめぐる「戦い」がいよいよ大詰めを迎えつつある事実を伝えている。

 2月29日、イラクのシハリスタニ石油相は、世界第3位の原油確認埋蔵量を誇る同国の油田開発事業受注を目指して、日本企業を含む115社が登録したことを明らかにし、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、米エクソンモービル、英BPなど国際石油資本との技術支援契約交渉が最終段階に入っている事実を明らかにした。シハリスタニ石油相率いる石油省は、一刻も早く石油の増産を進めるべく、国際石油資本との合意締結に積極的だが、「イラクの石油支配を外国勢に渡すことになりかねない」として、主に国民議会を中心に石油ナショナリズムが高まり、石油法をめぐる議会の審議は進んでいない。

 争点は生産分与協定(PSA)と呼ばれる契約であり、石油の所有権はイラクが保有するものの、基盤整備、掘削やパイプラインへの投資などは外国企業に委託される。このPSAは30年間継続され、外国企業は初期投資コストを回収した後も石油収入の60%を得ることが可能とされており、もちろん外国企業に有利にできている。このPSAをイラク側が受け入れるかどうかが議論の争点となっている。

 もう1つは油田の管理権をバグダッドの中央政府と地方政府のどちらが有するのかという問題であり、2005年10月に国民投票で承認されたイラク憲法では、石油資源の所有権がイラク国民にあることは定められているものの、油田の開発などの管轄を地方と中央政府のいずれが担うかについては明確にされていない。

 クルド自治政府は、新憲法では「既存の油田」は中央政府の管轄であるものの、「新規油田」は対象外だと解釈し、自治政府議会が2007年8月に独自に石油・ガス法を可決し、自治区内の新規油田開発への海外企業参入の道を開き、独立系の欧米企業など12カ国22社と覚書を結んでしまった。これに対してイラク中央政府はクルド自治政府の措置に猛反発し、同自治区で石油開発権を獲得した企業への原油輸出停止措置を発動するなど、イラク中央政府とクルド自治政府はにわかに「石油戦争」を戦っている。

トルコの北部イラク侵攻とトルコ・イラク・パイプライン

 外国資本のイラク石油ビジネスを有利にするPSAをイラク側が認めるのかどうかという問題と、イラク国内の中央と地方間の石油権益の管轄をめぐる争いという2つの「石油戦争」が激化しているという事実は、現在のイラク情勢を分析するうえで不可欠の要素となっている。

コメント1

「世界鑑測 菅原出の「安全保障・インサイド」」のバックナンバー

一覧

「5年目のイラク戦争~石油をめぐる攻防は「クライマックス」」の著者

菅原 出

菅原 出(すがわら・いずる)

ジャーナリスト/国際政治アナリスト

アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。在蘭日系企業勤務、ジャーナリスト、東京財団リサーチフェロー、英国危機管理会社役員などを経て、現在、国際政治アナリスト

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

全体の2~3割の人でも理解し、動き出してくれれば、会社は急速に変わります。

中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長