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迫り来る“危機”に気づかない日本

サブプライムローン問題より怖い世界経済の地殻変動

  • 山崎 養世

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2008年5月22日(木)

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 サブプライムローン(米国の信用力の低い個人向け住宅融資)問題が悪化して、マーケットは暴落し、金融機関の破綻が相次ぎ、世界経済は崩壊に向かう、という説が今年の流行でした。経済崩壊、大不況、大恐慌といった言葉が飛び交いました。

 日本だけではありません。フェルドシュタイン、スティグリッツ、といった世界的な経済学者が、1929年以来の大不況が来る、いや戦後最悪の不況だ、といった悲観論を声高に唱えました。

 そんな中、筆者は全くの少数派でした。今年の1月7日には「高成長に戻る世界経済と取り残される日本」をお届けしました。さらに、1月30日には「バーナンキ暴落は終わりに向かう」、3月26日には「世界経済悲観論に踊るなかれ」をお届けしました。

 昨年来の株式市場の暴落を招いたのは、グリーンスパンの後任であるバーナンキFRB議長が、市場の暴落に対して迅速な金融緩和を実施しなかったからだ、と見ていました。

 ですから、米国の金融システムをつかさどるFRBが大幅な金利低下と市場への資金供給を行い、金融機関の流動性を確保しさえすれば、株式市場の暴落はそこで納まり、世界経済は再び21世紀型の上昇軌道に戻ることを予測しました。大恐慌どころか、70年代の石油ショックほどの不況にもならないのです。

経済学者の予言通りにならなかった現実

 現実はどう推移したでしょうか。まず、1月22日~30日の1週間余りでバーナンキFRB議長が1.25%もの大幅な金利低下を断行し、それまでの遅れを一気に取り戻しました。ここで、世界の株式市場は大底をつけそこから恐る恐る反発を始めましたが、再び不安心理が市場を覆いました。金融機関がお互いに資金を融通するのを渋るようになったのです。

 そして、3月16日にサブプライムローンの証券化業務の最大手の金融機関であったベアー・スターンズ証券に、JPモルガン・チェースを通じてFRBが資金供給を行うことを発表しました。JPモルガン・チェースによる買収という側面を持つ取引でした。

 ここを境に世界の株式市場は上昇に転じました。金融機関の破綻という最大の懸念が現実になっても、中央銀行による救済が実行されて市場が安定化したのを見て、それまで恐る恐るだった資金が株式市場に戻ってきたのです。典型的な二番底パターンをつけて上昇パターンに転じました。ブラジルのように、昨年の高値を上回る上昇を見せた市場まで出ています。

 大恐慌どころか、90年代初めの世界の不動産バブルの崩壊に比べても、世界の株式市場も経済も、格段に小さな悪影響しか受けていないのです。なぜ、大先生たちの予言は、少なくとも今までのところ、外れたのでしょうか。

これまでの常識では測れなくなった世界経済

 第1には、プラザ合意以降の先進国経済では、中央銀行が機能すれば、金融市場が原因の大恐慌は起きないのです。預金者保護と金融機関の連鎖倒産(システミックリスクというかっこいい言葉で呼ばれています)の防止のために、中央銀行が金融機関の保護と救済に当たることは、今は当然です。

 市場原理で動くはずの先進国の金融機関は、いまや国家や国際機関の保護を受けているのです。こうした保護がなかったら、1929年の大恐慌のように、金融市場はまさに市場原理に従って暴落の連鎖を極限まで繰り広げたはずです。

 第2には、90年代までと違って、21世紀の世界経済の成長の中心は新興国に移りました。世界的な企業が生産拠点を新興国に移し、労働と不動産のコストが劇的に低下したために、いくら石油の値段が90年代の終わりの5倍程度に暴騰しても先進国では、10%を大きく超えるようなインフレが起きないのです。だから金利も低いままになります。

 すると不動産バブルの影響を受けていない世界の企業の収益は成長を続けますから、恐慌は起きません。

 第3には、サブプライムローン問題そのものが、新興国での高い経済成長を誘発してしまうのです。どうしてでしょうか。

コメント32件コメント/レビュー

指摘は正に”複合連鎖”にあり、政治・財政・金融・行政・そして環境が絡み合って存在、その内にある問題の解決の糸口を見出せない状況をこうでもない、ああでもないと論っているというのが今日である。解けないパズルをどう解きほぐすのか、経過して後、失われた10年だ、20年だと言ってみても仕様のない事だが、前出の5項目には夫々やり直しのきかないこともあるので、この事を肝に銘じての施策が肝要である。その時々において君はどう考え、どう行動したか、批評家や為政者は決して占い師ではないので(政治屋の中にはその筋のご託宣頼りの仁もいるそうだが)所詮、自律・自立した自主の視点を育んでおかねばならない。(2008/05/27)

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いただいたコメント

指摘は正に”複合連鎖”にあり、政治・財政・金融・行政・そして環境が絡み合って存在、その内にある問題の解決の糸口を見出せない状況をこうでもない、ああでもないと論っているというのが今日である。解けないパズルをどう解きほぐすのか、経過して後、失われた10年だ、20年だと言ってみても仕様のない事だが、前出の5項目には夫々やり直しのきかないこともあるので、この事を肝に銘じての施策が肝要である。その時々において君はどう考え、どう行動したか、批評家や為政者は決して占い師ではないので(政治屋の中にはその筋のご託宣頼りの仁もいるそうだが)所詮、自律・自立した自主の視点を育んでおかねばならない。(2008/05/27)

金融対策で馬鹿みたいに刷られたドルが世界中を回って、国際的な会計基準のルール緩和による一時的な見せ掛けの回復が起こっている。有り余ったマネーは低金利で満足することなく株式、そしてその次は商品市場を狙うのは当然の流れです。筆者が、物価の上昇により、途上国の人々が生活苦に追いやられているのを記述しているのにもかかわらず、世界経済デカップリング論を主張し続けているのは、論理的矛盾がある。物価の上昇の影響を受けるのは先進国よりも途上国の方がでかいという事実に目をつぶって、農業論にまで話を展開するのはいかがと思う。(2008/05/26)

「だって国産は高いんだもん」という意見・感想をどうするか、ですね。一次産品だけではなく、加工食品用原材料としたときの末端消費者の目から見ても。低価格なオレンジや牛肉を体験してしまった消費者が、後戻りに合意するとは思えないです。(2008/05/26)

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三品 和広 神戸大学教授