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農業を日本の先端産業にする

田園からの産業革命をいかにして遂げるか

  • 山崎 養世

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2008年6月5日(木)

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 先週までに日本の農業が今どんな状態であるのか、私なりのスケッチをお見せしました。なかなかに複雑な対象ですから、全体をお見せすることは大変です。

 確かに食料自給率の低下、後継者不足、耕作放棄地の増加、高齢者が半数以上を占め、集落としての機能を維持するのが困難となっている限界集落の増加、日本人の米離れ、日本食離れ、生活や買い物の変化と地元の農産物が手に入りにくい仕組み、農業よりも土木事業に力を入れてきた農政、などの様々な問題が浮かび上がってきます。

戦後の“社会安定装置”、農村の役割は限界に

 その一方で、日本人の知恵やしたたかさも見えてきます。農地解放により自作農になり、土地を手に入れた農家から、戦後日本の中流社会は生まれました。子供たちは高校や大学に行き、都会に出ていきました。

 残された農村には、政治力が生まれました。高い生産者米価での買い取り、機械化や品種改良による農作業の軽減、公共事業による現金収入と農地の買い上げ、様々な税金の優遇措置、農協による農業と生活のワンストップショッピング化、などです。

 農村が豊かになったからこそ、全国が消費社会に変わり、戦前よりははるかに高学歴の中流社会ができました。農村の基盤に乗って、自動車も三種の神器の家電製品も売れ、一億総中流社会もできました。若者たちが出ていっても、これまでは農村は大きく荒廃せずにやってきたのです。

 高度経済成長と格差の少ない国民のレベルの高い社会。言葉にすれば簡単ですが、実現するのがいかに難しいか、インドや中国をよく訪れる私には、戦後日本の農村は大変な社会安定装置であったと思うのです。

 でもそれが限界に来ている。できるだけスムーズに、日本の農村と自然と社会のよさも残しながら、どうすれば農業は強くなれるのでしょうか。

 いくつかの提案をしたいと思います。

1 日本の農地ができるだけ使われるようにする

 このためには、減反政策はやめましょう。農業予算も、土木事業に当てる部分は減らしましょう。

 その代わりに、農業を行う人に補助金を思い切ってつけましょう。別に大規模農家だけに出す必要はありません。農業生産を行う人に出すのです。ただし、悩ましいのは農家すべてを平等にするのか、それとも生産規模に比例させるのかです。簡単な答えはないでしょう。両方の要素が必要になります。

 農業生産を行うと、ある程度は生活が保証されるようになれば、農業の担い手は増えていくでしょう。

 スイスやドイツのように、環境保全のために補助金を農家に出す視点も重要です。美しい棚田や里山を守ることは環境と国土の保全と観光の様々な観点から必要です。

 フランスでは農家所得の8割は補助金であり、米国でも3割に達するといいます。しかも、米国最大の農業地帯であるカリフォルニアの農業を支えているのは、メキシコからの低賃金の季節労働者、もしくはより悪条件で働く違法労働者です。フランスと米国の食料自給率を支えているのは補助金と非合法移民なのです。

 米国は農業分野の自由化を各国に迫りますが、一方で、今回の穀物危機のきっかけが、米国の農家がトウモロコシをバイオ燃料へ転用したことであったように、輸入国への安定的な供給責任など負うつもりがないことは明白です。

 わが国が自衛のために、食料自給率を向上させること、そのために農家への直接の所得保証をすることは、国民の食料の確保のためには必要なコストではないでしょうか。

2 日本の農産物の値段を下げ品質を上げる

 米の減反措置は米からの収入を保証するためのものでした。しかし、農家の中で最も数が多く約半分を占める副業的農家は、平均総所得が470万円、そのうち農業所得は30万円にしか過ぎません。しょせん、米が高くても収入を農業に頼っているのではないのですからあまり意味がないのです。

 それよりも、減反補助金をなくし、生産調整をなくし、米でも他の作物でも思い切って生産すれば日本の農作物は安く品質が上がります。農家の収入は直接の補助金で保証します。生活のかなりの部分の保証があれば、農家は品質と価格の両面での競争を始めるでしょう。

 今よりさらにおいしい農産物の値段が下がれば、日本の消費者は日本の農産物にもっと切り替えるでしょう。特に、米の値段が下がれば、お米を炊いて食べるのはもちろん、値上がりが著しい小麦粉に代わって米粉を材料にした麺類や饅頭、パン類、酒、焼酎、飼料の開発も進むでしょう。外国の穀物が高騰する今がチャンスです。

3 日本の農業の担い手を増やす

 お坊様と農家は世襲。いつの間にか、日本社会はそんな慣習を作り出しました。どちらの職も、どうも本業がおろそかになっているところが似ていないでしょうか。志を持った農家以外の出身の若者が、農業に従事できるようにすることが肝心要のことです。そのために必要なのは、もちろん農業教育です。経営者教育のために、今よりも充実した農業経営教育機関が必要です。

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