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第7回 「アルナイ(二号さん)村」が生まれてしまう“悲劇”

中国は、政治と経済を切り離しすぎた

2008年5月9日(金)

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「アルナイ」表記についての注 : アルは「二」、ナイは「女へんに乃」。「二号さん」あるいは「妾」のこと。ナイの字がネットで表記できない環境がありますので、記事中はカナを用います。以下、同じ理由で漢字をカナ表記とさせていただいた個所がございます(編集部)

 今回は、実際に会って取材した<A女>のお話をさせていただく予定だったが、編集部から質問のメールが届いた。最近新聞やテレビが報じた、中国の「中華全国民間反アルナイ同盟」についてだった。「先生は“結婚できない<できるA女>たち”を描く中で、いまの中国には男尊女卑的な視点があり、むしろ封建的感覚が戻ったと書いておられますが、新聞報道にある愛人という存在と、バリバリ活躍する<A女>が結婚できないという現象とが並存しているというのは、どう解釈すればいいですか」というものだった。

 これは実に的を射た質問で、実は私自身も、その観点から<A女>問題を追跡していた時に、ぶつかった事実だ。

 そのとき私は、ただ単なる「愛人」というのではなく、日本語で言うところの「二号さん」あるいは「妾」に相当する存在が中国にはあり、そういう人たちだけで構成されている「村」(地区)があることを知って、たいへん驚いたものだった。

 日本のメディアではこの「二号さん」あるいは「妾」を、ただ「愛人」と訳して報道しているため、中国が抱える事実の深刻さが十分には反映されていないようにも思われた。編集部も疑問を持ったということであれば、こういった実態はある程度詳しく理解しておく必要があるだろう。そんなわけで、今回もまた、少し寄り道をさせていただくことをお許しいただきたい。

 あれはたしか、2006年の晩秋だっただろうか。

 私が泊まっていた北京国際飯店という五つ星のホテルに、中国社会科学院社会学研究所の研究員で、婚姻問題の専門家である王震宇がやってきた。前にお話しした30年来のつきあいのある女傑だ。最近では互いに自分の仕事が忙しくて会う時間が取れないということもあって、ホテルの部屋をノックしたのは夜の10時。「婚姻と家庭」という雑誌の総編集長をしている、女性問題研究の仲間を伴っての訪問だった。

 この顔ぶれだと、おのずと話は<A女>が中心となろう。しかも話の内容がかなり「濃い」。

 私は「しめた」とばかりに、<A女>問題で最も納得がいかない点に関して切り込んだ。

「ねぇ、最近の中国って、まるで封建社会に戻ったみたいな感じがするけど、そう思わない? だって、<A女>=できる女が売れ残るってことは、男性が自分よりも能力の低い女性を求めるってことだし、女性に関する他の社会現象を見ていても、まるで私が小さいころによく見た、社会主義国家の中華人民共和国が誕生する前の、国民党の時代みたいな感じがするんだけど…」

時代を逆行した封建的現象が混在

 すると二人は口を揃えたように応酬してきた。

「あたりまえよ! だって、考えてみて! 中国がどれくらい長い間、封建主義的専制国家を続けてきたと思う? 数千年よ、数千年。新中国が誕生したのは1949年。改革開放までの時間を考えると、わずか30年しかないのよ。数千年の歴史の中で。改革開放後は、自由競争を奨励したんだから、そりゃあ、すぐに元の思想に戻るに決まってるじゃない。民衆の間への浸透度が違うもの。男尊女卑が復活しただけでなく、女性を性の商品として扱う文化が、あっという間に蔓延してしまったわ」

 二人は先を争って続けた。

「離婚率だってうなぎ登り。婚外情(不倫)は花盛り。おまけにアルナイだって平気で持つようになってるんだもの」

 アルナイとは「二号さん」、すなわち妾(めかけ)のことである。

 不倫とは異なり、毎月いくらという感じで給料のようにお金を渡す関係だ。日本語で言うところの不倫の相手の「愛人」というのとは大きく異なる。きちんと契約により住居と生活費を渡して「第二の妻」とする「雇用関係」のようなものなのである。結婚届をしない「重婚」に近い存在といえよう。

「ああ、やっぱりそうなのね。売春や不倫だけでなく、アルナイもいるってことは聞いてはいるけど、やっぱりそうだったの?」
「もちろんよ!それどころの騒ぎじゃないわ。アルナイだけでなく、三ナイとか四ナイも囲っていて、第二第三のアルナイを持って自分の権勢の象徴のように思ってる男たちだっているのよ。おまけにアルナイたちだけが群居して住んでいる<アルナイ村>っていうのがあるくらいなんだから、もう男尊女卑だの、封建社会が戻っただのと言ってる場合じゃないくらいよ」
「アルナイ村? なに、それ?」
「あら、あなた知らなかったの?」
「うーん…、知らない。それって、どういうこと?」
「深センにあるんだけどもね。そこの一帯は全てアルナイだけが住んでいて、外部の者はなかなか入り込むことさえできない、っていう場所があるのよ」
「えーーー、そんなところがあるの?」
「そう、あるのよ。最初はそこが出発点だった。ほら、台湾とか香港の商人たちがいるでしょ?その人たちはそれぞれ台湾や香港に家庭があるわけ。でも長いこと家を離れているから、大陸の花嫁を別途娶るわけよ」

深センが先導して広まった

 なるほど、日本語で言うところの「現地妻」なのかな、と思いながら、彼女たちの話に耳を傾けた。

「でね、最初のころは深センの皇崗の港にコンテナを運ぶ運転手たちの集積所が、<包アルナイ>(著者注: <包アルナイ>とは「妾を囲う」ことを指す)の群居地になったんだけど、それがやがて、珠江の三角州一帯とか広州とか東莞とかさ、台商や港商が多く集まるところで流行りだして、今では全国各地の大陸の男たちが、お金さえあればアルナイを囲うようになったってわけ」

 ということは、最初は「現地妻」から始まり、それが中国全土に蔓延していったということになるのだろうか。

「それは知らなかったなぁ。最近の成り金とか政治権力を持っている者が、金と権力に物言わせて女性を買っているっていう風にのみ、私は思っていたんだけど」
「もちろん、それはその通りよ。現在の現象としては、それは正しい解釈だわ。ほら、最近よくある<暴発戸>っていうのがあるでしょ? いま中国全土に広がっている<包アルナイ>現象の中心は、みなこの成り金族たちだから」

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「第7回 「アルナイ(二号さん)村」が生まれてしまう“悲劇”」の著者

遠藤 誉

遠藤 誉(えんどう・ほまれ)

筑波大学名誉教授

1941年、中国長春市生まれ、1953年帰国。理学博士。中国で国務院西部開発弁工室人材開発法規組人材開発顧問、日本では内閣府総合科学技術会議専門委員などを歴任。2児の母、孫2人。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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