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包囲された韓国サムスン

創業一族による歪んだ支配構造

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2008年5月13日(火)

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李健煕会長ら経営幹部10人が起訴され、大揺れする韓国サムスン。
経営権の世襲を巡る不正疑惑は、ついに会長辞任にまで発展した。
一連の捜査で明らかになった、李一族によるサムスン支配の構造とは。

 それは韓国の財閥サムスングループにとって、新時代の幕開けとなる出来事だった。同財閥の経営は時代遅れで硬直化しているという日本人顧問がまとめた報告書を読んだ李健煕(イ・ゴンヒ)会長(66歳)は1993年6月7日、幹部100人を独フランクフルトのホテルに集めた。

 公の場に出ることの少ない李会長は怒りもあらわに、サムスンは世界に通用し、流行を生むような製品を開発せねばならないと説いた。そしてサムスンの洗濯機のお粗末な生産工程を記録したビデオを見せ、「妻子以外はすべてを変えろ」と命じたのである。

 その後の経営改革のすごさに異議を唱える者はいないだろう。中核企業のサムスン電子はこの15年間に、後発商品の量産メーカーから携帯電話やデジタルテレビ、冷蔵庫、半導体メモリーの一流企業に変貌を遂げ、ソニーを抜き世界首位の電機メーカーとなった。

 サムスン重工業は世界2位の造船会社で、建設や保険、証券、商社各部門は国内トップ。年商1600億ドルのサムスングループは他社を圧倒する韓国最大の財閥だ。97年の通貨危機後、分裂したり事業縮小したりする財閥が相次いだが、サムスンは成長を続け、現在韓国のGDP(国内総生産)の18%、輸出の21%を占めている。

帝国を牛耳る李一族

 だが、冒頭の有名なスピーチで家族への忠誠について語った李会長の真剣さを当時理解した者はいなかった。実際、彼の妻子はグループ内での地位を一層揺るぎないものにした。李一族が保有する系列企業59社の株はわずかだが、その支配力は絶大だ。

 例えばサムスン電子の持ち株は3%だが、戦略判断や主要人事で最終決定権を握っているのは李一族だ。財閥改革の流れで大宇や現代、双龍といった大手財閥トップが引きずり降ろされても、李一族は支配権を維持してきた。サムスン広報は「一般株主も李一族の支配を支持している」としている。

 ところが今、要塞のように堅固なサムスングループが包囲されている。国会に任命された特別検事チームは数カ月前から、李会長をはじめとしたサムスン幹部らを脱税や背任の容疑で徹底調査してきた*1。一連の捜査で、李一族がこの巨大グループを支配してきた複雑な方法が明らかになった。

 趙俊雄(チョ・ジョンウン)特別検察官によると、李会長は新旧幹部名義で開設された約1300の借名口座にサムスン生命などの株式や現金、債券数十億ドル分を隠していた。李会長の資産運用にかかる税金を逃れるためだと特別検察官は見る。

 ほかにも一族支配を維持するために弄したとされる手段がある。1つは、李会長の長男で後継者の李在鎔(イ・ジェヨン)氏に、事実上のグループ持ち株会社サムスンエバーランドの株式が不当な安値で渡るよう画策した疑惑だ。これによって李在鎔氏はグループ主要企業の大株主となった。元常務で弁護士の金勇澈(キム・ヨンチョル)氏は、サムスンが借名口座に裏金をプールし、検察官や政治家、記者への賄賂に使っていたと告発している*2

 起訴されても李一族の支配は揺るがないかもしれないが、徹底的な経営刷新が行われるだろう。サムスンは悪事の証拠が見つかれば、統治問題を解決すると明言している。

 李会長は4月11日の会見で、「すべての法的、道義的な責任を取る」と表明。「自分も含め、経営陣の刷新を検討する」と述べた。さらに、4月17日には代理人を通して「今回の捜査をサムスンの新たな出発点と捉え、改革計画を準備している」と発表した*3

 今のところ、サムスン電子への影響は小さい。李在鎔氏への株譲渡疑惑は10年以上前の取引だ。現在サムスン電子は最も有力な新興市場株の1つであり、財務の透明性で高い評価を受けている。会長は李健煕氏だが、同社の経営は97年以来、尹鍾龍(ユン・ジョンヨン)CEO(最高経営責任者)ら同社を世界企業に導いた優秀な経営陣がしっかり握っている。

 しかし、今回の不祥事でサムスン電子の指導体制に不安を抱く投資家もいる。尹氏は64歳で引退間近。関係者によれば、慶応義塾大学でMBA(経営学修士号)を取得し、ハーバード大学ビジネススクールでも学んだ39歳の李在鎔氏は、サムスン電子のCEO後継者として育てられてきたという。

 ほとんど人前に出ない同氏の最も目に見える役割は顧客総括責任者。この役職の権限で、彼は米アップルのスティーブ・ジョブズCEOや米インテルのポール・オッテリーニCEO、米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長といったハイテク界の大物と会っている。

 李在鎔氏がすぐにもCEOとなることはないだろうが、目ぼしい後継候補はほかにいない。李在鎔氏は、株主の了解を得て初めて「リーダーとなる」と広報担当者は述べている。

*1=4月17日、特別検事チームは李会長のほか経営幹部9人を脱税や背任の罪で在宅起訴した
*2=特別検事チームによる捜査では、この一件は証拠不十分で捜査終結となった
*3=4月22日に李氏は会長職を辞任すると発表した

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