「山崎養世の「東奔西走」」

新銀行東京に見る“お上”の甘さ

銀行だけに依存しない複線型の金融システムを

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2008年4月1日(火)

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 新銀行東京のずさんな実態が明らかになってきました。それにもかかわらず、東京都は新たに400億円の追加出資を決めました。

 都民や国民の負担をこれ以上拡大することなく、即刻、業務を停止し、清算すべきです。

戦後これほどまで失敗した銀行はない

 それにしても、新銀行東京の経営実態はお粗末そのものです。2003年に石原慎太郎都知事が「東京発金融改革」を高らかに宣言し、2005年4月に開業しました。

 会社設立(2004年4月)からわずか4年間の累積損失は、公表されているだけで、なんと1260億円にも上ります。収益を稼ぐはずの貸出金は、昨年9月中間期の決算短信によればわずか2218億円しかありません。つまり、貸し出しの半分に相当する金額が累積損失になっています。異常としか言いようがありません。

 一方で、市場平均の3倍もの高金利で集めた預金が4284億円、負債全体では6104億円に上ります。そして、純資産は219億円しかありません。負債のわずか3.6%です。純資産が底を突きそうだから、追加出資が必要というわけです。

 戦後、新しい銀行が、これほどまでに失敗した例はありません。

無担保・無保証ビジネスはコストがかかる

 新銀行東京のビジネスモデルそのものが成り立たないと思われます。貸し付けて収入を稼ぐ中心は、中小企業への無担保・無保証の融資です。最もリスクの高いタイプの融資です。

 ところが、その多くは実質審査なしで書面だけで貸し付けが行われたことが明らかになってきました。また、規模に対してシステム投資や営業経費も過大なために構造的に損失が出ています。

 無担保・無保証の事業者への貸し付けというビジネスは、これまで、ノンバンクや消費者金融が担ってきました。民間の業界は、信用審査や回収に様々な努力を払ってきました。もちろん、その中には違法性の高いものや社会的に問題のあるものもあり、批判を受けてきました。

 しかし、厳然たる事実は、無担保・無保証というハイリスクのビジネスは審査と回収が最も難しく、コストのかかる融資であるということです。

 小さな企業の経営者が利用者の中に多いとされる消費者ローンの業界は、最高裁の判決以来、上限金利の引き下げと過去の過払い分の返還によって、大きな損失を計上し、撤退する企業が続出しました。

 借り入れが困難な借り手の中には、ヤミ金融に走る人も多いと推察されます。貸し手にも借り手にも厳しいビジネスです。

 しかし、新銀行東京のように、ほとんどまともに審査も回収努力もせずにお金を貸せば、その多くが返ってこないのです。

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著者プロフィール

山崎養世(やまざき・やすよ)

山崎 養世

1958年生まれ、東京大学経済学部卒。カリフォルニア大学ロサンゼルス校でMBA(経営学修士)取得。大和証券勤務を経て米ゴールドマン・サックス本社パートナー、ゴールドマン・サックス投信社長などを歴任。2002年に退社後、「高速道路無料化」をマニフェストに掲げて、徳島県知事選挙に挑戦。現在はシンクタンク山崎養世事務所で金融、財政、国際経済問題などの調査研究を行っている。著書に『日本列島快走論』(NHK出版)、『大逆転の時代』(祥伝社)、『チャイナ・クラッシュ』(ビジネス社)、『投資信託革命』(共著、日本経済新聞社)、『米中経済同盟を知らない日本人』(徳間書店)、『道路問題を解く』(ダイヤモンド社)などがある。



このコラムについて

山崎養世の「東奔西走」

イラク戦争を機に世界の枠組みは大きく変わった。東西冷戦が終わり米国による世界覇権の時代が訪れたものの、わずか10年で終わりを告げた。戦争はできても世界に覇を唱える力がないことをさらけ出してしまったからだ。その間、ユーラシア大陸の西ではEU(欧州共同体)が世界における政治・経済の新しい軸として存在感を増し、一方、大陸の東では中国が急成長、アジアはもとよりラテンアメリカ、アフリカとも強い絆を築きつつある。その変化の意味を意外に分かっていないのが日本である。国際的に日本はどのようなスタンスを持つべきなのか、また地方を活性化するにはどうすべきかなどについて、歴史的視点から日本の政治・経済のあり方を厳しく問う。

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