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ATMの故障が誘発した犯罪(その2)

-差し戻しとなった無期懲役判決の再審結果はどうなったのか-

2008年4月18日(金)

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 2007年1月、当時22歳の唐風軍と21歳の唐風光の兄弟は、2004年に生まれ故郷の湖南省炎陵県から浙江省寧波市へ出稼ぎに来て金物工場で働いていた。毎月の収入は1000元余りだったが、兄弟は生活を切り詰めて少しでも貯えを残そうと頑張った。故郷の実家では母親が嫁さん候補の娘を見つけてくれたというので、兄の唐風軍は2月18日から始まる中国正月「春節」に帰郷して娘と会ってみよう考えていた。その前に実家へ送金しようと、唐風軍は1月28日に自分と弟の2枚の銀行カードを持って勤務先の工場近くにあるギン州銀行礼嘉橋支店へ行き、ATMで2人の口座から8300元(約12万4500円)を引き出して故郷の実家へ送金した。

 唐風軍の口座にはまだ300元が残っていたが、弟の口座には4.49元(約70円)だけしか残っていなかった。弟はもうこの口座は使わないと言っていたが、4.49元と少額ではあってもこのまま捨てるのはもったいない。4.49元を銀行の窓口で引き出そうとしたが、弟の身分証を持って来なかったので断られた。その日の夜、意地になった唐風軍は再度ギン州銀行礼嘉橋支店に出向き、4.49元を自分の口座へ振り替えようとATMに弟の銀行カードを差し込んだ。

「ATMが故障しているに違いない。この千載一隅のチャンスを逃す手はない」

 振替金額は4.49元のはずだったが、唐風軍はうっかり間違えて49.49元と入力し、それに気づかぬまま金額確認ボタンを押してしまった。ところが、この銀行カードには預金額を超えて払い出しが可能な貸し越し機能は付加されていないのに、何故か49.49元が唐風軍の口座へ振り替わったのである。唐風軍は入力金額を間違えたことに気付いたが、預金額以上の金額が自分の口座へ振り替わったので、まさに狐につままれた思いだった。弟の口座の残額を見ると45元になっていた。“4.49-49.49=-45”で残額はマイナスとなるべきはずなのに、-45が+45に変わって残額が増えているのである、おかしい。そこで、もう1度弟の口座から45元を自分の口座へ振り替えてみると、うまくいっただけでなく、弟の口座の残額は90元と倍増したのだ。

 「ATMが故障しているに違いない。この千載一隅のチャンスを逃す手はない」。そう考えた唐風軍はその後何回も振替を繰り返し、遂には自分の口座の預金額は100万元(約1500万円)を超えた。そこで、この金が引き出せるか確認すべく、ATMに自分の銀行カードを入れて引き出し額を1万元(約15万円)と入力して試してみると、1万元は問題なく引き出せた。唐風軍はこの1万元を懐にして天にも昇る思いで喜び勇んで家路に就いた。

 翌29日の朝、一刻も待てないかのごとく礼嘉橋支店のATMに赴いた唐風軍は、弟の銀行カードで振替操作を繰り返し、最終的には前日分も含めて都合21回の操作で、合計225万4586.7元(約3382万円)を自分の口座へ振り替えることに成功した。何と1回の振替額の最高は90万元(約1350万円)にもなっていた。

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「ATMの故障が誘発した犯罪(その2)」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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