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中国「消費革命」最前線!(3)
~主役は、大人になんかなりたくない「ゼリーの世代」

共産党公認“オタク展覧会”の真意は?

  • 中村 正人

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2008年4月15日(火)

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(前回「上海のメイドカフェに行ってみた【後編】中国版「電車男」に戸惑うメイドたち」から読む)

 噴き出した民族問題、極端な経済格差や環境問題など、およそ安定とはほど遠い社会でありながら、前回メイドカフェで出会ったようなコスプレ娘やオタクまで大量に生み出している中国。毎度のことながら、いったい何がどうなっているの?

 当連載では、ミクロな現場になるべく多く足を運びながら、マクロな構図の中でその意味を問い直したいと思っている。周辺の東アジアの国々とは政治環境の異なる中国で、彼らのような若者がどのように生まれてきたのか。いまの社会を彼らはどう思っているのか。こうした問いは、これから先の中国を考えるうえで欠かせないはずだ。

世界が待ち望む「中国消費スタイル」を担う世代

開催は2007年5月28日~6月26日。カタログの表紙に描かれたイラストはテーマのまんまだった

開催は2007年5月28日~6月26日。カタログの表紙に描かれたイラストはテーマのまんまだった

 その若者たちの中で、今回取り上げるのは中国で「80後」世代と呼ばれる1980年代生まれの世代。彼らへの注目度が高まる理由ははっきりしている。新しい中国的「消費」のスタイルを作り出そうとしているからだ。そこには世界が求めてやまない「市場」がある。

 そんな若者たちの内面を理解するひとつの手がかりとなる催しが昨年、上海で行われた。2007年5月、上海美術館で開催された「80後」世代の作品展である。

 タイトルは「ゼリーの時代(果凍時代)」。勇ましい物言いが大好きな、党が指導する公立美術館の掲げるテーマとしてはなかなか挑戦的だ。甘くて透明な世代の登場だって? この大変な国で、そんなことを言ってる場合なのか。サブテーマは「Infantization(小児化)」。これまた意味深である。

 中国で一般に評される「80後」世代について整理しておこう。

  1. 改革開放後に生まれ、経済発展の恩恵をそのまま享受しながら成長した。
  2. 一人っ子世代で、自己愛や自己主張が強いが、ひ弱で忍耐力がなくプレッシャーに弱い。
  3. 高学歴で、ネット情報収集力が高い。金銭感覚が開放的。蓄財より消費を優先する新人類。

 前回前々回のメイドカフェの子たちを思い出してほしい。彼女らは文革後に生まれた。すべてが強制的に横並びだった社会主義時代の中国を知らない。90年代以降の高度経済成長期に成長したため、昔の中国人みたいな食べるための苦労など想像がつかない。おまけに1979年以降、都市部を中心に徹底された一人っ子政策の申し子だから、甘やかされて育った。2000年以降の本格的な消費社会への突入で、物質的な豊かさを疑うことなく生きてきた、おそらく中国で初めての世代といえる。

新中国成立前はイギリス租界の競馬場のクラブハウスだった5階建ての堅牢なクラシック建築。人民公園の中にある

新中国成立前はイギリス租界の競馬場のクラブハウスだった5階建ての堅牢なクラシック建築。人民公園の中にある

 2008年現在、この世代にあたる18~27歳の人口は約2億人(ただし、格差の大きいこの国ではそのすべてが「80後」的な境遇にあるわけではない。実際は都市部の若者に限られる)。「市場経済」「グローバル化」「インターネット」の世界で、“消費世代”として暮らす彼らの人生観は、これまでの中国人とはまったく違うという。彼らは新しい中国を担うエリート予備軍とみなされているのだ。

 初夏を迎えた上海で、会場の上海美術館を訪ねた。普段はひっそりと来場者も少ないが、この日はたくさんの若者が来ていた。特に女の子の姿が目についた。カップルも結構いる。現代美術の展覧会でこんなに人が集まるとは正直、驚いた。無名の若者たちによる作品展でもあり、同世代の活躍を応援するような気持ちがあるのかもしれない。

「快楽時光(お楽しみの時間)」。作者は1981年大慶生まれ、北京在住

「快楽時光(お楽しみの時間)」。作者は1981年大慶生まれ、北京在住

 館内には60人の若手美術家による絵画やイラスト、写真、ビデオ、彫塑、ウエブ、インスタレーションなど350点の作品が展示されていた。それぞれに趣向を凝らした現代的でポップな作風だが、正直なところ、どこかで見たような世界だなというのが第一印象。美術雑誌で紹介される世界のアート、日本のアニメ文化の模倣や影響と思われるものも多かった。日本でいえば、美術系学校の卒業作品展に近いと感じた。

 それでも、「若者のお子様化(小児化)」というテーマを掲げた作品展だけに、「へえー、(いまの中国の若者は)こんなことを考えていたんだ」。そんな気にさせられた作品もいくつかあった。

 たとえば、少女マンガの世界に通じる「快楽時光(お楽しみの時間)」。そこにはあからさまに表情をゆがめる童女たちが描かれる。

 作者はいう。〈私はこれらの作品に自分たちの世代の感情を表現しようと試みました。私たちはみな都市に住み、その環境は精神に大きな作用を与えます。私の作品は基本的に子供時代の記憶で成り立っています。イノセントガールは私の精神的なシンボルです。それは厳しい現実から逃避するための方法です〉(同展覧会のカタログより)

蜜とケーキの青春時代に別れを、って…

 この展覧会の企画趣旨をストレートに連想させたのが「告別青春期(青春への告別)」。巨大なケーキの上に横たわり、甘い蜜の汁を顔に浴びながら夢の時間をまどろむ青年の肖像。しかし、その表情は現実社会からの逃亡の果てに茫然自失し、気を失っているようにも見える。

「告別青春期(青春への告別)」。作者は1982年大連生まれ、上海在住。いまでは中国ぐらいでしかお目にかかれないバタークリーム風の人工的な着色が、この国の親の子供に対する過剰な甘やかしぶりを象徴しているかのよう

「告別青春期(青春への告別)」。作者は1982年大連生まれ、上海在住。いまでは中国ぐらいでしかお目にかかれないバタークリーム風の人工的な着色が、この国の親の子供に対する過剰な甘やかしぶりを象徴しているかのよう

〈「80後」世代の私たちは甘い花園の中で成長し、まだ目を覚ましたことがありません。私たちは少年時代の幻想を抱えたまま社会の扉を開けたため、理想は現実と衝突してしまいました。残酷な大人の世界は子供時代の童話の記憶を窒息させ、私たちは茫然としています。そして私たちは青春に別れを告げたのです〉(同展覧会のカタログより)

 都市の生活、イノセント、逃避、子供時代の甘い記憶、青春への告別……。扱うテーマは、年長の中国現代アートとは大きく異なっている。題材も中国の伝統イメージからは離れており、これが中国人の作品と言われてもピンとこない。この世代は子供の頃から日本のアニメや欧米の映像文化に触れてきたわけで、それが表現のベースになっていることがわかる。

 そのぶん、上の世代の中国人美術家に共通する政治性や時代への批判精神、激しい怒りや虚無といった精神態度が影をひそめ、自分の内面へのこだわりやゲーム感覚の遊び心(そこに他者を否定してかかるような挑発性はない。どこか「ひとり遊び」みたいな閉じた感じがする)を重視し、作品に取り入れようとする姿勢が感じられた。

 仮に社会に対する批判が表現されるとしても、こんな具合だ。

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