Jennifer L. Schenker (BusinessWeek誌、パリ支局記者) 米国時間2008年3月21日更新 「Revolutionizing Urban Transport」
1970年代の冷戦時代、旧東ドイツに駐在していたロシア人無線通信専門家ワシリー・シュコンディン氏が、同じ消費電力で35%高いトルクを得られる高効率の電気モーターを思いついた。“鉄のカーテン”の向こう側で埋もれる可能性もあったこのアイデアが今、都市交通のあり方を一変させる計画の要となっている。
数十年にわたる改良と野心的な構想、数百万ドル規模のベンチャー投資が実を結び、シュコンディン氏考案のモーターは世界中に普及しつつある。創立6年の英新興企業ウルトラ・モーターは、特許を取得したシュコンディン氏モデルのモーターを動力源とし、手頃な価格で環境に優しい電動スクーター、いわゆる“LEV(小型電気自動車や電動2輪車など)”を生産している。
ウルトラ・モーターはインドで既に2万5000台以上の電動スクーターを販売、設立後初の通年決算で2000万ドルの売り上げを計上した。この夏には米国で上位モデル、年内には欧州向けモデルの発売に向けて準備中だ。
“個人用の乗り物”時代の幕開け
ウルトラ・モーターは時代のニーズを的確にとらえたようだ。大気汚染や交通渋滞、エネルギー価格高騰に対する懸念から、世界の消費者や企業、政府の間では、環境に優しく燃料コストも安い電気自動車やハイブリッド車、電動バイクなど小型の乗り物への関心が高まっている。
「2007年は、気候変動の脅威が現実となっていることが正式に認められた年だ」と語るのは、モスクワを拠点として世界を股にかけて躍進するウルトラ・モーターのジョー・ボーマンCEOだ。そうした認識とガソリン価格の高騰とが相まって、「“個人用の乗り物”時代の幕開けが到来した。今こそが絶好の機会だ」と言う。
ウルトラ・モーターは既に、小規模企業にしては著しくグローバル展開を果たしている。英国セント・エドマンズを拠点として、世界8カ国に180人の従業員を抱え、シュコンディン氏が現在居住するロシアのプーシノで研究開発を行う。プーシノはモスクワの南方75マイル(120キロ)にある街で、旧ソ連が崩壊する1991年までは地図にすら載らない“秘密都市”だった。
工業デザインは著名なドイツのLEV設計者ノルベルト・ハラー氏が手がけ、製品開発は台湾、モーター製造は中国、製品組み立てはインドと台湾で行っている。これまでにロシアと欧州の投資家から2500万ドルを集め、現在はプライベートエクイティ(非公開株)投資会社から4000万ドルの調達を図っている。
真のニーズを満たす
ウルトラ・モーターはインドでは、世界大手の2輪車メーカーである現地企業、ヒーロー・グループと対等出資による合弁会社を設立。1年目にインド全域にフランチャイズの165店舗を開設、今後3年間で計700店舗に拡大していく計画だ。ウルトラ・モーター車はインド国内では「マキシ」及び「ベロシティ」の名で750〜900ドルで販売されている。
米国市場への進出に当たって、ウルトラ・モーターは2007年9月、米AECF(本社:ロサンゼルス)を傘下に収めた(買収金額は非公開)。AECFの設立者はエド・ベンジャミン氏、マイク・フリッツ氏の2人である。ベンジャミン氏は“電気自動車の父”とも言うべき人物。フリッツ氏は1990年代中頃に米クライスラーを離れたリー・アイアコッカ氏が設立した米ベンチャー企業、EVグローバル・モーターズで主任技術者を務めていた。
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