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米GM、生き残りを賭けた決断

環境戦略を進めてトヨタに対抗できるのか?

2008年5月26日(月)

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David Welch (BusinessWeek誌デトロイト支局長)
2008年5月26日発行号カバーストーリー 「GM: Live Green or Die

 2005年4月、米ゼネラル・モーターズ(GM)のリチャード(リック)・ワゴナー会長兼CEO(最高経営責任者)は、経営陣を集めて月例戦略会議を実施した。GMのデトロイト本社の重役室で、20人ほどの幹部が新車や製品戦略に関する計画を検討するもので、時に議論は深夜に及んだ。円卓会議形式で始まることが多く、出席者は議題から逸脱して自由にアイデアを出し合うよう奨励される。

 ロバート(ボブ)・ルッツ副会長が口を開いたのはそんな時だった。独特なだみ声のコメントで常に自動車ショーを盛り上げ、話題を振りまくルッツ副会長は、既成の常識にとらわれないことではある種の天賦の才に恵まれた人物だ。居並ぶ幹部を前に同副会長は言った。携帯電話やノートPCに使用されているリチウムイオン電池の大型版を搭載した電気自動車をもう一度開発する時期ではないか、と。

 この提案が物議を醸すことはルッツ副会長も承知のうえだった。その2年前、GMは電気自動車「EV1」の製造を中止し大騒動を巻き起こしていたのだ。EV1は一部ユーザーにリースされただけで販売されることはなかった。絶対に採算は取れなかったろうと主張するGMに対して環境団体は強硬に反発。燃費向上技術が割の合わないビジネスだと政策責任者に誇示する目的で開発を中止した、とGMを非難した。

トヨタの「環境先進企業のイメージ」に憤るGM幹部

 2005年にルッツ副会長が電気自動車の開発を再び提案した頃、既にトヨタ自動車(TM)はハイブリッド車「プリウス」によって“環境意識の高い自動車メーカー”というイメージを一気に獲得していた。これに対しGMは少なくとも一般的には、「ハマー」のような燃費の悪い大型ガソリン車を製造し続け、議会が推し進める燃費規制強化に逆行している了見の狭い企業と思われていた。

 トヨタが燃費の悪い車も作っていながら環境先進企業のイメージを確立していることにGM幹部は強い憤りを覚えていた。それでも、その日の会議の出席者全員が、電気自動車の開発には拒絶反応を示した。ルッツ副会長はある幹部がこう言ったのを覚えている。「EV1で10億ドルの損失を出したのに、今度もまた10億ドル損をしたいのか。その話はもう終わりだ」。

 その日の会議のテーブルには、近視眼的思考、不安、無気力が見事に顔を揃えていた。だがそれから20カ月たった2007年1月、デトロイト自動車ショーのステージに立ったワゴナー会長は、家庭用電源から充電できるプラグイン・ハイブリッド車「シボレー・ボルト」の開発を発表し、世間をあっと言わせた。ボルトを発売することで、GMは競争で優位に立てるだろう。市場投入は3年後の予定だ。

 ワゴナー会長が俄然意欲を見せたのはなぜか。来るべき未来から長年目を背けてきたが、ここに来てようやく、原油価格の高止まりが続くことや、地球温暖化が事実上の政治的現実であること、政府が本気で自動車の燃費規制強化に取り組もうとしていることを理解したのだ。環境に配慮するか、それとも廃業に追い込まれるのか――GMは二者択一を迫られている。

月ロケット打ち上げのような一大事業

 今は時間との戦いだ。2010年までにボルトを発売するだけでなく、GMの全車種を2017年に発効する厳格な新燃費規制に適合させなくてはならない。GMの50車種のうち実に4分の3に、電気モーターと小型ガソリンエンジンを組み合わせたハイブリッドシステムの搭載が必要かもしれない。その他の現行車種の多くは生産を縮小するか、何らかの燃費向上技術を搭載することになるだろう。

 GMの環境対応戦略の実施は月ロケット打ち上げのような一大事業だ。ボルトを2010年までに市場に投入し、現行車種のハイブリッド化を完了するには数十億ドルのコストがかかる。2万2000人の技術者にはかつてない大車輪の働きを要求することになる。また高馬力の大型車という伝統が染みついた企業文化を全社的に改革していかなくてはならない。

 言うまでもなく新たな現実への適応を迫られているのは他社も同様だ。同じくデトロイトの競合企業である米フォード・モーターと米クライスラーを含め、大半のメーカーがハイブリッド車を展開している。ただボルトが業界関係者の物議を呼んでいるのは、プラグイン・ハイブリッド技術がまだ新しく実証されていないためだ。加えて北米市場で多額の損失を計上しているGMは、資金力のあるトヨタに比べきわめて不利だと言える。

 GM社内では、どのように環境に対応していくかについての議論が交わされている。ワゴナー会長の決断の遅れでGMは不利な状況に陥ってしまったという懸念は拭えない。3年前、主な脅威はトヨタだけだった。

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