「2007→2010 上海マーケティングツアー 」

中国「消費革命」最前線!(5)
〜本物を愛する目を「日本のフィギュア」で培って!

すでに日本と同時発売。「アルター上海」に聞く、中国アニメビジネス事情

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2008年4月28日(月)

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(前回「政府の無策に沈むオタクビル「動漫城」/でも日本アニメ人気は健在」から読む)

 上海のオタクビル「動漫城」は、国営メディアの肝いりでオープンしたものの、聞くと見るとでは大違いの寂れ方だった。ちょうどいま、杭州で中国最大のアニメ展覧会「第4回中国国際動漫節」(4月28日〜5月3日)が開かれているが、今回はこの国の動漫(アニメ・マンガ関連)産業の発展にとってネックと思われる規制の問題について、ビジネスの現場から考えてみたい。

 現場の話をしてくれたのは、前回もご登場いただいたフィギュアや模型の企画・開発・製造を行うアルター上海の清水孝義さん(29)。「動漫城」に『HOBBYSTOCK-SHANGHAI』というフィギュア専門店を置く、唯一の日本人関係者である。彼は日々接している若い中国人客について何を感じ、この国の動漫ビジネスの現状や将来をどのように考えているのだろう。

四方をガラスのショーケースで囲んだ店内には日本の最新フィギュアが並ぶ

四方をガラスのショーケースで囲んだ店内には日本の最新フィギュアが並ぶ

清水孝義さんは1978年東京生まれ。上海にはこの世代の日本人が多い

清水孝義さんは1978年東京生まれ。上海にはこの世代の日本人が多い

 アルター上海は、香港、台湾、韓国、シンガポール、タイ、マレーシア、中国への商品案内と出荷手配など、アジア市場の流通管理を行う代理店として2006年2月上海に設立された。フィギュアは一般に15歳以上の商品だから、バンダイやタカラトミーが「トイ」だとしたら、こちらは「ホビー」というジャンル。日本の動漫ホビー商材の代理店としては初の上海進出といえる。設立準備期から数えて清水さんは駐在3年目になる。

 このお店のお客さんはいかがですか、と探りを入れる間もなく、開口一番に清水さんはこう断言した。

「うちを除いてこのビルで売られているフィギュアも偽物が少なくない。こっちのオタの商品を見る目は真剣ですよ」。

 どういうこと? その問いはひとまず置いて、上海進出の経緯から聞くことにしよう。

かつては日本・香港の売れ残りフィギュアを出していた

―― 上海に代理店を置くことにした理由は何ですか。

「これまで中国のフィギュア市場は、日本で売れ残ったものが香港に流れ、それでも残ったものが最後に流れ着くという感じ。希望した発注が納品されるかどうかわからないという不安定な市場でした。

うちの店に正式な営業許可が下りたのは2006年4月。日本で1、2を争う人気のフィギュアメーカーGOOD SMILE COMPANYと弊社のアジア地区代理店として、アジアでの販売許可が下りた商品を正規輸入し、流通させています。巨大市場である中国に潜在しているユーザーの発掘と、その人たちに本物を見せ、安定した供給を行なうのが弊社の役割だと考えています」

―― そもそも中国にフィギュア市場があること自体、ぼくは知りませんでした。商品はどこでつくっているんですか。日本、それとも中国?

「デザインや原型は日本。キャラは日本のものですから。つくっているのは広東省の工場です。それを香港経由で日本に運んで初めて製品として市場に流れるのですが、中国市場の場合、香港からすぐに中国に輸入する形を取るのです」

―― 生産地が中国にあり、東アジア全域に商圏が広がっている。だから海外のオペレーションは東京ではなく地理的に中心に位置する上海で、というのは他の商材にもいえる自然な流れなんでしょうね。でも、フィギュアって結構きわどい商品も多いですが、中国の税関では問題ないのですか。

政府の意識は、パンツよりも「安全性」

「ええ、実際にはパンチラとかもあるんだけど、いまのところ問題なし。むしろ、税関の関心はそこにはないようです。最近は有毒物質などの安全基準を強く言い出しています」

―― 中国産練り歯磨きや子供服、玩具などから発がん性物質が検出され、海外で疑いのある製品の輸入を見合わせる動きが出ている。その対抗処置でしょうか。

「でもうちの商品、メイドインチャイナなんですけどね。中国では玩具の輸入に関して14歳以下を対象にしたルールはあるようですが、15歳以上はないようです。この国ではおもちゃは子供のものという感覚ですから。ホビーという概念はまだ確立していない」

―― 出店されたのは、上海メディアグループの動漫ビル設立を受けてのことですか。

「お客さんが直接商品を見ることができ、その場で業者と商談できるショールームを構えることを検討していたんです。そのときたまたまこのビルの出店募集を見つけた。いま上海にあるガンプラやフィギュアといったアニメ関連の路面店というのは40軒くらいでしょうか。当時もそれなりにあったのですが、ここのように専門店が集まっている場所はないに等しい。だから、やってみようかなと。とはいえ、ビルの現状は最低最悪です」

―― このお店の取扱商品は、かなりディープなマニア向けかな。

新作商品は日本と同時期に入荷される

新作商品は日本と同時期に入荷される

「価格帯のボリュームゾーンは日本円で1アイテム5000円〜1万円。決して安くはありません。しかも、フィギュア化されるキャラは、日本の深夜放送やOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション。テレビや劇場公開ではなく、DVDなどの販売やレンタルを主な販路とした商業アニメ作品)、PCゲームからのものがほとんど。日本でも一般の方には知られていないキャラが多いです」

―― にもかかわらず、中国でも買いたい人がいる?

「こっちにもオタの人はいっぱいいますから。いまでは流通業者への受注から発注、納品まで、ほぼ日本と同じタイミングで行なっています。メーカーと工場で納品時期を打ち合わせ、日本の発売日に合わせて販売できるように徹底しています」

―― もはやこのジャンルでは日中のタイムラグはないと。売れ行きはどうですか。

オタクの年齢層は日本と変わらず

「販売という意味では、まだ微妙です。その場で購入していく客層は20〜30代の大学生や若い社会人連中。ただ、ライトユーザーばかりで、懐の都合もあるせいか、うちで置いているような商品だとすぐには手が出せない人のほうが多い。

それでも上海の繁華街だけあって、2年ほど続けて営業していると、“動漫関連の店舗が密集しているビル”という認知はでてきたようです。最近では土日になると結構な来客があります。うちの売上もここ数か月で少しずつ伸びています」

―― 見るだけの来店者がほとんど?

「ここはショールーム。中国ではまだ現物を直接見る機会は圧倒的に少ないのです。一般に中国のお客さんはこちらで下見して、買うのはネット通販やオークションでというパターンが多いようです。弊社本体は企画・開発・製造の会社ですから、卸先のなじみの店で買ってもらえるならそれでいい。そのほうが安いでしょうし。この店では日本と同じ商品を元換算して売っている。関税がかかるぶん日本で売られてるよりさらに高くなってしまう。

ターゲットのメインは20代。実際のお客さんは、東京のアキバや大阪の日本橋のオタの人の年齢層とそんなに変わりません。20代から上は40代くらいまで。男女比は男8女2かな」

 そのとき、同行していたぼくの上海人助手が尋ねた。「40代は、台湾人や香港人では?」。中年の中国人に動漫好きがいるとは彼女には思えなかったからだ。

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著者プロフィール

中村 正人(なかむら・まさと)

編集者。1963年生まれ。立教大学社会学部卒。出版社勤務などを経て2004年からフリーに。専門は観光関連業界のビジネス動向、最近は訪日中国人旅行市場に関心を持つ。また東京池袋界隈の在日中国人事情にも詳しい。主な著書に、『最新データで読む産業と会社研究シリーズ トラベル・航空』『ホテル』『図解 中国の地域性がわかる本』(産学社)『行きたい街を歩く 上海・蘇州・杭州』(西東社)など



このコラムについて

2007→2010 上海マーケティングツアー 

生産拠点から巨大市場として注目されてきた中国。そこで何が、どうして、支持され、売れていくのか。2010年の中国市場を先読みするための、最先端市場現地レポート。

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