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中国「消費革命」最前線!(6)
~上海の若者がアキバへ社会科見学

宿題は「なぜ中国でアニメの産業化が進まないか?」

  • 中村 正人

バックナンバー

2008年5月20日(火)

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(前回「本物を愛する目を「日本のフィギュア」で培って/すでに日本と同時発売。「アルター上海」に聞く、中国アニメビジネス事情」から読む)

 今年の桜が満開だったころ、上海からひとりの「80後」世代(1980年代生まれ)の女性が東京に来た。その日、ぼくは仕事仲間との花見の予定があった。日本の文化を知ってもらういい機会かなと思ったので、彼女にも参加してもらうことにした。そして、宴もたけなわ、仲間に飛び入り参加者として紹介すると、彼女はいきなり日本語でこんなことを言ってみんなを笑わせた。

「私、“萌え萌えジャンケン”やってみたいんです」

 なんでもついこないだ見た日本の報道番組の秋葉原特集で、メイドカフェをレポートしていたそうで、そこでやっていたのが“萌え萌えジャンケン”。欧米人客も多く面白そうだから、私も行ってみたいし、日本のメイドの子にどんな気持ちで仕事をしているのかインタビューしてみたい、と言う。

 見たこと思ったことを愛嬌たっぷりにポンポン口にする。どこまで本気なのか、とぼけているのか、つかみどころがない。最近の中国の若者には、こんな感じの人が多い。

 彼女は1981年上海生まれのOさん(26)。現在、上海の日系企業に勤めている。遠藤誉さんの著書のタイトルにもなった “中国動漫新人類”のひとりといえるだろう。大学時代にアニメサークルを主催、コスプレ大会など数々のイベントを企画した経験もある。年に何度か出張で来日するが、必ず訪ねるのは日本の動漫のメッカ、秋葉原だそうだ。

 いま中国の若者の目に触れるネット上の動漫はその大半が日本産。ところが、中国政府の「規制」があり、海賊版が野放しだから、ビジネスはなかなか成立しない。少なくとも日本からはそう見える。前回触れたそんな不毛な状況の中で、本家本元の日本の動漫の発信地といわれる秋葉原はOさんの目にどう映るのか、聞いてみたかったのだ。

いざ、アキバツアー!

 都内の桜もすっかり散った4月最初の週末の午後、ぼくは再びOさんと秋葉原駅で待ち合わせた。しばらく街をそぞろ歩きした後、ぼくは彼女を「秋葉原ラジオ会館」に案内した。

 秋葉原にそれほど詳しいわけではないぼくの目から見ても、そこには一口に動漫とは括れない異色な商品を扱う個性派ショップが集まっていて、冷やかしで覗くだけでも面白い。中国人観光客相手に歌舞伎町を案内するような、にわかツアーガイドになって、彼女の反応を観察してみようと思ったのだ。

 かつて日本のPCメーカーのショールームが一堂に会していた通称「ラジ館」は、いまやフィギュアやガレージキット、食玩(オマケ付菓子類)、雑貨、書籍、DVDなど、あらゆるオタク関連の商品を扱うショップやショールームがひしめく“萌え”の雑居ビルになっている。これまで何度も秋葉原に足を運んだという彼女だが、この建物の存在は知らなかった。

 ビルの横脇から古びた階段を上がる。日本人でも独特のあやしさを感じる雑居ビルに、彼女は一瞬怖気づいた。「大丈夫、こっちへおいで」。

 ショップをはしごした。まずは、4階「海洋堂」。入り口にエヴァンゲリオンの等身大フィギュアが立っている。すかさずOさんは「ここで一緒に写真を撮りましょう」。記念撮影が大好きな中国人には格好のスポットだ。

 「ラジ館」の店は、どこも凄まじい種類の商品があふれている。7階「ボークス」のレンタルショーケースも、彼女にとっては面白かったようだ。数百もの透明なボックスの中に、賃貸料を払って自分のお宝を並べ、客を待つ。中国ではオークションサイトが普及しており、こういう実物が見られる旧式なスタイルは珍しい。彼女の目には、かえって新鮮に映ったのだろう。

スーパードルフィーに感激、そしていよいよ…

 なかでも驚いていたのは、6階「ボークス」の奥にある「天使のすみか」店だった。店内には同社が製造販売するスーパードルフィー(ドール+フィギュアの造語)人形が並んでいた。「まるで生きてるみたい!」。その精巧さに彼女は感嘆の声をあげた。衣装や鬘も各種販売。そこから垣間見るジャパニーズ・ホビーの奥深さは、日本人のぼくにも十分目を見張らせるものがあった。

 一通りのはしごを終えた後は1階に降り、「ホビーショップコトブキヤ」でお土産を買うことにした。上海の友人にあげるための人気アニメキャラの食玩を選びながら、彼女はそっとつぶやいた。

「日本ではアニメが産業化していることがわかった。中国ではまだまだ。だけどいつの日か……」

 旅の土産話に、くらいの気分で連れていった「ラジ館」である。その感想が「産業化」とは想定外だった。単に物珍しさに驚いたという話で終わらないところが、彼女らしい。これまで日本の動漫に親しんできたOさんだが、動漫キャラがさまざまな用途や遊び心を加味しながら無限に商品化されている日本と、その一部が市場に流れているにすぎない中国との違いを強く実感したようだった。

 そして、ぼくらは彼女が楽しみにしていた“萌え萌えジャンケン”のできる和風メイドカフェへ向かった。狭い雑居ビルのエレベーターを上がる。一見、チェーン居酒屋みたいな店内。ただし、テーブルの間を行き来しているのは和風柄衣装のメイドさん。「あっ、テレビで見たのと同じ」。彼女は目を輝かせた。

 欧米人観光客もいるが、日本人中年男性客もけっこう多い。Oさんは事前に考えていたのか、さっそくメイドさんに質問している。彼女らの趣味や私生活、好きなアニメについて。でも、ここでは“ごっご”がお約束だ。私生活の話ははぐらかされてしまう。Oさん希望のメイドさんとの記念撮影は難なくクリア。そうこうするうちに、いよいよ “萌え萌えジャンケン”が始まった。

 メイドさんふたりがステージに登場する。ひとりは司会進行、もうひとりはオトボケ美人さん役。客扱いは手馴れている。お決まりの“萌え萌え”ポーズの説明後、メイドさんと店内の客全員がジャンケンし、勝ち残り合戦をやるお遊びが進められる。何回戦かすませ、3人の勝者がステージ上に。いかにもアキバ風の若い日本人男性ふたりと、欧米人の女の子が勝ち残った。

 結果、プレゼントがもらえる最終勝利者は欧米人の女の子となった。場内は俄然盛り上がった。いかにもショーアップされた進行だが、この空間においてはまわりに合わせて場を盛り上げるのが客の務めだ。

 しかし、ステージが終わると、彼女はぼくに、「なんだか思ってたのと違う」と言った。

「これは中国では流行らない」

「メイドの子はみんなかわいい。プロの人みたい。でも、萌え萌えジャンケンは中国では流行らないと思う」

――それ、どういうこと?

「テレビで見たときはとても楽しそうだったんだけど、この感じ、中国人には面白さがわからないと思う。どうしてだろう……」

コメント3

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