衆議院での再議決によって、年間2兆6000億円に上る道路財源の暫定税率が復活し、ガソリンが値上がりしました。日本国中が値下げと値上げに振り回された1カ月でした。何か得るものがあったのでしょうか。
政府の説明や多くのマスコミの論調では大いに得るものがあったことになっています。それは、福田康夫首相が道路財源を一般財源とする方針を打ち出したからだそうです。
これまでは自動車ユーザーが払う税金は自動的に道路建設に回されていたのが、これからは財務省が査定しさらに国会の審議を経ることで、無駄な道路の建設が減ることが期待されるそうです。
一般財源化には、ほとんど期待できない
福田首相の会見要旨を引用・要約すると、
「道路特別会計の無駄遣いの実態が明らかになり、道路整備計画の信頼性にも大きな疑問が投げかけられた。道路財源の無駄遣いについて不適切な支出を直ちにやめ、随意契約を競争的な契約に変える。
不要な天下りを徹底排除する。すべての省庁、独立行政法人、関連公益法人に至るまで、無駄な歳出を徹底的に洗い出し、無駄ゼロに向けて見直す」
とのことです。
なるほど立派な言葉が並んでいます。しかし、政治の言葉は実行されてこそ意味を持ちます。どのようにして無駄をなくし、道路が国民の生活と経済の向上のために役に立つのでしょうか。
福田政権の一般財源化には、ほとんど期待できないと断言できます。「無駄をなくす」と言いながら、日本の道路の最大の無駄について一言も触れていないからです。しかも、無駄どころか、国民の負担がこの瞬間にも膨張を続けているのです。
日本の道路の最大の無駄は、高速道路です。高速道路を変えない限り、道路の無駄はなくなりません。そして、変えるのは国会と政府の責任です。
第1に、道路のユーザーが払うガソリン税などの道路特定財源は、国と地方分合わせて年間4.9兆円に上りますが、そのほとんどが高速道路ではない一般道路の建設に流用されている事態には全く手をつけていません。
欧米では道路財源の範囲内で建設するから原則無料
高速道路ユーザーからの税金を流用しておいて、その上に通行料金を年間2兆5000億円も徴収しているのです。高速道路ユーザーからの二重取りと税金の流用のうえに日本の道路の建設は行われているのです。その分、一般道路に過大な財源がつぎ込まれてきました。
米国でもドイツでも英国でも、道路財源の範囲内で高速道路も一般道路も建設するからこそ、高速道路も一般道路も通行料は原則無料なのです。もちろん、高速道路会社のような組織は最初からありません。
山崎氏の主張に基本的に賛同します。しかし、インフラ、特に大型構造物の維持管理にかかる費用も莫大なものがあり、これを怠るとせっかくの公共財が次の代では使用不能になるので、高速道路のような一定の管理水準が必要な道路については、管理費相当分(おそらく2割程度か)の徴収は必要ではないでしょうか。いずれにしても、新たな無駄を作ることは論外としても、せっかくの公共財を無駄にしない工夫はぜひ考えて欲しいと思います。(2008/05/24)